第27話 【向井葵サイド】理性と決壊


「もう少しでできるからね……」


「う、うん」


 皆と別れた後、私はまだ心細かったのでハルちゃんの家にお邪魔させてもらっていた。

 ハルちゃんは今キッチンでご飯を作ってくれている。やはり仲間と一緒の空間にいると落ち着く……けど、帰ってから今の今まで私たちの間には会話の一つもなかった。そのせいかトントンという包丁音や水が流れる音が鮮明に聞こえる。

 別に気まずいというわけではない。ただ、話すきっかけがないだけ……


「おまたせ……ごはん出来たよ」


「……うん、ありがとう!」


 ただ、いざ会話するとなるとやっぱり少しだけ気まずい……どうしてなのだろう。明かりは付いているのになぜか部屋が暗く感じてしまう。



♢♢♢



「ひまわりちゃん……ごめんなさい、巻き込んでしまって……痛い思いをさせてしまって本当にごめんなさい……」


「……ううん、大丈夫だよ。それに、ハルちゃんが無事でよかった」


 ご飯を食べ終わって一緒に皿洗いしている時、突然ハルちゃんに謝られる。その表情はとても暗く、今にも押しつぶされてしまいそうな……きっとハルちゃんは私が思っているよりもずっと今回の件で責任を感じている。

 ご飯を食べている間も私に「体の痛みはないか」「精神状態は大丈夫か」など、たくさん心配してくれた。


 だからこそ、私は心配をさせないようにハルちゃんに向かってとびきりの笑顔でそう返す。……『今私は元気なんだよ!』って伝えるために――

 根本、今回の件について本当にハルちゃんを恨んではいない……事務所の皆もきっとそうだ。


 それに、私はむしろハルちゃんには感謝している。……だって、ハク様との出会いのきっかけを作ってくれたから――



♢♢♢



「おやすみハルちゃん」


「うん、おやすみ」


 あれからお風呂に入った後、もう深夜の2時かなり遅い時間なのでおしゃべりしたりせずにベッドに潜った。

 人が2人入っても空間が空くベッドで私たちは密着して横になる。……温かい。背中からハルちゃんの体温が伝わってくる。……前にお泊りしたときは向かい合って寝たが、今日はお互い背中を向けてベッドに横になった。……そうしようと思ったわけじゃないし、そう言ったわけでもない。ただなんとなく、そういう気分だったから――


「……ハルちゃん、起きてる?」


「…………」


 もう寝た……か。

 ハルちゃんは表には出さないが今日だけで想像も出来ないほど疲れただろう。それは身体的にも……精神的にも。だから今日だけはハルちゃんを一人にしちゃダメだと思った。今日だけは一緒に……


 ……今日はいろんなことが起こった。人生の出来事の全てをあの一瞬に凝縮したんじゃないかってくらいには濃い1日だった。


「……ハク様――」


 自分の頭の中が真っ黒になっていくのが分かる。……けど、止められない。


 あの時、私の目が覚めた瞬間、目の前には天使が映っていた。艶やかな銀色の髪。雪の様に白く長いまつ毛。私はその瞬間自分が生まれてきた意味を理解した。……あぁ、このお方の為に私は生まれたんだ……と。

 自分の身体のことは自分が一番理解してる。だからあの時……ハルちゃんの疑惑を晴らすために配信した後、葛林の護衛に襲われた時にうっすらとわかっていた。……あの時に私は


 私はハク様という天使によって2度目の命を授けられたのだ。……こんなに情けない私を、友達一人守れない私を救って下さったのだ。……それはまるで『次は守れ』と言われているようで――


 だから私は強くなる。ハルちゃんや事務所の皆、そして……ハク様を守れるくらいに強くなる。だから私は今後ハク様に降り注ぐありとあらゆる障害を許さない。もしハク様に危害を加えるような輩が現れれば……もし、ハク様を侮辱するような存在が現れれば……


 だからこそハク様のあるじである白鷺白亜しらさぎはくあ様を一目見た瞬間、私は彼を敵対視した。こんなに弱そうな男がハク様の上に立って良い存在なの?あるじというからにはハク様を守らないといけない。……だから、ハク様にふさわしくない……。

