第29話 あとは待つのみ


 そうしてエレベーターが開いた。そこには大理石の床に豪華なカーペット。まるで高級ホテルのような空間が広がっていた。

 そしてその奥には見知った顔が二人いた。


「白亜様、ハク様、本日はありがとうございます!……えーっと……?」


 俺達に気づいたハルさんとひまわりさんはこちら側へと歩いてくる。

 

 ダンジョン用の防具ではなく私服姿のお二人と会うのは初めてで新鮮だ。

 ハルさんはオーバーサイズ、白の単色の上着にジーパンとボーイッシュな恰好を、ひまわりさんは反対にオフショルダーのトップスにヒラヒラのスカートと女の子というよりかは女性っぽさのある格好をしている。

 二人とも人気配信者というのが納得なほどに美人なためその分服装が美しさを際立たせている。


「あ!いらっしゃい白亜さん、ハクさん、えっと、それと……」


 そういえば2人にはリザさんとリルが来ることを言っていなかったな……。困惑させてしまったようだ。

 ハルさんとひまわりさんは俺とハクを交互に見て挨拶した後、状況に一瞬理解が出来ず固まってしまった。


「はじめまして~リザって言います。よろしくね~」


「ワフッ!」


 そして、リザさんはそんな困惑する2人の手を勢いよくぎゅっと握って挨拶をする。

 そんなリザさんに続くようにリルも傍に近寄り、元気よく吠える。


「昨日ぶりじゃのハルよ、そしてこの犬はリルじゃ。よろしくな」


「え……?あ、初めましてハルですよろしくお願いします」


向井葵むかいあおいです。ひまわりとよんでくれると嬉しいです」


 そう言ってハルさんはお辞儀する。良かった、昨日よりは顔色が良い。あの後ちゃんと睡眠を取れたのだろう……。

 それにしてもハルさんやひまわりさんと比較するとやはりリザさんとハクの背って高いんだなぁ。ハルさんも女性にしては背が高い方だとは思うが、リザさんとは頭一個分ほどの差がある。


 俺はそんなどうでもいいことを思いながらも、家族にとって初めての都会の知り合いが出来たことに嬉しさを覚える。



♢♢♢



「では、この奥で代表が待ってるので行きましょう」


「はい」


 あれからそれぞれ挨拶を終えた俺たちは、ハルさんに案内されて俺たちはその一室に行く。するとそこには豪華なデザインのある一室の入り口が広がっていた。そのネームプレートに『代表室』と力強く書かれいている。

 ……俺たちは今からこんなところに入るのか……。場違いすぎて進むのを躊躇ってしまうほどに高級感が溢れている。……だが、こんなところで時間を使ってはいられない。


「よし、いくか」


 そう意を決してその扉をたたく。


コンコンコン――


「失礼します」


 そうして俺たちはその部屋に入った。

 一室とは思えないほど広い部屋。隅には観葉植物があり、壁には俺たちの家のテレビの倍くらいのサイズはあるテレビが掛かっている。窓際には広いデスクが置かれ、そしてその手前にある一人の女性がデスクに寄りかかって立っていた。


「うちのハルから話は聞いているわ。初めまして。わたしはここ桜花の城の代表の椿花蓮つばきかれんよ」


 そういってその女性――花蓮さんは丁寧にあいさつしてくれた。

 年は30代前半くらいだろうか?艶のある金髪を肩まで伸ばしている。細身の体に黒のスーツ。リザさんに負けないくらいの身長はあるだろう……だが、その表情からはリザさんとは対照的に勝気な姉御のような雰囲気を漂わせている。

 彼女達をを知らない状態で『この事務所の代表は誰ですか?』と質問したならば100人中100人が花蓮さんを指差すだろう。それほどまでには『上に立つ者』の貫禄が感じられる。ここまでスーツを着こなせる人はなかなかいないだろう。


「はじめまして、白鷺白亜と申します。そしてこちらが――」


「のうあるじよ……悪いが、ハルとひまわりと少しの間部屋から出ていてくれぬか?」


「……へ?」


 こちらも自己紹介、そして家族の紹介をしようと思ったのだが、途中でハクに遮られてしまった。どうしたのだろうか?……それにハクは、それだけじゃなくリルやリザさんも心なしか楽しそうな笑みを浮かべている。

 やはり都会の、それも偉い位にいる人との初の対面だから興奮しているのだろうか。


「そういうことだから白亜くんたちははお外で少しだけ待っててね~♪」


「え……え?」


 状況は良く理解できていないが、俺達3人はリザさんに流されるまま代表室から追い出されてしまった。


「え……あ……え??」


 突然の状況に何が何だかわからない様子でハルさんとひまわりさんはお互いを見合わせ、頭にはてなを浮かべている。……かと思ったら二人とも次は俺の方に視線を向けた。

 これはどういうことか説明しろということだろうか……?

