第7話 外れず、忘れずに
「いやぁ~~、美味い!!!」
結局、嵩希はマルカスたちと共に戻り、そのまま夕食を共に食べていた。
とはいえ、マルカスたちからすれば嵩希に依頼を搔っ攫われた形であるため、普段の様な盛り上がりはなかった……ドムブを除いて。
「違いないのぅ」
「ドムブさん……」
「致し方ない結果と受け取るだけじゃ」
受けていた依頼の額を考えれば、惜しいことには惜しい。
だが、気分は既に若い者たちの成長を喜ぶおっちゃんとしては、マルカスたちに本物を合わせられたことが嬉しかった。
「そういえばコウキ、お主Bランクの冒険者なんじゃな」
「「「「っ!!??」」」」
一人はむせ、ビールを吹き出し、オークの焼肉が気管に入りそうになる。
「え、な……あっ、いや……し、しかし」
複数体のワイバーンを討伐した。
それが事実であれば、戦闘力に関してはBランクに至っていてもおかしくない。
だが……失礼なのは理解しているが、マルカスから見て嵩希にはそれらしい雰囲気、オーラを感じられなかった。
「一応。まぁ、自由気ままに活動してるので、あまりギルドの為には働いてませんけど」
Bランクともなれば、冒険者ギルドからの待遇も良くなる……が、その分お願いされる事なども増える。
しかし、嵩希は一つの街に留まることが殆どなく、街から街へ移動し続けている。
知り合った冒険者……冒険者ギルドの職員に対し、いずれは国外でも旅をしたいと語っているため、冒険者ギルドは色々と諦めていた。
「いやはや、立場的には儂らの上司じゃな」
「勘弁してくださいよ。俺は人の上に立てるような人間じゃないんで」
実際に、嵩希はチートスキルのお陰で個人的な戦闘力は非常に高い。
しかし、チートスキルの中に指揮系のスキルは含まれておらず、元の世界でも行動力はあれど人を纏めたり何かを発案するタイプではないため、本当に同業者たちを纏めたりすることに慣れていなかった。
「山にいる時にも言いましたけど、やりたい事をやり続けた結果なんで」
「っ………………」
先程本人が「嫌味と思われるかもしれないが」と言っていたのを思い出し、マルカス湧き上がりそうになった怒りを無理矢理抑え込んだ。
(それでも、この男は…………っっ!!!)
怒りは、とりあえず収まった。
ただ、確認したい事がある。
「コウキ、さん」
「? なんだ」
「明日、俺と試合を行ってくれませんか」
突然の申し込み……と、嵩希は思わなかった。
初対面での出会い方。
意図してないとはいえ、やってしまった事を考えれば、寧ろ申し込まれても当然。
(こうして丁寧にお願いしてくれるだけ、ちゃんとしてるってものだよね)
約五年間の冒険者人生……伊達に冒険者として活動しておらず、それこそ冒険者らしい冒険者から喧嘩を売られる、俺と戦え!!! と半ば無理矢理訓練場に連れていかれることもあった。
「良いよ。明日、朝食を食べ終えたら戦ろうか」
「っ、ありがとう、ございます」
まだたどたどしいところはあれど、マルカスは敬語で礼を伝え……翌日、本当に二人は訓練場で試合を行う。
「試合ではあるが、ある程度節度を持った戦いを頼むぞ」
「あぁ」
「了解です」
翌日、朝食後に訓練場へ訪れ、軽く体を動かした二人は直ぐに試合を行う。
マルカスは細剣を構え、嵩希は短剣を構える。
「では……始め!!!!」
審判を務めるドムブの声により、試合開始。
「ふっ!!!」
先に仕掛けたのはマルカス。
自分から申し込んだからか、ただただ負けたくないという気持ちが溢れているのか……全身に魔力を纏うことで身体能力を強化し、鋭い突きを放つ。
対して、嵩希も全身に魔力を纏い、軽快なステップと体の捻りでマルカスの突きを躱す。
「よっ、ほっと」
躱しながら使用していない短剣を軽く振るい、魔力による斬撃波を飛ばす。
狙いは的確であり、マルカスは連続突きを止めて回避の選択肢を強いられる。
「次はこっちだね」
「っ!!!」
細剣と短剣……リーチの差では細剣の方が勝っている。
見るだけで解る事実だが、嵩希はその差をものともせず搔い潜り、マルカスがカウンターを放つ隙を与えずに斬撃を繰り返す。
(くっ!! ただ、単純に、速く……力強いっ!!!)
何か特別な事をしている様には思えない。
単純に身体能力で上回られており、技術……戦闘経験でさえも、同等かそれ以上だからこそ反撃できずに押されているという現状。
(それ、でもッ!!!!)
「っと……やっぱり、使えるよね」
マルカスは風魔法のスキルを覚えており、魔力を消費して風を生み出し纏う事で、更に身体能力……特に素早さと切れ味を上げた。
試合という形式上、使うか否か迷ったものの、負けたくないという思いが湧き上がり、咄嗟に纏った。
「それじゃあ」
「っっっっっ!!!」
風を纏えるのは、マルカスだけではない。
魔術の才・極みを持つ嵩希にとって、風を纏うことなど訳はない。
(……でも、それでもッ!!!!)
外見だけでは解らなかった。
しかし、実際に見せられればさすがにマルカスも解る。
纏われている風は自分と同等か、それ以上の練度があると。
純粋な身体能力や技術で負けているとなれば、同じ強化方法を使ったとしても、勝てるわけがないのは当たり前の未来。
ただ……負けたくなかった。
その一心で地を蹴り、武器を振るう。
そんな青年の挑戦に、嵩希は真正面から受け止め……数分後、刺突を刃で受け流し、そのまま短剣の剣先を喉元に添えた。
「っ!!!」
「そこまで。勝者はコウキじゃ」
言い訳の余地もない、完全な敗北。
マルカスはその結果に文句を吐けるわけなどなく、素直に受け入れた。
「……本当に、強いな……あなたは」
「どうも…………ただのアドバイスだけど、迷う必要はないと思うよ」
「えっ」
「ただ、人の道を外れたり、共に居てくれる、戦ってくれる仲間の事を忘れなければ
ね」
それだけ告げると、嵩希は訓練場から出て行った。
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