第7話

 ―時は流れて、6月上旬。ついに迎えた文化祭当日。この学校の文化祭は金曜日から日曜日の3日間にわたって行われる。(ちなみに次の週の月曜日と火曜日が振替休日でお休みになる)


 文化祭準備期間中もさまざまなハプニングが巻き起こる……なんてこともなく順調に進んでいった。まぁ、強いて言うなら、なぜか試食会をするってなった時だけ凪姉と涼姉と生徒会長さんと副会長さんと夏妃先輩が必ず来てたことぐらいで、何かしらのセンサーが反応してたんだろうな……と思うことにした。


「おはよ、しお!」


「おはよう、悠海ちゃん。昨日はしっかり寝れた?」


「もちろん!あ、帆華もあとから来るって!」


「帆華ちゃんは一般公開始まってから来るの?」


「そうそう!」


 今日は金曜日なんだけど、中等部はお休み。ちなみに中等部の文化祭は10月頃なんだけど、その時は私達が平日1日休みになる。学生としてはありがたいけど、少し緩すぎるのでは?とも思ってしまう。でも、これで有名大学とかに受かってるんだから、何も言えないんだけど……。


「……それにしても美佳ちゃん、遅いね」


「ふぁ〜。おはよ〜、しお姉、悠海〜」


 とても眠たそうにしてる美佳ちゃんがやっと家から出てきた。これはたぶん楽しみで寝られなかったんだろうなぁ……?


「あれぇ……?凪桜姉ちゃんと涼楓姉ちゃんは?」


「2人なら生徒会の仕事で先に行ったよ。めちゃめちゃ一緒に行きたそうにはしてたけど……」


「そっか!うぅ〜ん!よし、目が覚めた!それじゃ、行こっか!」


 大きく伸びをしてそう言った美佳ちゃんのあとに続いて学校へと向かうことに。



*



 ―学校へと着いて教室に向かうと、準備を手伝っていた冬音ちゃんがこっちへとやってきた。


「みんな、おはよ……」


「おはよう、冬音ちゃん。あれ?生徒会はいいの?」


「うん……。クラスの子に……呼ばれた時に……凪先輩と涼先輩居るから……行っていいよ……って会長が……」


「そっかー。冬音、その衣装似合ってるね!」


「ん……。近くを通りかかった……夏先輩にも……そう言われた」


 そう言って嬉しそうに静かに笑う冬音ちゃん。そんな冬音ちゃんが着てるのはメイド服だ。そう、この隣に居る2人のありがた〜い提案により、メイド服が採用された。


 ……別に怒ってはないよ?本当だよ?


 そんなことはさておき。冬音ちゃんが着てるのは某有名な不思議の国の童話の少女っぽい感じ。とても似合ってて可愛い。


「詩音梨達も……早く着替えて……。私だけ見られるの……ちょっと、恥ずかしい……」


 照れながらそう言う冬音ちゃんから私達の分の衣装を貰ったので、更衣室で着替えることにした。



*



 ―着替えてから、生地作りをしているみんなを手伝うために家庭科室へと行くと、なぜか凪姉と彩姉が待っていた。ちなみに私がクラシカルメイドと呼ばれるタイプのメイド服で、悠海ちゃんが和風で大正浪漫風なメイド服で、美佳ちゃんはなぜか執事服だった。可愛い服だと落ち着かなかったみたいで、衣装班の子が急遽作り直したみたいで大変そうだな……なんて思ったけど、そこは想定してたみたいで最初から作ってたらしい。ちなみに可愛いフリフリのメイド服を着て恥ずかしそうにしてる美佳ちゃんをみたのは衣装班の子と冬音ちゃんと悠海ちゃんと私。(悠海ちゃんと私は冬音ちゃんが撮った写真で見た)


「詩音梨ちゃん可愛い〜!」


「似合ってるわよ、詩音梨」


「ありがとう。それよりも用事は終わったの?」


 その言葉に頷く2人。どうやら生徒会の仕事を終えたあとにクラスの方へと様子を伺ってみたけど、やることを終えてたらしく、始まるまで暇だし私の様子を見てきても良いよと言われたから来たらしい。ちなみに凪姉と涼姉のクラスはサンドイッチやホットサンドのお店をするみたい。


 なんかホットサンド食べたい気分だし、今日のお昼は食べに行くのも良いかもしれないなぁ……。ちょうど凪姉と涼姉の休憩の時間とは被らないだろうし、帆華ちゃんも誘っていけば喜ぶだろう。


