祈りの代

水奈瀬りの

プロローグ


 ――神よ、どうか、どうか邪に抗いたまえ――


 一人の少女が祈るように語り掛ける。


 ――今更何を、我はもう、貴様ら人間のせいで力を……。きさ、ま、らの――


 どこからともなく声が響く。


 轟轟と吹き荒れる風。草木は暴れ、岩までもが空に舞う。その中でも、少女は何も出来ない無力さに打ちひしがれながら、震えた声でただ願った。


 ――いつか、いつかまた、あなたと出会えますように――


 最後の神との対話は、祈りは、吹き荒れる風に巻き上げられていった。


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