10. 夢の中は夢の外ではない
おれは、
新藤は、コーナーキックでインスイングのボールを蹴るかもしれない。新藤は、同じ単語を三回引いてしまったとき、辞書を壁に投げつけるようなやつではないとは言い切れない。
新藤は、サッカーにおいて、開催国枠で出場したナショナルチームの戦績に詳しいこともないのかもしれないこともない。新藤は、英語学習において、接頭辞と接尾辞をまず頭に入れてから単語を覚えるタイプだと言っても言い過ぎることはないのかもしれない。
新藤は、出場選手の国籍枠に関するルールについて詳しいからといって、強調構文を使いこなせるというわけではないに違いないと断言することはできない。新藤は、イディオムを熟知しているとはいうものの、交代選手枠の使い方におけるノウハウに
生命倫理において、人間はどの時点で人格が宿るかについて闘われた論争に通じている可能性もなくはない。宗教社会学における世俗化論に関する学術的動向を注視していないとも言い切れない。「バスケットボールカウントの厳密な適応と選手の主体性や観客のリアクションの変化」というタイトルで、スポーツ社会学の論文を書いているかもしれない、という仮定を捨て切ることはできない。
フリースローの成功確率は六十四パーセントくらいと推測してもあながち間違いとは言えないかもしれない。本を読むときは駅ちかの喫茶店を好んでいるという印象を抱くことは適当ではないとは言い切れない。ボールペンは太いものを使うことがないと断言することはできないと言えなくもない。好きな俳優を
地下アイドルの運営の経営方針について持論を展開するためのハウツーがないと言い切ることは、
ていうか、幽霊かもしれない。
あれ? これ、夢じゃん。夢じゃないとおかしい。
それに、なにかを真剣に考えるときには、自分の身近にある言葉から考えなければならないって、あの日あのとき教えられたじゃないか。その教えを
というか、夢の中でなら、おれの知らない、いろんな知識が宿るものなんだな。夢の外では、そうはならない。夢の外は、夢の中のように、なんでもできる空間ではないのだから。限界が存在する。まあ、わかりきったことだけど。
それで、新藤って、どういうやつなんだ?
おれは、そんな疑問をまぶたに乗せたまま、目を覚ました。
おれのなかでの新藤の
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