「そろそろ開会式が始まるみたい。それが終わったら速攻で戻ってこないとねぇ……」


「美佳はちょっと見る余裕あるの羨ましい……」


「しお姉と悠海は見る余裕が無いの可哀想ー。私は冬音ちゃんと少し楽しんでから帰るよ」


 ニコニコ笑顔の美佳ちゃん。冬音ちゃんはそれに対して少し申し訳なさそうにしていた。


「私は……すぐに戻るよ……?生徒会の仕事も……あるし……。それが終わったら……合流するって……感じ」


「えぇ〜!そんなぁ……」


 結局、クラスメイトで残る子と一緒に見てから戻ることにしたみたいで、そんな話をしてたら開会式が始まった。



*



 ―開会式を終えて家庭科室へと向かう私と悠海ちゃん。あらかじめ作っておいた生地を家庭科室の冷蔵庫から取り出してから教室へと戻る。足りなくなればクーラーボックスに入れてる材料から作ればいいだけなので、そんなに多くは作ってない。


「よーし!今日は頑張ろう!」


「うん!詩音梨ちゃんの教えてくれたクレープならきっと大丈夫だよ!」


「しおりんの教え方上手だったよねぇ〜」


 日向ちゃんと明衣ちゃんの言葉に頷く調理班のみんな。しおりんって明衣ちゃんが呼んだ時、それもアリだなぁ……って顔を悠海ちゃんがしてたような気がした。……たぶん気のせいだろう。気のせいだよね……?


「焼くのはあたしと明衣と瑞希ちゃんに任せて!」


 そういうのは汐ちゃん。それに頷く明衣ちゃんと美月ちゃん。最初のシフトは全員が居るので役割分担出来るのが良いところ。


「それじゃあ、生地を作るのは私と旭と日向に任せてくれない?」


 美宵ちゃんの提案に頷く私。みんなが居る時は巻くのは私と悠海ちゃんの仕事になりそう。


 役割分担を決めてから、しばらく集中して作っていると……


「みんな……。大変……!!」


 珍しく慌ててる冬音ちゃんに驚く私達。怖いけど廊下を覗くとなぜか行列が出来ていた。


「うわぁ……」


「これ、作るの間に合うと思う……?」


 美月ちゃんの言葉に首を傾ける私達。というかなんでこんなに行列出来てるんだ……?私達の学校の生徒とその親がちらほら居るだけにしては多すぎる気がするんだけどなぁ……。


「ヤバっ!開店まで時間無い!!」


 明衣ちゃんの言葉で時計を見るともう1分もなかったので、急いで作ることに。


 波乱の1日目の幕が開きそうな予感がする。



*



 ―時は少し流れてお昼時。なんとかあの行列を捌くことが出来た。接客係の子達もてんやわんやしてた。結局、朝方の文化祭を楽しむ予定だった衣装係の子たちも含めたクラスメイト全員が接客などを手伝うことになるぐらいには大盛況だった。


 途中で凪姉と涼姉と夏妃先輩と帆華ちゃんがお店に来てたけど、忙しくてあまり話せなかった。


「もうお腹ペコペコだよー」


「うん……。大変だった……」


「ねー?あ、しお姉、凪桜姉ちゃんと涼楓姉ちゃん、心配してたよ?」


「うっ……。それは少し申し訳ないことしたなぁ……」


 今、私達4人は休憩時間を貰ったので、まずは凪姉達の教室でお昼ご飯。私達の教室から2-Aの教室は意外と近いので喋りながら歩いてるとすぐに着いた。


「いらっしゃいませ〜。詩音梨ちゃ〜ん!大変だったねぇ〜!よしよし」


「ちょっ!凪姉!恥ずかしいから辞めて……」


「姉さん。早く詩音梨達を席に案内しないと」


「そんなに怒んないでよ涼楓ちゃん〜。ほら、涼楓ちゃんも詩音梨ちゃんの頭撫でたいんでしょ?」


 凪姉に言われるがまま私の頭を撫でる涼姉。なぜかは知らないけど、とても生暖かい幸せそうな目線を向けられてるような気がする。


「はっ!しまった!こほん。詩音梨、ここに座って」


 数分経って、2人の撫でられから解放された私は席へと案内された。それと同じタイミングで


「あ、お姉ちゃん、しおお姉ちゃん!」


 帆華ちゃんとも合流出来た。さっき連絡を取ると割と近くに居たのでここで集合になった。


「いらっしゃい、帆華ちゃん。みんな、これがメニュー表ねぇ〜。ちなみに私のおすすめはミックスサンド〜」


「私のおすすめはBLT風ホットサンド。まぁ、詩音梨の手料理ほどじゃないけど、美味しかったわ」


 と言う涼姉の言葉になぜかドヤ顔で頷く凪姉。恥ずかしいから辞めて欲しいんだけど……。


 凪姉と涼姉のクラスメイトの皆さん、妹バカの姉たちですみません。と心の中で謝ってからその2つを頼んだ。(ついでにフライドポテトと各自飲み物も頼んだ)


