神に捧ぐ神姫
「それなら、私がその
お兄の突然の申し出に、俺は息を飲む。
お兄の表情は真剣で、その言葉に迷いはない。
だが、そんなことを言い出すなんてーー。
「お兄!!」
俺は思わず声を荒げる。
こんな怪しい
ここは俺たちのいるべき場所じゃないーーそれだけは確かだ。
それに
いや、むしろそうなる確率の方が高い。
生贄って言っているんだから。
「
お兄の瞳は、遠い場所を見つめるように揺れる。
俺はふと、前世の姉貴を思い出す。
姉貴はあの日、俺と共に死んでお義兄さんと結婚できなかった。
「そうじゃなぁ……」
どうせ、従順な方を残したいとか思っているんだろ!
「……
俺は覚悟を決めたように言った。
「ダメよ」
その言葉には、俺を止めたいという強い意志が込められていたが、俺はその声を聞こえないふりをした。
「でーーこの
俺の言葉に、一瞬の沈黙が落ちた。
誰も答えようとしない。
やはり、口を開いたのは
「えっと。この先の滝で?」
「滝……で?」
「そ、そうじゃ……舞を踊る?」
「踊る……?」
「そ……そうじゃ。神に捧げる舞を踊るのじゃ……」
ここまでの流れを考えれば、〖舞を踊る〗という言葉がいかに薄っぺらい意味しか持っていないのかがわかる。
「そ……それから……えっと、その後……神が連れていく?」
「なんでさっきから、そんな疑問形ばっかりなんだよ!」
俺は苛立ちを隠さず、
「なんせ、初めての
「初めての祭祀? この
俺は
全員が、どこか緊張した表情を浮かべている。
何かを言いたくない、知られたくない、そんな空気がひしひしと伝わってくる。
「こ、今年から新しく執り行う祭祀なのじゃ……ゃ……えっと……いや、旅商人が行なった方が良いと言っていたのじゃ!」
また、旅商人か。
俺は思わず鼻で笑った。
旅商人が言った? 旅商人がそんな利益にならないことを言うはずがないだろ。
それともなにか? この
「
話し合いは終わり、
逃走を阻止するためなのか、護衛と称して鋭い目つきの見張りが関刀を握りしめ、木戸と外に入口に立っていた。
「
「お兄……、大丈夫だよ。剣舞を披露して終わりだよ。きっと」
お兄とそして何よりも自分を安心させるために、そうであって欲しいと願いを口にする。
「そうかしら……。そうよね、きっとそうだわ」
お兄は震える声で、自身に言い聞かせるように呟く。
俺は
「もし、俺に何かあったら……お兄だけでも逃げてくれないか?」
「何言ってるの、
俺は声を殺し、喉の奥に込み上げる感情を押し込めながら、お兄に静かに言った。
「お兄……。俺もさ。別に
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