相棒錬金

シロニ

第1話 「アホ女神に騙されて」

マイペースに書きます。




足元に顔を向け、目線を落とした暗い顔で今日もその青年は学校からの帰り道を1人歩いていく。

高校の友人たちに一緒に帰宅するように誘われたが、仲のいいその2人組の帰路を邪魔するのは悪いと自分を卑下し、それを隠した取り繕った笑顔で「誘ってくれてありがとう!でもごめん...今日は家で大事な用があってさ...早く帰らなきゃなんだ」と遠慮をする。


彼の名は「鳴神 堅護(なるかみ けんご)」島根県に暮らし、大国主神オオクニヌシノミコト様をお祀りする出雲大社の近くに暮らす一般家庭に産まれた次男、そして彼がこの様な暗い性格をしているのには理由があった。

彼は幼馴染みである2人の友人の内1人を中学生時代に「いじめ」による鬱が原因の「自殺」により失ってしまっている、大切な友を護ることが出来なかった強いショックは彼の心に大きな影を残してしまったのだ。


「はぁ...せっかく誘ってくれたっていうのに、嘘をついてまた断ってしまった...このままじゃあ俺クラスで浮いちまうだろうなぁ...いや、もっと前から浮いてきているか...はぁ...」


彼は駅に行くため、信号が進めに変わるのを待っている際にブレザーのポケットからスマートフォンを手に取る、すると待ち受け画面に母親からのメッセージが届いていることを確認する。


「(ママから...?)」


メッセージの内容は今日は父共に帰宅が遅くなるとのこと、これで堅護は家に1人になることが確定した、大学生である姉は寮に住まい、兄は東京にて一人暮らしをしているためだ。


「今日も1人か...まぁ、元気を取り繕わなくてもいい時間が増えるのは楽か...」


信号の表記が変わり、彼は駅へと進んでいきそのまま惰性で電車へと乗る、移り変わる景色を見ながら何も考えることなく近づいていく夕暮れをその眼で見つめ続けていた。

そして堅護は駅の改札を降りて目に入ったその景色にハッとする。


「っ...!?ま、また来てしまった...何やってんだ...俺は...」


彼が降りたのは自宅の最寄り駅ではなく「出雲大社前駅」彼は自宅ではなく出雲大社へと無意識に足を運んでしまっていたのだ。

しかしこれには堅護自身にも分かる理由があった、堅護は中学生時代に幼馴染み2人とよく出雲大社へと足を運びお参りをしていたのだ、幼馴染みたちが。


「(恋人が出来ますように...!恋人が出来ますように...!大国主神オオクニヌシノミコト様っ!お願いします!僕に可愛い恋人との縁をくださいっ!)」

「(お願い神様っ!この素晴らしい私に周りの雑魚どもが羨む素晴らしい恋人との縁をくださいっ!)」


と、拝む様子だけで分かるその必死すぎる姿になんだか笑ってしまったのは、良いものであったと胸を張って言える良い思い出だ、しかし自分はそれに縛られてしまってもいるのだと堅護自身はよく分かっていた、そうでなければ無意識にわざわざこんな複雑な気分になる所にまで来たりはしない。


「...お参り、していくか。一応...来たからには...」


堅護は出雲大社へと入っていき手と口を清めた後に正中(神社内の参道の真ん中は神様の通り道、神殿の前に来るまでは参道を通る際は左右を避けましょう)を避け参拝を行う。


「(...神様、願わくば...もう全部を忘れたい...あいつの顔が脳裏に浮かぶ度にこんな気分になるのはもううんざりなんだ...)」


堅護は五円どころか千円を賽銭箱に入れ、合わせた両手に祈りを込める、そして一礼をした後に神殿を後にした、その時だった。


「...」

「...っ!?」


堅護は神殿の屋根の上辺りに「何かから見られている」気配を感じて、バッ!振り返った、大きく見開いた目で神殿の屋根の上を見るもそこには誰も居なかった。

しかし居なかったのはそれだけではない、なんと「先程まで居たはずの他の参拝客」までもが居なくなっていたのだ。


「は...?人、他にも沢山居たよな?一体何処に...新手のドッキリか何か?だとしたら出雲大社でするとかロック過ぎるだろ」


しかし、その問いの答え合わせは意外とすぐさま訪れた、神殿の前に「3つの光」が輝きをもって現れたのだ、それらは落ち着いていて誠実な雰囲気を感じる青の光、穏やかで優しい雰囲気を感じる緑の光。

