『メニュー』スキルでスローライフ

瓶詰め蜂蜜

第1話 田舎暮らし、はじめました。

 就活に失敗して、大学卒業後はフリーターへの道を一直線だと思い絶望している中、田舎の祖父の訃報が届いた。

 都会で一人暮らしを始めた俺はバイトや友達付き合いでなかなか祖父の住んでいた田舎へ顔を出せていなかったが、それでも祖父からの仕送りの野菜や米は有り難く、頻繁に電話をしていた。

 葬式に参加した時、幼い頃に面倒を見てもらった事を思い出してボロボロに泣いてしまった。俺は祖父が好きだったのだ。

 だからか、祖父の家や家財をどう処分するかという話になった時に迷わず手を挙げてしまったのだ。「俺が祖父の家に住みます!」と。

 他の親族も、「こんな田舎の土地、管理も大変だし」と意外とスムーズに決まり、こうして俺の田舎暮らしが決まった。


 そして今日、祖父の家へ引っ越して来たのだ。家具は有り難いことに、「俺が暮らすから」とそのままにされており、親戚達は祖父の貯金だけを分配した。叔父さん曰く、「特に暮らしに困ってないし、ギャーギャー争っても面倒くさいから」らしい。


「取り敢えず先ずは……」


 引っ越しで持ってきた荷物を俺の自室(元々は祖父の寝室だった)に運ぶと、仏壇の前に座る。


「爺ちゃん。婆ちゃん。今日からは俺がここに住むことになります。よろしくお願いします」


 手を合わせて拝みながら報告を済ますと、不意に頭の中で響くように《ピロリン》と音がした。電子音のような、そうじゃない様な不思議な音だ。

 誰か訪ねてきたのかと玄関へ確認に行ったが誰も居ない。気の所為だったのだろうかと思いながらもどうにも気になる。のでスマホで調べてみることにした。『頭にピロリンッと音がするのは何ですか』……我ながらイカれた検索だなと、思いながらも、出てきた検索結果を読んで見る。

 『頭にピロリンと音がするのはスキル習得の合図。お近くの役所の迷宮管理課へ鑑定をしに言って下さい』


「……って、はぁっ!?」


 まさかの検索結果に目がひん剥くほどに驚いた。俺がスキルに目覚めるとは思っても居なかったのだ。

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