炎の大精霊と対面しました。
「ここは……?」
突然連れて来られた見知らぬ空間に、リアが小さく疑問を口にする。
「ここは、俺の領域だ。」
その問いに、僕達をこの空間に連れてきた張本人である男性が言う。そんな彼の髪と瞳は燃え盛る炎のように赤く、鍛冶屋のような服装をしている。
「それよりも……こんなところまでよく来てくれたな。人間の身体でここまで来るのは大変だったろ?」
「そうですね。皆の協力のおかげです。」
「そうか。……流石はアルが認めた精霊術士だな。」
彼の言葉に答えつつ皆に感謝の意も込めて力を貸してくれたお礼の魔力を受け渡していると、その様子を見た彼が笑みを浮かべながらそう言う。
「正直、どんなやつかと思ってたが……。これなら、安心して盟約ができるな。」
「そう思っていただけたのなら、嬉しいですね。」
「よし!それじゃあ早速やるか!……っても、俺の場合はアルのやつとは違って、盟約を結ぶ相手に何か俺の創った魔導具を渡す、って形だがな。……お前、名前は?」
「ユーリです。」
「じゃあユーリ、何か欲しい魔導具とかあったりするか?武器でも、防具でも、何でもいいぞ。」
「そう、ですね……。……一つ聞きたいんですが、すでにある魔導具の調整ってできたりしますか?」
「ああ。全く問題ないぜ。」
「なら──」
僕はリアに聞こえないように、とある魔道具を作って欲しいと伝える。それに加えて、僕だけじゃ作るのが難しくて諦めていたとある武器の製作もお願いする。
「出来ますかね?」
「なるほどな……。それなら、1日あれば作れると思うぜ。」
「本当ですか!」
「ああ。出来たらこっちから伝えるから、取りに来てくれ。」
「分かりました。じゃあ、これの調整をお願いします。」
僕は首からかけていたネックレスを外し、彼に預ける。
「……そうだ。ここに目印って置いておいてもいいですか?」
「目印?」
「もう一回ダンジョンの入り口からここまで来るのも少し手間なので、直接ここに来られるようにしておきたくて。」
「なるほど、転移か。……それくらいなら大丈夫そうだな。」
「ありがとうございます。」
そう言って僕は、彼の領域の端の方に魔力の印を刻む。
「これで大丈夫です。」
「おう。……彼女、何とかなるといいな。」
「ええ。……それでは、また。」
最後に彼からかけられたリアを思いやるような言葉に同意しつつ、僕は彼 ── 炎の大精霊・ヴァルカン様の領域を後にした。
「さて、と……。これでここでやることは終わったわけだけど……。どうする?リア。」
彼の領域の外に出た僕は、リアに問いかける。
「……できれば、すぐにでもここを離れたいかな。」
「分かったよ。それなら……転移。」
リアの意見を聞き、僕はダンジョンの出口に向かうのではなく、街の入り口へと転移する。
「すみません。」
僕は、街の出入り口に立っている衛兵さんに話しかける。
「ここでやりたいことも終わったので街の外に出たいんですが、いいですかね?」
「ああ。この時間なら問題ないな。」
「ありがとうございます。……あと、一つだけ伝言をお願いしてもいいですか?」
「ん?何だ?」
僕は衛兵さんに、このまま街を出ることにしたと、さっきとった宿の店主に伝えてもらうように頼んだ。
「了解した。責任を持って伝えさせてもらうぜ。」
「お願いします。」
「気をつけてな。」
そんなやりとりの後、僕達は街を出る。
「あらかじめ伝えておいたし、店主さんもあの状況を見てはいたけど……やっぱり少し申し訳ないなぁ……。」
「そうだね……。……それより、これからどうするの?」
「
「それって?」
「僕のじいちゃんのとこ。……転移。」
そして僕達は、火山を挟んだ反対側の、とある街の入り口へと転移する。
「やっほー。」
「おう……ってユーリさん!いつ戻ってきたんですか!」
「今さっき着いたとこだよ。入っていい?」
「もちろん!」
門の入り口に立っていた、虎の耳を生やした男性とそんなやりとりをした後、僕達は門を潜り、街へ入る。
── 火山の麓にあるこの街は、フォグの街と同じく温泉が湧き出している。だけど、一般人や探索者が多く利用する
「じゃあ、改めて……。ハクメイの街へようこそ、リア。」
門を潜ったところで僕はくるりと振り返り、そう言いながらリアに向けて礼をする。
「ここがハクメイなんだ……。」
「フォグの反対側だし、チェブリス王国から向かおうとするとかなり回り道しないといけないから、向こうだとあんまり知られてないと思うけどね。」
「そんなことないよ!ハクメイと言えば、世界的に質の高い温泉で有名だもん!」
「あ、そうなの?向こうだとほとんど話を聞かないからてっきりマイナーなのかと思ってたよ。……それより、まずは身体を休められるところに向かおっか。」
「うん!……でも、こんな時間に空いてる宿ってあるのかな……?」
「大丈夫。確実に空いてるところがあるから。」
そう言いつつ僕は、街の奥へ向かって歩き出すのだった。
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