そして一際大きいどころか「二際」強く光り輝くろくでもない雰囲気を感じる赤の光の3色に分かれ光り輝いていた。


そして光はやがて小さくなっていき、光が消えるとそこには3人の「日本神話風の衣装」を身にまとった3人の男女が現れたのだ。

日本神話「風」と描写されたその理由は有識者がよく見れば「細かい所をよく見るとパチモン臭が凄い」というのが理由で、彼らはよく見れば所々がなんだか怪しいのだ。


「こんばんは、人の子よ。私は大国主神オオクニヌシノミコト、後ろに居るのは私の使いの者たちです」


赤い光から現れたその女は、自然な赤毛色の長い髪、金色の瞳、見てくれは良い面にヨーロッパ辺りの女性平均位はありそうな身長で、自身のことをなんとオオクニヌシノカミであると名乗ってきた。

まともな日本人であれば、いくら知識がなかろうと見た目も性別も違う時点で警戒するものであろう、当然、堅護はまともな方であるためそれを信じることはなかった。


「は?お前が?騙されねぇぞ、そもそも大国主神オオクニヌシは男だ、髪も違うし」

「それは仮初の歴史、本来ならば私のこの美しい容姿を悠久の時を持って伝えてもらいたかったのですが、色々とわけがありまして」


「そのわけってなんだよ、言ってみろよ」

「それは...」


大国主神オオクニヌシ?は、堅護の質問に答えられず苦しそうな表情のまま固まってしまった、赤い女の後ろに控える2人の表情はとても気まずそうなものになり冷や汗をダラダラとかいている。


「えっ...あっ...こ、こほんっ...!私だけではなく、後ろの2人の自己紹介もさせておきますね。ほら、2人も彼に自己紹介をしなさい...あっ、なさいな」

「おいこらっ!?話を逸らすな!」


そんな所々ガバを出す大国主神オオヌニヌシノ?からの命令に、渋い顔をしながら2人は咳払いをしたところで自己紹介を始め出す。


「はぁ...全く母さんったら...ごめんね堅護君、今更取り繕っても無駄だろうし正直に言うよ。僕はマール、この人の息子さ」

「あっ!?ちょっとマールってば!なんで言っちゃうのよー!?」


青い光から現れたその男は、なんと水色の半透明の綺麗な長髪を風になびかせていて、目の色も髪と同じで目鼻立ちも整った超が付くほどのイケメンであった。

そして優雅な所作で堅護に対して深々とお辞儀をその様子に、堅護は礼儀正しい印象を強く覚えた。


「もう...だから正直に言いましょうって言ったのに...お母様ってば...あぁそうだわ、初めまして、そしてこんばんは堅護君。私の名前はね、モンテっていうの!よろしくね?」

「マールまで!?」


緑の光から現れたその女は茶髪の髪に黄緑色のぱっちりお目目、そして毛先がなんと川のようになっていて、よく見たら足元には花が咲いていて、足を地から離す度に散っていき、彼女が再び地に着けると彼女の足元には1面の緑と花畑が一瞬で広がる。


「はぁ...あぁ〜!!もういいわよ!やめたやめたっ!こうなったら正直に全部話してやるわ!私はハンナ!あんたに頼みがあってきたの!」

「はぁ...?頼みだぁ?」


「こほんっ...!まず、私たちは『異世界』から来たりし神、つまりは異世界人ね!」

「異世界人だって?でも...うーん...明らかに人じゃないその姿を見る限りそうなのか...?」


「えぇ、そして私たちは困っているの!悪しき魔王の存在に!」

「あぁ、母さんの言う通りなんだ。僕たちの元いた世界には邪悪な魔王が世界を脅かしていてね、僕たちはそれに何とか対抗してきているものの、実はそれが厳しくなってきて...」


マールが暗い顔をしている、彼らが元いた世界で何があったというのだろうか?


「えぇ...あのね、私たちの元いた世界では、今人々の私たちへの信仰が揺らいできているの。私たちは信仰心を依代として人々に加護を与えていたんだけど...魔王軍のせいでそれもままならなくて...」

「そうっ!だからよ堅護!あんたには今から私たちの代行として、勇者として異世界に行って欲しいの!」


「はぁ!?俺がっ!?勇者に!?」


そしてハンナが神殿に向かって手をかざす、すると神殿の前に幻想的な色合いに輝く大きな扉が現れる。


「わぁぁー!?なんだこれ!?」

「フフッ...見なさい...これがあんたを異世界に送る入口にして、この私が作り上げた発明品よ!」


その扉が開くと、中は虹色のような、はたまたオーロラ色のような幻想的な空間が広がっていた、光は奥の中央に向かって進んでいきまるで堅護に進むべき道を示しているかのようだった。