「お待たせ〜」


「みんなが詩音梨達にってサービスしてくれたわ」


 少し経って料理を持ってきた凪姉と涼姉は席に座り始めた。あれ、接客は?なんて思って近くにいた凪姉達のクラスメイトの人達をチラッと見ると、なぜか親指を立てて良い笑顔。なるほど……どうやらみんなに言われて休ませてもらったのか……。


「冬ちゃん!それに詩音梨達もお疲れ様!クレープ美味しかったよ!」


「夏先輩……。えへへ……」


「夏妃先輩も休憩ですか?」


「いや、本当は休憩時間じゃないんだけど、クラスメイトが気を利かせてくれてね」


 なんて笑顔で言う夏妃先輩。まぁ、冬音ちゃんとの時間も込みで休憩をくれたんだろう。そういうのは言われなくても分かる。それはそれとして……


「いただきます」


 まずはBLT風ホットサンドを一口。ちょうど良くカリッと焼けてるベーコン。熱々のトマトとレタス。それにトロッとしてるチーズが全体的な美味しさを引き立てていた。


「しお、このトマトとレタスのサンドイッチめっちゃ美味しいよ!」


「たまごサンドも……美味しい……」


「ハムとキュウリのサンドイッチも美味しい!」


「このかつサンドも美味しいですね……!」


 BLT風ホットサンドを食べ終えて、みんなの食べてたサンドイッチも食べる。どれも本当に美味しくてびっくり。フライドポテトも揚げたて熱々で美味しい。


「ふー。お腹いっぱい」


「次どこに行こっか……?」


「せっかくだし、体育館にでも行く?」


「今だとバンド作った生徒が演奏してるみたいですね!」


 ご飯を食べ終えた私達はお会計をしてから、体育館へと向かうことに。凪姉や涼姉、あとは夏妃先輩はお店に残るみたいだったので、私達5人で向かうことに。



*



 ―それから時は流れて、午後3時頃。私達4人はまた教室へと戻ってきていた。恐らくこの時間からまた忙しくなるだろうと考えて。


 まぁ、結論から言うなら朝と比べるとそこまで多くはなかった。それでも結構忙しくはあったんだけどね。


 それにしても体育館で聞いたバンドの曲、めちゃめちゃ良かったなぁ……。楽しそうに演奏してて、本当に感動したなぁ……。今もずっと頭の中でリピートされてる。特に好きだった曲はバンドメンバーを星に例えて作詞してる曲だった。これを作詞した人はとても綺麗な感性なんだなぁ……と思ってる。ちなみにこれはあとで調べて分かったんだけど、とある4人組のガールズバンドの曲だったんだって。


「それにしても、思ってたよりも結構売れてるなぁ……」


「しおは知らないと思うけど、しおの料理食べたいって子は結構居るんだよ?」


 そんなになの……?ちょっと大げさなのでは……?なんて思って、周りを見渡すとみんな頷いていた。


「来年もクラスが一緒なら、今度は色んな料理が出る喫茶店やりたいよね」


「うんうん!しおりん居るなら百人力だよ!」


「それなら……。来年は……そうしよう。今年は……私が……決めちゃったから」


 クラスが一緒になる確率の高い冬音ちゃんがそう提案すると喜ぶみんな。来年はお客さんとしてでも来たい!なんて言うクラスメイトも。


「あはは……。お手柔らかに……」


 なんて話をしながらクレープを作る私達。結局作ったクレープはなんだかんだ全部売り切れて1日目は終了となった。



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【キャラ紹介9】



三重野汐:身長158cmぐらい。体重は本人いわく普通。胸は小さい方らしい。グレーのハーフアップ。ツリ目。誕生日は2月2日のみずがめ座。一人称は「あたし」


 調理班の一人で、良く明衣と一緒にいるが本人達は仲の良い親友だと思っている。付き合う予定は今の所ないけど、何かきっかけがあれば付き合う可能性が高い。明るく元気な陽キャ。



六川明衣:身長152cmぐらい。体重は本人いわくぽっちゃり気味らしいがとてもそうは見えない。茶髪のボブカットで片目隠れ。ジト目。誕生日は5月6日のおうし座。一人称は「わたし」


 調理班の一人で、中等部の頃からよく汐の後ろに隠れている。手先がとても器用で詩音梨に褒められていた。こちらも汐と同様に、何かきっかけがあれば付き合うことになるかもしれないが、今は仲の良い親友で良いと思ってる。人見知りな性格だが、慣れると急に距離が近くなる。詩音梨のことを「しおりん」と呼んだ子



 あとの2人はまた次のお話のキャラ紹介でやります。

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