第10話 脳内で巡る危険信号

「うっひょ〜! 私のベッドだ〜!」


 私はハイテンションで、ルイル様から貰ったベッドの上で跳びはねる。


 家で使っていたものよりも硬いけれど、案外寝てみたら気にならないかもしれない。


 ともあれ今は私用のベッドが来たことを喜ぶべきだろう。


「過去一元気だね〜」


「当たり前! 睡眠が一番大事だから!」


「うんうん。喜んでくれて、ルイル様も満足そうだしよかったよ」


 なんて言いながら、シンシアは山盛りに積まれた魔導書を眺めて苦笑する。


「村長さんったら、ナナちゃんが可愛いからってこんなにもくれちゃうなんて……魔導書って高いからさすがに申し訳ないな〜」


 私はふと現実に戻って表情筋が死ぬ。


 そうか、私は魔導書を読まなきゃいけないんだ。


 まさか転生してまで勉学に励まなくちゃいけないなんて……少し悲しいな。


 まあでも、ルイル様やシンシアはよくしてくれてるし、期待してくれているんだから読まないわけにはいかない。


 よーし、少しばかり頑張りますか。


 もちろん睡眠の邪魔にはならない範囲でね。


 私は積まれている魔導書の方まで行き、何冊かを手に取る。


 かなり分厚い……けど前世で買っていた参考書と同じくらいだからそうでもないな。


「お! 早速読むんだね! なんかお茶でも入れてあげようか?」


「うん。お願い!」


「オッケー!」


 そう言って、シンシアはパタパタとキッチンに向かう。


 なんだかこの感じ懐かしいな。


 学生時代……それも受験生の頃を思い出す。


 私は椅子に座り、正面の丸机に何冊か積む。


 よし、本格的にやっていきますか。



 どれくらいの時間が経っただろうか。


 気がついたらシンシアは出かけていて、外はもう真っ暗になってしまっている。


 恐らくは十時間くらいは勉強に励んでいたのだろう。


 ああ……これくらいならどうってことはない自分が怖い。


 悲しいことに長時間の勉強は体が慣れてしまっているんだよな。


「でも夜九時か。さすがにシンシア遅いな」


 時計を見て、ハッキリと時間を理解する。


 外も気になるし、シンシアを探すついでに色々と見て回ってみようかな。


 そう思った私は、近くにあった紙に一応外に出ることを書いておく。


 もし入れ違いになって心配させちゃったら申し訳ないしね。


「カキカキっと」


 メモを残したので、早速私は夜の村の散策に出てみた。


 シンシアの家は村の隅の方にあるので、少しばかり中心に行くには歩かなければならない。


 でも、なんていうか。


 この村……魔物が出てくること以外とても平和だ。


 村人たちは楽しそうにお酒を飲んでいるし、この時間なのに子どもも出歩いている。


 まあでも、魔物が出てきて大変だから村内で争う暇なんてないのだろう。


 なんて思いながらのんびり歩いていると、急に肩を叩かれる。


 刹那、脳内に無数の考えが高速で巡った。


 夜の村。幼女が一人。突然肩を叩かれる。


 これはもうあれだ……不審者に襲われそうになっている!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る