第6話

 ―それから少し時は流れて5月末頃。迫る文化祭に向けての出し物についての話し合いが行われていた。


「クラスの出し物について何かあるー?」


 文化祭実行委員の子がそう聞いて様々な意見が飛び交う。メイド喫茶にたこ焼きなど文化祭って感じの出し物が黒板に書かれていた。


「どれもしお姉なら作れそうだね!」


「あ〜確かに。しおのメイド服とか見てみたいよね〜」


「それはちょっと恥ずかしいかなぁ……」


 なんて私達3人で話していたら、隣の席の子がすっと手を上げて


「クレープ……が良い。詩音梨の作ったクレープ……」


「冬音ちゃん!?」


「詩音梨ちゃんの作ったクレープ……。良いねぇ!冬音ちゃんの意見で良い人!?」


 なんて言うと私を除くみんなが手を挙げていた。嘘でしょ?


「じゃあ、決定で!もちろんわたし達もクレープ作るのは手伝うけどメインは詩音梨ちゃんに頑張ってもらうから!それじゃあ班分けだけど……」


 そのまま班分けへと話が進んでいった。まぁ、料理はそこそこ出来るから良いんだけど、大丈夫かなぁ……?と少しだけ不安になっていると


「大丈夫……。詩音梨のなら……何でもおいしい……。あと試食なら……手伝う……!」


「ふふっ、ありがと!冬音ちゃん」


 隣の冬音ちゃんが親指を立ててドヤ顔でそう言ってくれた。なんか少しだけ元気が出た。


 あ、唐突だけど冬音ちゃんについて紹介すると、私と同じ中等部からそのままエスカレーターで上がってきた子で、クラスが今までずっと一緒。班での行動すらも一緒なので何かと縁がある。


 クールキャラっぽく見える冬音ちゃんだけど、実際はとても可愛い妹みたいなキャラ。それにこう見えてかなりの食いしん坊。(それでいて痩せてるんだから羨ましい)


 仲良くなったきっかけも初めての家庭科の調理実習の授業の時だった。それまでは普通のクラスメートぐらいの距離感だったのが、私の作った料理を幸せそうに食べる姿を目撃したみんながそのギャップにやられて、なぜかみんなとの距離が縮まった。


 でもその中で特に距離が縮まったのが私と悠海ちゃんだった。時々3人で遊びに行ったりもしたし、お泊りに来たことだってある。


「じゃあ、詩音梨ちゃんと悠海ちゃんは調理班のリーダーね!サブリーダーが美佳ちゃんと冬音ちゃん!しっかり試食頼んだよ!」


 そう文化祭実行委員の子に言われてなぜか胸を張る美佳ちゃんと冬音ちゃん。調理をしない調理班のサブリーダーとは……?


 ほら、悠海ちゃんも苦笑いしてるし。


「それじゃあ、みんな!文化祭頑張ろー!」


 盛り上がる教室。まぁ、こういうのも悪くないよね。それにしても本当に私のクレープで良いのかなぁ……?



*



 ―それから数日後の放課後。担任に許可を得てから、教室でIHクッキングヒーターを用いて実際に作ることになった。


「それじゃあ、よろしくね。調理班のみんな!」


 調理班は私と悠海ちゃんを除くと、料理の出来る人は6人だった。合計で10人。


「生地のレシピは詩音梨ちゃんに任せても大丈夫かな?」


 そう聞いてきたのは二階堂旭ちゃん。旭ちゃんはクラスの文化祭実行委員会でもあるのでこの前の放課後のホームルームで進行をしていた子だ。


「うん。この前作ったからたぶん大丈夫……だと思いたい」


「しおは自信なさげだけど、ちゃんと美味しかったから安心して。それにあたしもちゃんと覚えてるから!それよりさ、この中でシフト組める子いる?」


「それじゃあ、そっちは私がしよっかな?」


 そう言って手を挙げたのは一ノ瀬美宵いちのせみよちゃん。美宵ちゃんと旭ちゃんは幼馴染でいつも仲良しだ。クラスの文化祭実行委員会の内の一人で、この前は黒板に板書をしていた。


「それじゃあ中身は残りの子で決めちゃおっか!」


「どういうのが良いかなぁ〜」


 他の子達が話してる間に私は生地作り。今回はホットケーキミックスを使って作る。


 ボウルにホットケーキミックス100gと卵1個を割り入れて、牛乳を3分の1(200㏄なので大体70ccぐらい)を入れて泡立て器で混ぜる。残りの牛乳も少しずつ入れながら、ダマにならないように気をつけながらしっかりと混ぜていく。


