第5話

―少しだけ歩いた先にある駅前のショッピングモールへとやってきた私達。今日のメニューはまだ決めてなかったのでどうしようか悩んでいると……


「この牛かたまり肉安いわね……」


「確かに……。明日休みだしローストビーフでも作ろうかな……?」


「しお姉、ローストビーフ作れるの!?」


「しおは料理が上手なんだよ。今日の弁当のおかずもしおの手作りだし」


「すごーい!」


「私達の家だと誰も料理なんて作れないから、詩音梨ちゃんが料理作れるようになって本当に助かったわ……」


「そうね……。料理だけは壊滅的に苦手なのよね……。詩音梨以外の私達の家族」


 その代わりに何をするにしても天才的な才能を持ってるから私的には羨ましい。私は何をするにしても人並みだから。


「実はおばあちゃんの家で料理作ってたのも詩音梨ちゃんだったのよ。美佳ちゃんも食べたことあるでしょう?」


「あ、そうだったの!?てっきり詩音梨ちゃん所のおばあちゃんが作ってたんだと思ってた……!!」


 美佳ちゃんがべた褒めしてくるから少し照れてしまった私。ローストビーフは確定としても他は何を作ろうかな……?


「いつものようにサラダを作るのは確定として……。スープも作って……あとは……」


「それぐらいで良いわよ、詩音梨」


「そうそう。ローストビーフだって作るの大変なんだから……。健康に気を使ってくれてるのは分かるけどね」


「でも……」


「いっぱい作るのは私達みんなの誕生日会の時だけで良いから」


「まぁ、しおお姉ちゃんがケーキを自分で焼くのは流石にやり過ぎとは思うけど……」


「え、そうなの!?」


 帆華ちゃんの言葉に美佳ちゃんは目を見開いて驚いていた。大切なお姉ちゃん達の誕生日なんだから、張り切るのは当たり前なのでは……?


「そうそう。しおったらあたしと帆華の誕生日もケーキ焼いたよーなんて言いながら渡してくれるんだよ…。ケーキ屋さんで買ってきたって言っても信じられるぐらい美味しいケーキで、しおがスイーツ作る時はお母さんも喜んでもらいに行ってるよ……」


「あ、その話で思い出したんだけど……。昨日、ガトーショコラ作ったんだけど、よかったらいる?」


「うーん……。嬉しいけど、流石に貰い過ぎな気が…ってなんか着信が……」


 そう言って電話に出る悠海ちゃん。ちなみに美佳ちゃんは物凄く欲しそうにしていたので帰ったらお裾分けすることに。


「あぁ……。えっとね、しお……。やっぱりあたし達も貰うことにするよ……。何を感じたのか知らないけど、お母さんが気が付いたみたいでさ……。帆華の携帯見ても連絡してないのに……」


 電話を終えた悠海ちゃんが申し訳なさそうにそう言っていた。私がスイーツ系を作った時は必ずと言っていいほど何かしらのアクションがある。流石、悠海ちゃんのお母さん……。


「マジでしおお姉ちゃんのスイーツにセンサーでも付いてるんじゃないかってぐらい正確に見抜くよね、お母さん……」


 別に凪姉や彩姉が悠海ちゃんのお母さんに言ってる訳ではない。むしろ自分達の取り分が減るから黙っている方の人達なのだ。もちろんこのままだと少し不機嫌になって、少し前と同じ様に“妙な視線”を感じるのは目に見えているから、メッセージアプリの私達三姉妹のグループチャットで『別のやつをまた今度作るから、許してね』と送ると表情は普段通りだけど、内心嬉しそうにしてるのは何となく分かった。


 そんな話をしてるとサラダの材料とスープの材料も揃ったのでお会計を済ませて、持ってきていたエコバッグに詰める私達。


「この後はどうする?このまま帰る?」


「うーん。それでも良いけど、せっかくここに来たんだし、何か食べて帰りたい気持ちもあるかなぁ……」


「私、クレープ食べてみたい!!」


 悠海ちゃんが言った言葉に目を輝かせてクレープ屋さんを指さす美佳ちゃん。


「良いわねぇ。それじゃあ行きましょうか」


 そう言ってクレープ屋さんを目指す私達。けど彩姉と凪姉はなぜか一旦止まって…


「姉さん、今度……」


「あら、それは良いわね……」


 後ろで何か内緒話をしていた。……なんとなくだけど、クレープのレシピ調べておいた方が良さそうな気がしてきたのはなんでだろう……。



*



 ―あのあとクレープ屋さんでクレープを食べたあと、そのままみんなで家へと帰った私達。ガトーショコラのお裾分けを悠海ちゃんの所と美佳ちゃんの所にお裾分けに行こうとすると、なぜか悠海ちゃんのお母さんと美佳ちゃんのお母さんがもう家の前で待機して、昔話に花を咲かせていた。


