第21話 じゅーす


 ヒッ!?あ……あ……


 怖い……怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い——


 悪魔だ……俺は、俺は悪魔に目をつけられたんだ……逃げないと、逃げないとッ!


 そうして俺は走り出した。先の見えない真っ暗闇の中を、途方もない一面の黒の中をとにかく走った。


 はぁ……はぁ……。どれだけ走ってもまだ血の匂いが消えない。全力であの場所から離れようと逃げているのに全く距離が広がっている気がしない。

 

 走って、走って走って走って走って——気づくとそこには一ヶ所だけ不自然に白い何かがあった。


「あぁ、良い表情するのぉ……」

「ヒッ……!?」


 不思議に思って近づこうとした刹那、どこからかあの恐ろしい声が聞こえた気がした。だが、周りを見てもあの女——いや、あの人の皮を被った悪魔の姿はない。

 反対に、そこには白い猫がちょこんと座っていた。


 ビックリした。なんだ猫か——



 あ……れ……?なんで猫が……こんなところに……?それに今、喋った……?やばい、思考がうまく働かない。幻覚を見ているのか……?


 今、突如目の前に真っ白な猫が現れた。大きさは普通の、いや、少し大きいか?そんな白猫が突然にこの真っ暗な空間に現れた。

 その白猫は何処か神秘的で、その青白い目に気づいたら吸い寄せられてしまいそうな……


 俺はその白猫に向かって手を伸ばす。どうしてそうしたのかはわからない……ただ、俺の身体が、本能がそうしろと言ったような……そんな気がしたから……


 あと少し、あと少しで————


「残念、ハズレじゃ」


ボトッ————


 刹那、俺の目の前にまたバラバラになった騎士達の死体が現れた。


 ヒッ!?あ……あ……たす、け……


 なんで、なんで俺がこんな目にッ!やばい、やばいやばいやばい……逃げないと……。どこに?この先が見えない、何処に進んでいるかもわからない暗闇の中どこに逃げればいいんだ?違う。そんなことを考えている場合じゃない……逃げないと、とにかく逃げないとッ!


 必死に足を動かす。何かに追いかけられている気がする。何かが俺の足を、腕を、首を掴んで闇に引き摺り込んでくる気がする。

 走れ、走れ走れ走れ走れッ————


 そして


 そして、


「ハッ!?はぁ……はぁ……はぁ……」


 そうして俺は目を覚ました。


「はぁ、はぁ……あ、れ……?」


 電気が付いていないからまだぼんやりとしか見えないが、目の前にはよく見慣れた光景が広がっていた。


「なんで、俺——部屋……夢……?」


 気がつくと俺は自分の部屋の、ベッドの上にいた。 

 時計の針は11時を指している。その静けさから針のカチカチと動く音すらもはっきりと聞こえてくる。

 カーテンの隙間から微かに夜の街の明かりが見える。だんだん目が慣れてきた。恐怖と絶望で埋め尽くされた脳も徐々に落ち着きを取り戻していく。


 そう、思考がクリアになり、冷静さを取り戻してきた。だから、だからわかってしまう。


 あれは……あれは夢なんかじゃない——


 警告だったんだ。そうだ、わかっていた……俺はやりすぎた。親の力や金を利用して違法取引を繰り返し、そして最終的に桜花の城という一つの事務所を潰そうとした。

 理性はあった……。あった上で力に溺れ、自分の理想のために理性を内側から壊した。


 だから、悪魔にとっての越えちゃいけないラインを軽々と越えてしまったんだ。


 どこかで聞いたことがある。1年前に権力を振り回し、殺人、強姦、違法取引など数えきれないほどの罪を犯していた政治家がいた。

 だが、ある時その政治家は急に人が変わった様に、魂が抜けた様になった。部屋から出なくなり、ずっと『悪魔が……悪魔が……』と言っていたそうだ。

 そして、そのさらに数日後政治家は自宅でバラバラに切り刻まれて発見された……と。

 

 『犯罪者』『バラバラの死体』『悪魔』……

 全てのピースが型にハマる。俺のたった今の状況に全てが当てはまる……。


 このままだと俺も……


——バラバラの死体


 に、逃げないと……親父に頼んでS級以上の護衛を雇ってもらって……海外に行って……。まだ世間に俺の罪はバレてない……。その政治家は世間に罪が暴かれた後に突然死んだ。もし今の俺がその政治家のように悪魔のターゲットなのだとしたら、俺にはまだ時間がある……。だからバレないうちに、今のうちに遠くへ逃げないと……ッ!

 

 それで、それで——


 そして俺は深夜にも関わらず大急ぎで親父の元へ向かうのだった。

 


♢♢♢



「クククッ、あーはっはっはっは!揃いも揃ってマヌケな顔じゃったのぉ!」


 影魔法を応用してヤツを家に強制送還させた後なにか忘れていると思って、先ほどの一連を思い返していたのじゃが、その記憶に出てくる騎士達や葛林とやらのマヌケ顔がフラッシュバックしてしまい、ツボにハマってしまった。


 あははははっ!腹が痛いわ……プクククッ

 

 子供のように腹を抱えて転げ回ってしまった。もし誰かワシを見てる人がおったらワシの『いい女』のイメージが崩れてしまうとこじゃった。

 あ〜危ない危ない、ハルとそこの少女が気絶しててよかっ————


「ああー!忘れておった……そうじゃ、はやくコレを飲ませねばいけないのじゃった……」


 ワシはなんとか元の目的を思い出すことが出来た。そしてまずは重症の小さい少女——ひまわりちゃんとやらの方へと近寄り、家から持ってきたそのを飲ませる。


「んっ……むぐ……あれ、私」

「おぉ、良かった起きたか!」

「あれ、あなた……は?——ハッ!私、私……ハルちゃんが危ないッ!」

「えいっ!」

「いッ!?」


 目を覚ましたと思ったら急に暴れ始めたから軽く頭をチョップして落ち着かせる。


「落ち着いたか?」


 よし、これでひまわりちゃん?が落ち着きを取り戻したら状況を——ってあれ?これまた気絶しておらんか!?

 身体を揺さぶっても起きん……ちぃ、加減したと思ったのじゃが、ミスったのぉ。……はぁ。仕方ない、ケガを治す様とは別の、おやつにととっておいたワシの分のじゅーすも飲ませるとするかの……。

 

「ぷはぁっ!……あれ、あの——」

「起きたか?話は後じゃ……とりあえずハルを起こすぞ」

「えっ?あ、はい……え?何が起きて……?」


 困惑するひまわりちゃんをよそにワシはハルにもじゅーすを飲ませに行くのだった。

 

 


—————————————————————

あとがき


じゅーす(すごいポーション)


スマホゲーム何やってますか?

僕は原神とドッカンバトルやってます



良ければ❤️と⭐️をお願いします!モチベにつながります…!


 

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