 しっかりと混ざったタイミングで話し合いが終わったみたいで、調理班のみんなが見ていた。


「あ、話し合い終わった?これから生地焼くけどみんな見る?」


 そう言ってみんなが頷く。少し緊張するけど、そのまま続けて行くことに。


 フライパンにサラダ油をキッチンペーパーで薄く広げて中火で熱する。フライパンが温まってきたので弱火にしてから6分の1ぐらいの量を流し入れて、フライパンを傾けながら生地を全体に広げる。


 しばらくすると生地のふちに焼き色が付き始めたので裏返して、その後15秒くらいしたら取り出す。


「よし、出来た」


 あとは買ってきていた苺をスライスしてから、クレープの生地の上の半円にホイップクリームと苺とチョコソースを乗せて、さらにそこから半円手前ぐらいまでホイップクリームと苺を乗せて、生地を1cmくらい下にずらして半分に折る。


 あとはさっきの苺とホイップクリームとチョコソースの所の境目を軽く押さえてから右側に転がして巻いて完成。


 お店で出す時はペーパーみたいなのを付ける予定だけどこれで一旦完成。クレープを紙皿へと乗せて……


「おぉ〜!!!」


 パチパチと拍手がなる教室。なんかいつの間にかギャラリーが増えてる気がするけど、恐らく気のせいだろう。


「それじゃあ、冬音ちゃん食べる?」


「え、いいの……?悠海に……あげなくて……?」


「うん!この前悠海ちゃんと美佳ちゃんは食べてるからね!せっかくだから食べてよ!」


 私が冬音ちゃんにお皿を渡すのに誰も文句を言わない。試食係ってのもあるけど、やっぱり1番は……


「はーむっ……。……っ!!!!―美味しい……」


 この幸せそうな顔をしているからである。見せられないのがもったいないぐらいには可愛い。私に妹がいたらたぶんこんな感じなんだろうなぁ……ってイメージ。


「ねぇ、詩音梨ちゃん!次あたし達もやってみてもいい?」


 そう言ってきたのは三重野汐みえのうしおちゃんとその後ろにピッタリとくっついている六川明衣ろくかわめいちゃん。2人もやってみたいらしく、私と悠海ちゃんで教えながらすることに。


「その次は私達もお願いしますわ!!」


 四篠瑞希ちゃんと五十嵐日向ちゃんも2人のあとに教えることになった。これで一応調理班のみんなは紹介出来たかな?(なんかついでになって申し訳ないけど……)


 もちろん旭ちゃんと美宵ちゃんにも教える。まぁ、案の定生地が足りなくなったので慌てて作り直したけど……。


 結論から言うとみんな上手に作っててビックリした……。悠海ちゃんは知ってるから分かってたけど、他の子は本当に知らなかったからびっくりだよ。


「でも詩音梨ちゃんみたいに綺麗に巻けなかった……」


 みんな口を揃えてそう言っていた。それに対して頷く悠海ちゃん。そんなことはないと思うんだけど……?結局、お持ち帰り用の分は見栄えを重視して私が巻くことになった。


 その途中で凪姉と涼姉と夏妃先輩が乱入してきたり、生徒会長と副会長が乱入してきたり、担任経由で先生達が乱入してきたりと色々あった試食会だったが、満足の行く形で終わることが出来た。



___________________________________________________



【キャラ紹介8】



一ノ瀬美宵:身長159cmぐらい。体重は本人いわく標準体重。着痩せするタイプで胸は意外と大きい。赤髪ロングのストレート。誕生日は12月5日のいて座。一人称は「私」


 クラスの文化祭副実行委員長。旭とは家ぐるみの付き合いで、昔から旭のことが大好きだが、まだ付き合っていない。実は両片思いをしているのだが、それに気がつくのはあともうちょっと。


二階堂旭:身長156cmぐらい。体重は本人いわくぽっちゃり気味らしい。(とてもそうは見えない)こちらも着痩せするタイプで胸は意外と大きい。青髪セミロング。誕生日は12月30日のやぎ座。一人称は「わたし」


 クラスの文化祭実行委員長。美宵とは家ぐるみの付き合いで、昔から美宵のことが大好き。美宵と付き合いたいなぁ……と思ってはいるのだが、あと一歩が踏み出せずにいる。両片思いなのには美宵同様に気が付いてない。


 今日出た他の4人はまた次とその次でキャラ紹介します!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る