 正直嫉妬もあった。今冷静に考えれているから大丈夫だが……。あの瞬間、ハク様と肩が触れるほど近かった白鷺様に私は今までに感じたことのない黒い感情を抱いていた。

 あるじということは、あのかっこいいハク様が唯一自分をさらけ出して甘える存在であり、ハク様の全てを知っている存在。そんな存在が許せなかった。


 憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い――


 私の脳はいっぱいので埋め尽くされた。その時、絶対に考えてはいけないことが私の脳裏を過った……


――


 だが、皮肉にもそんな私を止めたのは白鷺白亜様だった。……彼が考え事をするかの様に下を向いた瞬間、ソレは起こった。

 瞬間、信じられないほどの魔力の圧が私たちにかかった。それはS級探索者と模擬試合した時も感じたことのない……とても濃く、そして重い魔力。

 それを感じた刹那、全身から汗が噴き出した。息が出来なかった。時間にして10秒ほどだっただろうか?……でも、彼の実力を理解するには十分すぎるほどだった。あぁ、この方こそがハク様のお傍にいるのに相応しい方なのだ……と。


 あの時、ハク様が白鷺白亜様を静止してくれていなかったら私は、いや、私とハルちゃんは今頃この世にいなかった。……そして、その時……白鷺白亜様が魔力の放出を止めたとき彼は言ったのだ。


 『少し考え事をしてた』……と。

 

 その考え事が何だったのかはわからない。……ただ、その発言が何よりも恐ろしかった。……それは警告だ。私のようなバカに対する警告だったのだ。きっとあの魔力の圧は無意識に流れ出たモノ。彼の中で感情の起伏があったのだろう……その起伏の歪みから溢れ出てしまったほんの一欠片の魔力。

 彼を見た瞬間に私はこう思った。『魔力が全く無い弱者』と。だが、違った。魔力が無いのではない。ありすぎて認知出来なかったのだ。計算機が上限の数値を超えるとエラーを起こすように……私の中のメモリでは彼の魔力を推し量ることなんてできなかった。

 オーバーフローも良いところだ……私は魔力感知が昔から下手だったから気づけなかった。……ハルちゃんには見えていたのだろうか?

 

 そしてそれは『私みたいな塵のような存在なんて無意識のうちに殺してしまえるのだ』と言われているようにさえ思った。……彼が本気を出したらどうなるのだろうか。彼はどんな世界で生きてきたのだろうか……。少なくともその時に格の違いは理解した。


 

 ……頭では理解しているのだ。そう……私はハク様の気まぐれによって救われたただのモブだ。きっとハク様の隣には一生かかっても立てない……そう、理解している。


 だから


 だから、



――あぁ、溶ける……。自分の中の闇に溶けてゆく……――


 ハク様。私のハク様。私だけのハク様。凛々しくもかっこいい姿も、時折見せる甘えん坊でかわいいハク様も、全部……全部全部私のモノ。私とハク様の世界を邪魔するものは絶対に許さない。私だけのハク様。愛していますハク様……愛しています――


 私の意識はそこで途切れた――



—————————————————————

あとがき


いつもコメントありがとうございます🙇


『人化しないほうが好き。猫は猫のままの方が可愛い』っていう感想して下さる方過去にも何人かいたので僕の意見も書いときますね


A,『可愛い猫が人化して戦闘したらかっこよくね?猫が戦うより人型が戦った方がかっこよくね?→お得じゃね!?それにかっこよさ×強さは物語において善悪関係なく正義なのです。だから藍染は最高なんだ(伝われ)【結論】:可愛いだけじゃダメですか?→ダメです』("あくまで"個人の意見です)


だから僕ラブコメ作品あんまりハマらないんだよなぁ……可愛いよりかっこいいの方が好き。

あ、あと一番好きな女性キャラは卯〇花さんです。強くてかっこいいので……同士おる?????おって!!!


良ければ❤️と⭐️をお願いします!モチベにつながります…! 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る