「この扉の先を進んでいけば、あんたはあっちで勇者として転生することが出来るわ!あっ、安心しなさい!元の身体は私たちが厳重に管理するし、サポートだってするから!」

「転生!?なんで!?」


「だってそのままの身体じゃ魔術を使えないんだもの、ほいほいスキルを与えてチートで無双とか出来ると思った?無理無理。この世界で産まれた貴方の肉体は根本から魔術を使える仕組みになってないの、だからあっちで転生してもらうってわけ」

「お母様の言う通りなの、ごめんなさいね。残念だけどこの世界の魔術に適応しなかった今の人類貴方たちは魔術が使えないの、だからそのまま行ってもきっと魔王軍は倒せないわ」


「あぁ、2人の言う通り。それに空気とか酸素とか色々環境が違うからその身体のままいきなりあっちに行くと苦労することになるよ、悪いことは言わない、僕たちを信じてはもらえないかな?」

「そう!堅護!あんたの力を貸して欲しいのよ!実はあんたは異世界転生への適合率が100%なの!これって凄いことなのよ?だから私たちはあんたに目をつけたの!」


「ちょっと待て!あんたたちの事情は分かった、嘘は...ついてないと思う。でも!なんで俺なんだ!他のやつらしいやつとかでもなく、なんで俺に...」


堅護はごもっともな質問をした、そもそも彼女らは何故自分にそんなことを頼んできたのだろう、世界には他にも人助けが得意な人や嬉々として行う善人もいるだろう。

だというのに、何故こんな鬱屈とした自分なんかに...と堅護は思った。


「あと、あんたらここは日本の神様の社だぞ!色々許可とか...取ってんのか!?祟られない!?」

「そんなもん取ってないわよ、会ったことないし」


「はぁぁぁー!?」

「貴方がそういうのも分かるわ。それに、もちろんあんたが適合率100%ってだけじゃなく、私たちは勇者になれる素質を持つ者を探し続けて、幼い頃の貴方を見つけたわ。貴方は小さかった頃から正義感に溢れていて、よく友達を助けて、守ってもいたわよね」


堅護は黙る、そして過去の記憶と亡くなった幼馴染みのトラウマがフラッシュバックしていく、突如メッセージで幼馴染みから送られた謝罪と今までのお礼、幼馴染みの親から電話で聞かされた死亡報告、病院で見せられた目も当てられない飛び降り死体。

あいつがあんなに追い込まれて命を捨てるくらいなら...怖がらずにいじめた奴らを殴り飛ばしてやればよかった、大丈夫だよ、気にしてないよと強がられても、もっと強引なくらいに行動を起こしていればよかった...


何も出来なかった、巨悪を敵にする恐怖に屈してしまった、そして神様に祈って、それから目を逸らそうとしているそんな弱い自分が、堅護は本当は殺してやりたいくらいにとても憎かった。


「そんな...ことない...俺...クズだし...」

「それは違うわよ、貴方は本当は立ち向かいたかったんでしょ?これは貴方がやり直すチャンスなの!」


「綺麗事言うなよ...今更そんな...やり直すとか都合のいいことがあるわけ...」

「堅護君、君の幼馴染みは、君のことは憎んでなんかないはずだよ。それは君自身がよく知っているんはずだ」


「俺が異世界に行ったところで...こんな...俺なんかじゃ...!」


堅護は感情が昂り始めているのを感じて、ポロポロと涙を流していく、それは栓が壊れた水道のように溢れ出てきて、全く言うことを聞かせられない。


「そんなこと言わないで堅護君、私たちはね?ずっと前から貴方のことを見ていたのよ。貴方は友人が亡くなった後もそれを風化させないで事件をネットで拡散していたし、迷子の子供を見つけたら優しく交番に連れて行って母親に合わせてくれてたでしょう?」

