第9話 労働からは逃げられない
まあ、そもそもなんで文字が読めたのかってところもあるけれど。
それは恐らく転生する際に基礎的な知識は女神か何かに与えられた……ってところかな。多分。
私がそんなことを思っていると、ルイル様がにししと笑う。
「この子はもしかしなくても天賦の才を持っているのかもしれんの。こんな小童、どこで拾ってきたんじゃ?」
ルイル様の問いにシンシアは答える。
「はっ……確かに……」
口に手を当てて衝撃を受けた様子のシンシア。
その様子を見てルイル様は顔をしかめる。
「おいおいまさか何も考えてなかったのか? お主、下手すりゃ犯罪じゃぞ」
わなわなと震え出すシンシア。
少し面倒くさくなってきたな。
恐らく、というか間違いなく私には親はいない。
なんせ転生者なのだ。いない方が自然と言っても良い。
とりあえずここは安心させておこう。
「えっと……実は家族はいなくて。気がついたら一人で生きてたから大丈夫だよ」
可能な限り可哀想な感じで言ってみた。
するとルイル様は頭を掻きながら。
「それならいいかのぉ。帰る家もないし、保護ってことで面倒みても誰も文句は言わんじゃろうし」
というか、保護してくれないと私は間違いなく野垂れ死んでしまう。
「よかった〜! それなら安心!」
意外とシンシアって何も考えていない不思議ちゃんなのかな。
なんて思っていると、ルイル様が私の頭を撫でてくる。
「お主は今日から我が村の一員じゃ。しっかり面倒を見てやるからの」
まるで子どもに言うような優しい言葉である。
まあ私、子どもなんですけどね。
「しかしシンシアよ。お主の家は寝具とか諸々足りんじゃろ? 妾が色々と用意してやろうか?」
「すごく助かります! 実は若干困ってたんですよね〜!」
ん? 待てよ。
ということはもしかして……私用のベッドとか貰えるの?
私が目を輝かせていると、ルイル様がふふんと鼻を鳴らす。
「期待しておれよナナよ。お主が快適に暮らせるように用意してやるからの!」
「ありがとうございます! ルイル様!」
「おお〜元気が良くていいことじゃ!」
恐らく転生して一番大きい声が出たと思う。
やはり持つべきものはルイル様である。
私は嬉しくてにこにこしていると、ルイル様が肩を叩いてくる。
「じゃから……しっかり働くのじゃよ!」
「え……?」
もしかして私、また労働から逃げられなくなっちゃった?
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