赤月奇譚ー俺と姉貴の絆は前世から続いていた件ー
ヴィオレッタvioletta
名無しの郷
季節は秋も深まる頃。
白い靄が立ちこめる谷間にひっそりと佇むこの名無しの
瓦屋根の家々が竹林の陰にひっそりと並び、
これまで通り過ぎてきたどの
「なんだろうな。これ……〖凶〗って文字が刻まれているのに、不吉な気配は感じないんだよな」
風雨に晒され、かなり風化した石柱だが、微かに残った彫りを見つめると、一瞬、龍の鋭い目と視線が交わったような錯覚を覚えた。
「この龍が何か悪いものを封印してくれているんだな。それにこの〖紋〗。俺のと同じか?」
自分の腰に携えている剣を抜き、柄に刻まれた紋と見比べる。
「やっぱり……全く同じ紋だ」
この剣は、直接ではないがお父から貰ったものだった。
紋について教えてもらうにも、そのお父は失踪し、どこへ行ったのかも分からない。
俺たちが
ーー血のように赤い月昇るーーが名の由来だというその
そして数日前、辿り着いたのがこの名無しの
「この
だってさ、絶対、ここはおかしいって!
ほら、今も見てる!
木戸の隙間から覗く
のんびりした田園風景なんてどこにもない。
前世の俺の記憶が警鐘をならしている……ってレベルじゃない!
菜刀が、
りんご農家のオヤジが、刃に鳳凰の紋様が輝いている大刀を背負って収穫するわけない!
よぼよぼのジジイが関刀を杖に……なんでそんなものを日常使いしてるんだ!
あっ! お兄だ!
「お兄、ただいまーー、チッ」
お兄は、
お兄を見送るためなのか、
「あら、
その手はなんだよ!
くそエロジジイめ!
お兄は「それでは」と
「
「お兄!! また、あのジジイに粥をあげたのか? どうせ夜になれば酒飲んで騒いでるんだから! 飯なんか食べずに早くくたばればいいんだ!」
片足が木の棒で作成された義足が歩くたびにギシギシと不吉な音を立てる
その足のせいで「働けない」とか「金がない」「食べ物もない」とか呟いてはいるが、夜な夜な
俺らは呼ばれたことがないから実際はわからないんだけど、間違いない。
だって、夜な夜な凱旋宴のごとく派手に騒いでいるんだ。
そのうち、俺らに〖舞え〗と言ってくるはずだ。
「ええ? この子は本当に口が悪いわ……
「また、その話? それより! こ・の・キョウ・は・イ・ヤ・だ。嫌だ! 無理だ! というかこの
俺は足を止め、お兄の腕を掴むようにして強く念押しする。
「
「感謝!? 何に? それに、前世持ちの俺が言ってるの! この
どんな小さな集落にも、誇りを持った名がある。
けれど、この
それが何を意味するかを考えたくなかった。
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