「そうだよ堅護君、僕たちはそんな君のことを見つけて、見て、きっと君ならばと思ってこうして来たんだ。だから、君のその力を僕たちに貸してはくれないかい?」


堅護は差し出されたマールのその右手を見つめる、そして。


「こんな自分でも...変われるなら...もう、こんな弱さを捨てられるなら...!」


彼は涙を拭って、マールのその手を握った。


「...っ!ありがとう!堅護君!」


そして2人は強く握手をした。


「...ん?あの、そういえば適合率100%ってな...」

「あぁ〜!?大変よっ!急がないと異世界に送りやすい時間が過ぎちゃうわっ!」


「えっちょ...」

「悪いけど!説明している時間はないの!そんなの転生した後で教えてあげるから!」


ハンナが堅護のその言葉を遮って扉の前へと押していく。


「え、えぇ...」

「それより!覚悟は決まった?ぶっちゃけ早く決めて欲しいんだけど!」


「その...家族に連絡とか、挨拶とか。あとそれに学校とかも...」

「後からでも出来るわよそんなの!サポートしてあげるってさっき言ったでしょ?」


「マジか。まぁ...仕方ないか」


そして、堅護はもう一度心の中で亡き幼馴染みの顔を思い出す。


「(なぁ...俺、勇者になるとか、今度こそ誰かを護れるとか、そんな綺麗事みたいなこと思っちゃっていいのかな)」


心の中のその幼馴染みは答えを言わない。


「結局、これは自分の為の旅でしかない。でも...全部終わったら、墓参りの土産話にしてもいいのかな、今は考えない方がいいか...よしっ!」


堅護は気合いを入れるように頬を叩き、両腕を回して肩をほぐす。


「このまま進めばいいんですよね!」


そして堅護が確認を取ると、ハンナから驚きの答えが帰ってきた。


「えぇ。でもまず、ここで服全部脱いで全裸になってくれるかしら」

「はいっ!はい...?」


なんだって...?


「え、は?ほぁ?」

「なによ、簡単なことでしょ」


「いやっ!そういう問題じゃなくてさぁ!」

「転生の手順に不純物とか取り除かないといけないの、あんたの身体意外扉の向こうには入れられないってこと。だから荷物とか全部置いていってよ」


「その...ごめんね、堅護君」

「安心して堅護君、私はちゃーんと目を逸らしておくから〜」


「んんんー!!もうー!!」


堅護は半ば不服ながらも、仕方なしと全裸になり、扉の横に荷物と服を全て置いた。


「ちょっとハンナさん?もっと指閉じてくれません?それに顔もしっかり覆って」

「やってるわよしっかり!もうさっさと扉に入っちゃってよ!」


「大丈夫だよ堅護君!小さいなんて思ってないから!君のは逞しいって僕が認めてあげるよ!」

「うっさいわ!!そんなの頼んでないっての!!」


恥ずかしい思いをしてしまった堅護は顔を赤くしながら扉の中へと足を進めていく、そして扉が閉められ「ミョンミョンミョン~」となんだか表現しづらい変な音が周りから聞こえることに気づき。


「なんだこれ...」


と思いながら堅護は気を引き締めて、扉の奥へと進もうとした。


「今度こそ...俺は誰かを護れるように、強くなる!」


その時だった、扉の向こうになんだか気配を感じ、そもそも空間の物理法則がどうなっているのか分からないながらも音を立てないようにゆっくりと扉に近づき耳を立てる。


「...」

「母さんっ...!そんなに扉に近づいたら危ないですって!それ鍵かかんないんですから!」


扉の向こうには、膝を着き扉に耳をつけて向こう側の堅護の様子を伺うハンナが居た。


「うっさいわよマール!静かにっ!あいつが行ったかどうか聞こえないないじゃない!」

「お母様〜そんなに心配しなくてもいいんじゃないかしら?彼はちゃんとやる気を出してくれているみたいだし」


「そういう問題じゃないのよこれは!」

「...」


堅護はなんとも微妙な表情をしながら、足音を立て、それを徐々に自然に小さくしていく、そして堅護が完全に行ったと勘違いしたハンナは扉から離れると、完全に調子に乗った様子で話し始めた。


「っ!はぁ〜よーやく行ったわあいつー!これで後はあいつを転生させたら適当にサポートして!それで魔王を倒したあいつに信仰をもう一度復興させたらあたしが神様としてまた崇められる生活が戻ってくるのねぇ〜♪」

