エピローグ



 死霊モンスターの増殖が収まった後、シャックス達は国王や要人たちの元へ赴き、事の顛末を伝えた。


 その時王都では、大樹が急に枯れたことで少しだけ混乱があったとシャックス達は知る。


 前世の知識から何が起こったのか推測したシャックスは、事件の顛末も含めて国王たちに話した。


 大樹の事は、かつての古の時代で王と王妃が調べていた事があった。


 詳しい事は分からないが、大樹に供給されている惑星のエネルギーが、どこかの村に集まっていると言う事。


 かつても大樹の一本が元気をなくしたことがあり、不吉な事だとささやかれたが、それ自体が直接何かの災いを引き寄せるものではないと結論つけられていた。


 大樹が枯れたという事は、何者かが大樹に供給されているエネルギーに何かをしたのだと推測される。


 エネルギーの件など、心配事はあったが、この国の者達が団結すればそれも乗り越えられるだろうとシャックスは考えていた。


 ひとまず魔王復活の危険を未然に防いだという事で、シャックスはまた国王から勲章をもらう事になった。


 建国祭に合わせて行われたため、例年より賑わいが増したのだった。


 もはや、知らぬものがいないくらいの英雄になったシャックスだが、表舞台に出る事はすくなくなった。


 彼は時折り、国を揺るがす大事件に力を振るいながらも、家族に囲まれながら穏やかな日々を過ごしていくことになる。





 未踏大陸は徐々に開かれ、人の交流が活発になった。

 その過程で、エルフと結ばれる人間もいた。


 王都を出歩くエルフの姿も多く見られるようになっていく。

 

 そんなエルフの中でも、かなり社交的で冒険心の高い、ミザリーは各地を放浪してまわっている。

 シャックスの生涯の中では、最も成長した時の見た目は20代の女性くらいになり、老化はやはり緩やかなままだった。


 リューンは人間や他の種族との懸け橋となり、エルフたちのために働き続ける。


 ナギやロックは、それぞれの家庭を持って元気に暮らしていく。

 ナギは幼馴染と、ロックは獣人の女性と結婚して、子供を授かる事になった。


 国の王は十年後に代替わりして、聡明な男性が国民たちを導いていく。

 未踏大陸の件も慎重に扱い、侵略行為のような真似はしなかった。


 エネルギーの件も研究が進み、問題の解決にめどがつきそうだった。


 師匠であるセブンは、辺境の田舎暮らしを続けていた。


 王都でシャックス他と一緒に過ごしていた時間もあったが、そちらの方が性に合っていると言い、シャックスの心の傷が癒えた頃に旅立った。


 プラムレは時間がかかったが、病が完治し、元気になった。

 いくあてがないといったので、シャックスの家で雇うことにした。

 助けたのならば、その後も面倒を見るべきだと思ったからだ。


 レッドは一人前になるのに時間がかかったが、レリードの元でなんとかやっている。

 たまに失敗する事もあるらしいが、同僚に助けられていた。







 年月が流れ、シャックスは、三十歳になった。


 使用人のカーラやプラムレと、そして、数年の付き合いを経て人生をともにする事になったアーリーと、新しく生まれた命と共に王都の屋敷で暮らしている。


 時々セブンが顔を出す事があり、その時は賑やかになる。


 以前とは違い、複数人で行動するようになったセブンが仲間を連れてくる事があるからだ。


「あなた、子供にまた剣を持たせて。怪我をしたらどうするの!」

「こいつが望んだ事だ。俺が強制したわけじゃないよ」


 子供が生まれ、その子供が片手で数えるくらいの年になった頃には、シャックスは短い間だけなら喋れるようになっていた。


「そんな事言って、この間は「剣はいいぞ。かっこいいぞ」とか言ってたじゃない」

「そんな事もあったかな」


 シャックスとアーリー。

 二人は仲睦まじい夫婦として、多くの者達に周知されるようになった。

 その話に嘘や誇張はなく、二人はこれまでもそれからも、二人三脚で人生の困難を乗り越えていくのだった。


 仲良く談笑するシャックスとアーリーに幼い少年が声をかける。


「ねぇ、パパ、ママ。稽古あきた。また昔の話して。ほら、パパとママが出会った頃の!」


 走り寄ってきたその少年は、父親と母親を見上げながら屋敷の方を指さした。


「いいわよ。でもお昼ご飯できたから。カーラさんとプラムレさんが、呼びに来たわよ」


 視線を向ける先には、つい最近人生を共にする相手を見つけたカーラの姿がある。

 子宝には恵まれなかったが、養子を迎えて新しい家庭を持つ予定だった。


「カーラのご飯はいつも美味しいからな、今日は特別な材料が手に入ったって聞いたぞ、楽しみだ。プラムレのおやつも甘くて頬がとろけちゃうかもしれないな。それじゃあ行こうか、マシロ」


 シャックスはハクの事を忘れないように思いながらつけた名前で、我が子を呼ぶ。


「うん、ごはん楽しみ!」


 親子三人は仲良く手を繋ぎながら、家の中へと戻っていくのだった。



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