俺の偏差値がバレている!?学歴バトルロワイヤル

@bakushimaru

プロローグ「その日、偏差値は暴かれた。」

俺の名前は――風間 瞬(かざま しゅん)。

偏差値37、Fラン大学・無響館大学の3年生。特技は空気を読むこと。長所は“出しゃばらない”こと。短所は“主張がない”こと。将来の夢は、できれば目立たずに就職することだった。


そんな俺の人生が、ある日突然バグった。


「学歴、開示完了。偏差値ログイン、完了しました。全参加者、戦闘準備を――開始してください」


目覚めたら、そこは見たこともない空間だった。


空に天井はなく、足元には発光するアカデミック・ブルーの床。宙には謎の立方体が浮かび、ホログラムのような文字列がくるくると回転している。


何より目を奪ったのは――周囲に立ち尽くす大量の大学生たちだ。

スーツ姿の就活生、サークルTシャツを着たノリのいい陽キャ、パーカーでノートPCを抱えた理系っぽい奴ら。ざっと見て数百人……いや、もっといるかもしれない。


「え?なにこれ、合同説明会?ドッキリ?」


俺の隣にいた関西弁の学生がそう呟いたが、次の瞬間――


《全偏差値、開示》


その声と共に、全員の頭上に――数字が浮かび上がった。


偏差値:65/62/70/58/75/48/41/66……


「えっ、うわっ、なんか出てるやん!?」「俺……48!?低くね!?」


ざわつく会場。皆、自分の頭上を指さし、狼狽している。


……そして俺も、見上げる。


偏差値:37


うん。知ってた。知ってたけど、なんで皆にバレてんの!?


「おい見ろよ、偏差値37がいるぞ!」「Fランか!?うわぁ、すげぇ……絶滅危惧種だ……」


地獄みたいなざわめきが、俺の心をえぐる。


そのとき、空から音が鳴った。鐘のような重低音。そして、空に浮かぶホログラムが、新たな文字を表示する。


《――学歴領域(アカデミック・ドメイン)起動》


《君たちは、学歴の神“偏差値様”により選ばれた》


《偏差値に応じたスキルを手にし、今ここに、最もアカデミックな生存戦を開始する》


……は?学歴の神?偏差値様?バトル?


混乱していた俺の目の前に、突如としてウィンドウが開いた。


【あなたの学歴スキルを認証中……】


【確認完了:劣等感・劣等感・劣等感・少しの謙虚】


【スキル発現:《Complex Boost(コンプレックス・ブースト)》】


【効果:自分より偏差値が高い相手と戦うとき、差分に応じて戦闘能力が強化される】


「……なにこれ。恥ずかしい。ていうか、劣等感て」


俺は頭を抱えるしかなかった。よりによって、偏差値差分で強くなる“コンプレックス”スキルって。


周囲ではすでに、数人の大学生がスキルを使い始めていた。


「偏微分方程式召喚!」「論破空間、展開!」「推薦バリア発動!」


俺の目の前で、火花のような数式が飛び交い、参考書が空中で炸裂し、履歴書が巨大な壁になって襲いかかる。……これ、何のバトル?何を目指してんの?


でも――


そのとき、確かに俺の体が、熱を帯びた。


目の前の偏差値65の相手を見た瞬間、どこか胸の奥から湧き上がるモヤモヤが、体中を駆け巡った。


(あいつ……俺より28も上……)


【Complex Boost:発動】


【ステータス上昇:+280%】


「……えっ?」


体が軽くなった。視界が冴えた。思考が加速した。

もしかして、これって――


「戦え。Fランでも、劣等感でも、お前には力がある」


俺の中のどこかが、そう叫んだ。


目の前の偏差値65が、数式ミサイルをこっちに放ってくる。


反射的に、俺は拾った教科書を盾に構えた。……そして、そのまま突っ込んだ。


Fランだからって、なめんなよ。

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