アグレッサー部隊
今回も、吉本と共にハワイ攻撃部隊がパールハーバー・ヒッカム統合基地を攻撃に出撃した。
攻撃と言っても、殆どの地上設備は地下に移され、滑走路は穴ボコだらけ。港に停泊中の戦闘艦は沈黙を続けていた。
いつもの、曲芸飛行の訓練をしながら、地上設備に機銃掃射をかけていた。
しばらくすると、空母隼鷲より連絡が入る。
飛行体が統合基地に向かって来ているらしい。
十中八九、敵機である。
認知されないように、遠方に空母を停め、低空飛行で近付いていた様子である。
吉本は、時間稼ぎと彼らの飛行隊形を崩すため、急降下接近する。
相手は、こちらの赤燕に合わせてか、短距離離陸垂直着陸機(STOVL)のF-35Bである。
彼らから対空ミサイルが複数打ち上がってくる。
吉本はローリングでミサイルを避けつつ、こちらに向かって来るであろう敵機に対応しようとした。
敵機は向かってこない。
隊列を揃えたまま、秋津たちに向かっている。
『お前は、ミサイルと遊んでいろ』
そう言われているようであった。
しかし、吉本は彼らのテールコードを確認していた。
以前、敵対する前に、訓練で米国に行った際、手合わせした相手である。
アドバーサリー(敵)と呼ばれている部隊である。
訓練の時、敵戦闘機を演じる最高技術を持った部隊である。
あの時、吉本も訓練で戦った。
戦ったというより、遊ばれた。
わざわざ、米国まで来ている相手なので、レベルに合わせてくれているようであった。
彼らは、単に飛行技術だけでなく、戦術まで理解していた。
当時の吉本には、どうしようも無かった。
吉本は秋津に伝えた。
「F35-Bのアドバーサリー部隊です。用心してください。まともな戦い方はしないはずです」
「ほう。本腰を入れて来たか。了解した」
吉本は、敵機群を追って、上昇した。
隊列を揃えながら上昇する敵機の向こうに、秋津達の赤燕が見える。
赤燕達は迎え撃つ隊列も取らず、バラバラの曲芸飛行をしている。
『なにしている!』
吉本はそう叫ぼうとした。
しかし、秋津少佐である。何か策があるはず。
声を出さず見守った。
F-35Bは隊列を作ったまま、秋津達に突っ込んで行く。
『負けた』そう思った。
しかし、落ちる機体が無い。
数で優るF-35Bは数機の組で、赤燕一機づつに対応しようとしているが、うまく赤燕の背後に廻れない様子である。
追いかける相手は曲芸飛行している。
しかも、敵、味方の戦闘機が密集しすぎて、旨く機動が取れない様子である。
その内、赤燕から煙が出る。
戦闘機が落下。
パラシュートが開く。
吉本は『やられた』と思ったが、パラシュートにぶら下がっているパイロットには、手足がある。
見ていると、全ての赤燕から煙が出て、霧がかかった状態になっている。
そして、F-35Bは、全て落ちてしまった。
秋津隊長が宣言する。
「FFW作戦成功。撤退する」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます