異世界転生したので暗躍してみた

晴天

第1話 異世界転生

どんよりとした雲が空を覆い、冷徹な雨が降り注ぐ世界。


赤いカーテンがその世界を引き裂き、エピローグの旋律が鳴り響く。




シオリを挟む者は誰もいない。物語の終わりに手を振る者は誰もいない。


世界は深い悲しみに包まれ、赤い雨は誰の血なのか?








死後、何が待っているのか?


意識はどこに行く?


希望はどこへ消える?


愛はどこへ向かう?


憎しみはどこに流れる?


絶望はどこへたどり着く?




真実はただ一つ、それは虚無。絶望の果てに浮かぶ影。


人々は虚無を目の前にして、目を背けるしかない。


死後、すべてが虚無に還る。それが最も残酷な結末。








ああ、終わりたくはない。




そして、俺は一輪の花を手に、空へと飛び降りた。


その瞬間、世界が美しく輝くのを見た














飛び降りてから、どれくらいの時間が経ったのだろうか。おかしい、もうとっくに俺のファーストキスは地面に奪われているはずだ。それなのに、俺はまだ宙を漂っているのか? いや、だとしたら、死んだことにすら気づいていないのか?




そんな疑問を抱えながら、ふと目を開けてみる。




広がるのは――闇だ。地面もアスファルトも、何もかもが消え、ただ無限の黒が広がっている。まるで宇宙の中を落ちているかのような感覚だ。




不意に、耳元でどこかで聞いたことがある気持ち悪い声が響く。




「お前はこれから転生する」




「誰だおまえ?」




「名乗るほどの者ではない。だが、お前は今、第二の生を与えられた。ただ一つ、覚えておけ。お前の役割は、俺を殺すことだ」




その瞬間、闇が一瞬で消え、目の前に広がったのはまるで産業革命時代のイギリス。馬車がゆっくりと走り、霧が立ち込め、古びた西洋風の街並みが広がっている。




「あれ? ここはどこだ?」




目の前の水溜りに映った自分を見て、思わず息を呑む。長い白髪に、黒いコート。それはまるで――俺の姿?




「誰だ、こいつは?」




水面の中で、そいつは俺の動きをいちいち真似してくる。鏡の中の俺が、何か言いたげに目を見開いている。




少しの間、頭を整理する。




「あぁ、これ、多分俺だよな。」




異世界転生、いや、転移じゃなくて転生。姿が変わってるから。ま、そうだよな。きっと。




そして、あの謎の声。あいつが犯人だ。




「説明なしで転生とか、頭おかしいんじゃねぇの?」




ぶつぶつ文句を言いながら歩き続けると、前から妙な帽子をかぶった男が声をかけてきた。




「ちょっと、顔を見せてもらえないか?」




……別に顔を見せる理由もないので、顔を見せる。




その瞬間、男が突然、拳銃を向けてきた。




「伏せろ!!」




……え? えぇー!? いきなりなに? ってか、銃向けておいて「伏せろ」って言われても、どんな反応すればいいんだ?




そう思っているうちに、記憶がふっと頭に浮かんだ。どこか懐かしい記憶。でも、それが何かは分からない。それはさておき――




気づいた時には、俺の手元にあった刀が抜けて、無意識に男の喉を貫いていた。




「えっ……?」




自分でも何が起きたのか全くわからない。でも、周りはただ男の死体と、悲鳴だけが響いている。




「あぁ、やっちゃったか。」




――違う。こいつは俺じゃない。この意思は俺じゃない。俺はこの意思を、そうだな、仮に「a」と名付けておこう。




俺が冷静なのもこいつが原因だ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る