「久しぶりね、詩音梨ちゃん!元気にしてた?お母さんはまた出張に行ってるんだってね?」


「お久しぶりです。お姉ちゃん達も元気にしてますよ。あ、これガトーショコラです」


「ありがとうね、詩音梨ちゃん。優香ゆうかのお墨付きが付いてるスイーツが食べられるなんて嬉しいわぁ……!」


「詩音梨ちゃんのスイーツは本当に期待していいわよ、 玲衣れい……。この前のプリンなんてね……」


 そう言って私のスイーツの話で盛り上がる二人。作ったら教えてね!なんて言われてそのまま2人共帰っていった。


「よし……。それじゃあ、ローストビーフ作っていこうかな……」


 キッチンへと戻って、まずは熱々に熱したフライパンにスーパーで貰ってきた牛脂を入れる。その間に55℃から70℃ぐらいのお湯も用意しておく。


 牛脂が溶けたら、塩コショウをかけたお肉を入れて表面を満遍なく焼く。ある程度焼目がついたら一旦取り出して、ポリ袋に入れ、それをジップロックに入れて、先ほど沸かしておいたお湯の中へ。ストローを使ってジップロックの中の空気を抜き、温度を測りながら、蓋をしてタイマーを1時間でセットして待つことに。


「それじゃあ、この間に他のことでもしよっかな……」


 まずはお米を炊くことにした。まぁ、お米を洗って炊飯器に入れたらあとは勝手にしてくれるから本当に楽。主食もオッケーだから、次はスープを作ることに。


 昨日使った野菜を取り出し、食べやすいように一口大に切ったあと、具材を鍋の中に入れて5分ぐらい蓋をして少し煮込む。煮込んだあと、塩と胡椒、固形コンソメを2つ入れて更に煮込めば、たっぷり野菜のコンソメスープの完成。


 ついでだからソースも作ってしまうことに。さっきローストビーフの表面を焼く際に使った、肉汁の残ったフライパンにすりおろしにんにくを入れて火をつける。そこに赤ワインを入れて、アルコールがある程度飛ぶくらいまで煮たら、次は調味料。塩、コショウ、顆粒コンソメを入れ、最後にケチャップを入れてトロトロになるまで煮込めば完成。


「うーん。それでも時間余っちゃったなぁ……。どうしようかなぁ……」


「それなら風呂に入ってきたら良いんじゃないかしら~?」


「そうね。後は姉さんと私でも大丈夫な作業でしょう?」


「じゃあ、お願いしようかな?とりあえずあと30分くらい経ったら、一旦IHのタイマーがなって火が止まるから、そのまま鍋に入れたまま、別のタイマーを30分にセットしてスタートしてくれれば、後はゆっくりしてて大丈夫だよ」


 二人は分かったと言ったので私はお風呂に入ることに。残りの作業なら流石に任せても大丈夫だし、自分たちが扱うと碌なことにならないのは分かってるだろうし、扱ってご飯抜きになるのは流石の二人も避けたいだろう。一時間フルで入るほど長風呂する人間ではないけど、ゆっくりとお風呂に入らせてもらおう。



*



 ―お風呂から上がってくると、二人はちゃんと言ったとおりにタイマーをセットしてスタートしてくれていた。そして2人で仲良く何かの動画を観ていた。


「あ、おかえり〜」


「何を観てるの?」


「今度詩音梨に作って貰いたいものを観てたわ」


「へ、へぇ……」


 そう言いながら観ていたのはやはりクレープの動画だった。うん、なんとなくそんな気がしていた。


「文化祭の出し物とかで食べたいなぁ〜」


「でも、姉さん。文化祭の出し物だと私達の分が…」


「それもそうね……。でも詩音梨ちゃんの料理を自慢したいわ〜。だって、こんなに美味しいんだもの……」


「ううっ……。その気持ちは分かるけど……」


「……まだ文化祭の話は早いんじゃ?それに、うちのクラスがそんなことするとは思えないんだけどなぁ……」


 なんてまだ早すぎる未来の話をしてたら、ちょうど出来上がったみたいなので、みんなでご飯を食べて、やる事を終えてから眠りについた。


 ちなみに後日、試作で作ったクレープはなぜか二人の姉だけではなく、悠海ちゃんや美佳ちゃん、さらには二人の母親と帆華ちゃんも招いて結局みんなで食べることになったのは言わなくても分かるだろう。



___________________________________________________



【キャラ紹介6】


月里優香:身長は155cmぐらい。体重は平均値ぐらいらしい。体型については悠海の時も言っていたけどかなりグラマラス。それに加えて童顔なので、悠海とは姉妹に見られるぐらいにはとても若々しい(顔も悠海が母親にそっくりと思われるぐらいに似てるので余計に)。実際に高校生ぐらいから顔が変わっていないとのこと。ちなみに今は専業主婦。誕生日は4月21日のおうし座。一人称は「私」


 この人はこの物語の神様というか救世主というか…。とにかくこの人が居なかったら、詩音梨は料理が出来なかったし、それに子どもたちの成長促進のためだとお裾分けを定期的に持っていっていたから詩音梨というか三姉妹にとっては第二の母親的な存在。

メタ発言的な感じになっちゃうけどこの人の存在が頭の中にあったからこそ物語が完成したと言っても過言ではない(???)


陽川玲衣:身長170cmぐらい。体重は痩せ気味らしい。体型はとてもスレンダー。美佳がスレンダーのも母親譲り。ちなみに美佳の身長が低いのはおばあちