剣舞
俺の手元に剣が吸い込まれるように飛び込んできた。
刹那、手が勝手に反応し、柄をしっかりと握ると全身を駆け巡るような力がみなぎり、体が熱を帯びる。
まるで剣そのものが俺を鼓舞しているようだった。
鋭い金属音が耳をつんざき、俺は反射的に剣を掲げ、迫り来る刃を受け止める。
剣を振り、敵の刃ごと弾き飛ばす。
山賊の一人が地面に背中から落ちる。
「お前……ただの小僧じゃなかったんだな!」
「俺の剣舞は実践にも使えるんだ!」
剣の軌跡はまるで舞踊のように優雅だった。
一歩踏み込むと、刃は風を切り、まるで舞うかのごとく流れる動きを見せる。
敵が剣を振り下ろすーーだが、その刹那、俺の剣は優雅な弧を描き、寸分の狂いもなくその軌道を外へと流す。
次の瞬間、剣が翻る。
左へ、右へ、舞うような動きが敵を惑わせる。
切っ先はあえて狙いを定めず、空を舞う風のように軽やかに躍動する。
敵はその動きについていけず、さらに俺は踏み込んでいく。
剣が鋭く閃き、細かく繊細な連撃が始まる。
まるで舞の演者が流れるような動きで観客を魅了するように、剣は予測不可能な軌道を描く。
敵は攻撃を防ぐことに精いっぱいで、反撃する余裕を失っていた。
最後の一撃ーー刃が舞うように翻り、敵の剣を弾き飛ばす。
鋭い金属音が響き、刃が虚空を裂く。
敵の体勢が崩れたーー俺の剣は、まるで舞いの幕引きのように、静かに刃先を突きつけた。
その視界の片隅で、お兄がジリジリと大刀を突きつけられて追い込まれているのが見える。
「お兄!」
「リウ!」
「え!? お兄!? 今、リウってーー」
気がそれてしまった隙をつかれて、山賊が拾い上げた関刀が振り落とされる。
すんでのところで刃の力をそいで反撃する。
しかし、体勢が悪く剣が軽すぎてーー剣が跳ね返され、腕が一瞬しびれる。
しまった!
防御が崩れ、隙を晒してしまった。
次の瞬間、鋭い刃が俺を狙い、風を切る音とともに振り下ろされる。
鋭い刃が空を裂き、俺の肩に触れるか触れないかの微妙な距離で通り過ぎる。
だが、避けきれず、かすった瞬間に熱い痛みが走る。
傷口から血が滲み、じわじわと服を染めていく。
「
「お兄!?」
必死の叫びとともに、視界が歪む。
お兄の腕が俺の体をしっかりと抱きしめ、俺たちは背後の滝つぼに落ちていった。
水面へ向かって急降下する間、すべての音が遠のいていくーーただ、ただ、重力に身を任せるしかなかった。
バッシャァンッ!!
滝の轟音が響き渡る。
冷たい水が俺たちを包み込み、激しい流れが全身を滝底へと押し流す。
軽くとも無駄に布が多い衣が水を含み、うまいように泳げない。
必死に手足を動かすが、水の抵抗が俺を思うように動かせない。
その時、滝つぼの底から、ほの暗い何かが揺らめきながら浮かび上がってきた。
闇の奥から這い寄る影……まるで水そのものが意思を持ち、俺たちを狙っているかのようだった。
それは手のように見えたが、どこか人間のものとは違う――冷たく、硬質な感触が足首に絡みつく。
俺の足首をグッと力強くつかむとそのまま、滝つぼに引きこまれた。
抵抗する間もなく、俺たちの体は水の深淵へと引きずり込まれていく。
光が遠ざかり、暗闇がすべてを支配するーー息が……苦しい。
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