「お母様ったら、そんな呑気な話じゃないんですよ?」


「分かってる分かってるっ♪あ、それとモンテ、転生が終わったらあいつの身体はよろしくね〜」

「はぁ〜い」


「ちょっと母さん!?まさか戻ってきた堅護君の身体の策ってモンテにもう1つ別の肉体を作らせる気だったんですか!?」

「なによー?モンテなら別にあいつの要望通りに作ることなら簡単だし別にいいじゃない」


「はぁ...こんなんで本当に大丈夫なのかなぁ...なんか転送も失敗する気がしてきた...」

「ちょっとぉ?なによそれー?あいつの魂の転送成功率はそこそことしても、このあたしよ?失敗なんてありえないっての!」


「でも母さんは魔王に信仰を崩され始めてから失敗の方が多いじゃないですか」

「それはっ...!そうだけど...」


「...」


もはや説明不要、汝の敵は今ここに現れり。


「そうだけど!そうなんだけど!これは絶対に成功させなきゃだから、あたしだっていつもよりなけなしのリソースも使って念入りに...!」


その時扉がバーンッ!と勢いよく蹴りで開かれた。


「こんのクソ女神がぁぁぁぁぁぁー!!」

「ギャァァァー!?」


扉から出てきた全裸の堅護がハンナに向かって飛びかかり、そのまま怒りのままに飛び乗り肩を掴み叫んだ。


「よくも騙しやがったなこのクソ女神!!今からお前をぶっ飛ばしてやろうかっ!?」

「イヤァァァー!!変態!変態!!離れて!離れてったら!」


「お前が脱げって言ったんだろうがこんのクソボケ女神がぁぁぁー!!」

「イヤァァァァァー!?」


その時マールが慌てて堅護をハンナから引き剥がし仲裁を試みるが、遅かった。


「あぁっ!?堅護君!!ダメだ!母さんは今扉のコントロールを担ってるからそんなことしたらっ...!」


その時、扉が何やら嫌な高音を発しながらガタガタ大きな音を立て始める。


「あぁ!?まずい!?」

「そんなっ!?みんな離れて!お兄ちゃんも!『吸い込まれる』!」


ハンナがパニックになったことで、ハンナが魔術で操作していた扉がコントロールを失い転送対象を強引に異世界に転送させようと周囲の人物をとにかく吸い込み始める。


「うわぁぁぁー!?なに!?なんだこれ!?俺たちを吸いこもうとしてるのか!?」

「イヤァァァー!?吸い込まれるー!!」


ハンナは吸い込まれんと、咄嗟に扉に捕まり堅護は逃がさんとハンナの両足首を掴み強く握る。


「あんたっ!!離っしなさいよ!」

「フハハハハハッ!嫌だねっ!お前も道連れにしてやる!ぜぇ〜ったいに離してやるものかっ!ボケェ!!」


「いぃぃーやぁぁー!?」

「フハハハハハッ!痛ってぇ!?ちょ、お前蹴るなっ!?痛っ!イダダダダッ!?」


「うわぁぁ!?母さーん!?」

「お母様ー!?」


そして笑いながら扉に吸い込まれていく堅護、そして泣き叫びながら道連れに吸い込まれていくハンナ、2人が扉の向こうにほぼ同時に吸い込まれていった直後に扉は閉まり、それは光の粒子となって散ってしまい、後に残されたものは静寂に包まれた社と呆気にとられるマールとモンテの2人だけであった。


◇ ◇ ◇


「...い、だ、大丈夫...?生きて...る?」


混濁とした意識と思い身体の感覚に襲われる目を覚ました堅護、扉に吸い込まれた直後の記憶が無い彼は身体を起こして周囲の景色を確認する。

目の前には茶髪に黒色の瞳、そして青色の丸眼鏡をかけたなんだか田舎娘味を感じる雰囲気の女子が居るのを認識する。


「キュ...!クルルル...っ!」


堅護は何か喋ろうとするが声が上手く出せない、というよりも「変な声」しか出せないことに気づく。


「クキュッ!?キュッ!クゥーンッ!!」

「えっと...とりあえず生きてるね...」


「クルルァッ!?」


堅護は突如その女子に抱っこされてしまった、驚いて慌てて振りほどこうとするもそれは叶わず堅護は見知らぬその少女にぎゅ〜っと抱きしめられる。


「やっ...たぁー!!私の『アニマ』ちゃん!やっと成功したー!」

「キャン!?キュウーン!グルルル...」


堅護はもはや諦めそのハグをただ受け入れることしか出来なかった、そして降ろされた堅護はある違和感に気づく、そうだ、自分と今抱きしめたその少女には「圧倒的な身長差がある」ことに。


「キュ...クワンッ...?」


そして堅護が周囲を見渡し、近くに何かの衝撃で壁から落ちたのだろう鏡の前に立ち、そこに映った自分であるはずのその姿は、胸の中央に「ガーネット」が埋まった全身モッフモフの可愛らしいケモノへと変貌してしまっていたのだった。


「クワァァァァァァー!?」




to be continued



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