被害者は私だけ



 私は、根っこからこういう考え方の人間なのだと思う。


 ――被害者が私だけなら、もう何も考えずに全てを投げ出せる。

 どうなったって構わない。自分一人が損をして、傷ついて、終わるなら、それでいい。

 むしろその方が気楽だったりもする。


 だけど、そこに“他の誰か”が巻き込まれるとなると話は変わる。

 被害者が私だけじゃないなら、私は必ず「完璧以上」に仕上げようとする。

 絶対に手を抜かない。誰にも責めさせない。誰にも迷惑をかけたくない。

 それが、私の中にある“もう一つのスイッチ”だ。


 多分、学校の成績が良かったのもこの性格のせいだと思う。

 「チームで発表します」なんて言われようものなら、全体の印象を自分のせいで下げるわけにはいかないと、毎回命を削って準備した。

 「みんなでやった」なんて嘘だ。私は「みんなの分まで背負った」だけだった。


 でも、これって別にカッコいい話じゃない。

 むしろ不器用で、生きづらい性格だと自分でも思う。


 “自分だけならどうでもいい”っていう諦め癖と、

 “誰かのためなら極限まで頑張る”っていう自己犠牲癖。


 どちらも私を形づくっている。


 それが良いのか悪いのかは分からない。

 けれど、この性格で生きてきた自分を、少なくとも私は理解してあげたいと思ってる。

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