 説明したいのは山々なのだが……おそらく今の俺の状況は2人と全く同じだろう。


「ごめんなさい、うちの家族みんな気まぐれなので俺にも何が何だかよくわからないんです」


「え、あ、なるほど……」

 

 瞬間、俺たちの間に少しだけ気まずい空気が流れる。はぁ、花蓮さんになにか失礼なことをしないと良いが……。


「…………」


 それに……気のせいだろうか。追い出される瞬間に見えたハク達雰囲気は先ほどのような初めての都会に気分が上がっているような楽しさじゃないような気がした……それこそ、獲物を狩るような、そんな捕食者のような雰囲気……



♢♢♢



「結局何を話してたんだ?」


「ふっふっふ、あるじには内緒じゃ!」


「え~教えてくれよ~」


「だーめーじゃー!」


 現在時間にして11時丁度。場所は渋谷のビル最上階にある高級レストラン。花蓮さん行きつけの場所なそうで、特別に貸し切りにしてもらっている。どうやらここのオーナーと花蓮さんは昔からの仲らしく、急な貸し切り依頼も快く受け入れてくれた。……金持ちはすごいな――

 

 入った時はそれこそ場違い感が消えなくて緊張していたのだが、豪華なレストランにはしゃぐハク達を見て気づいたら俺の緊張は消えていた。今は皆で都会の料理を堪能している。


 先ほど花蓮さんと話していた内容について聞こうとしているのだが、誰も教えてくれない。……それどころか『あるじもこの肉たべたらどうじゃ?』『みてみてあそこ~飛行機が飛んでる~!』といった感じで話を逸らされてしまう。

 そんなことを繰り返し早30分。……もう俺はそのことについて聞くのを諦めた。

 

 それにせっかくの家族での外食だ。皆たくさんご飯を食べて楽しく会話しているところに変に水を差さない方が良いだろう。そうして俺はそのことを一旦忘れて家族との時を楽しむことにする。



 あの後、代表室に入っていいよと言われた後……そこからは俺を置き去りにして話がトントン拍子に進んでいき、気づいたら俺たちはこのレストランに招待されており、ハルさん達の配信の準備の待ち時間を過ごすことになった。

 

 そして、そこで出た話によると俺がやることをまとめるとこうだ。


 今回入るダンジョンは渋谷ダンジョン。ハクいわく難易度はD級らしく、俺でも余裕でクリアできるレベルらしい。……そんなとこを初心者の俺が探索して配信はうまくいくのかは疑問だが……まぁ、俺にはわからないようなダンジョン配信の良さがあるのだろう。そういった疑問に関しては考えないようにした。


 そして、ハルさんの準備が出来次第、俺はハクと一緒にダンジョンに入って配信をスタートする。ハクは俺が危なくなった時手助けしてくれる用にと念のためついてくることにしたらしい。リザさんとリルはほかにやることがあるらしく、俺達とは別行動を取る。


 配信開始場所は10階。ゴールは中ボス部屋の20階までで、そこまでの間なるべく俺一人で戦うらしい。……いくらD級ダンジョンとはいえ俺なんかがまともに戦えるかは不安だが……まぁそれはハクを信じることにしよう。

 それになぜかハクには釘を差されている。いわく本気はなるべく最後までに取っておいてほしいということらしい。これも所謂ダンジョン配信の醍醐味というやつなのだろうか?


 そうしてボスを倒した後、ダンジョンを出て終了。……と、こういう流れだ。


 うまくいくと良いのだが……そんなことを考えながら俺は皆の方を見る。


「あー!リル!それワシが食おうと思ってたやつ!」


「えへへー、ハクちゃんが遅いのがわるいんだよー」


「むー!酷いぞ!」


「まぁまぁ、ほら!私の分を上げるからさ、それで我慢して、ね?」


「りざぁぁ!」


 ふふっ、どんな場所でもみんなはいつも通りだな。皆を見てると不思議と不安が消し飛ぶ。あぁ、本当に……この子たちと出会えて良かった。

 


 そうして、後は配信開始の時間を待つだけとなった……。



—————————————————————

あとがき


コメント返信+ちょっとした報告


Q『主人公ってハクとリル喋れるの知ってた感じなのかな?どういう使い分け?』


A『感覚的にはハクとリルはバイリンガルみたいな感じ。別に軽い会話なら母国語(?)の「バウッ」「ニャ」で話すけど、ちゃんとした会話するときは人語を話す感じ』


もうそろ一か月じゃん!ここまで見てくれてありがとう!

次の回からは毎日更新じゃなくて不定期で更新していきます。……とはいいつつもなるべく毎日更新、空いても2日に1回は更新しようと思ってます……なるべくは――


良ければ❤️と⭐️をお願いします。モチベーションにつながります!

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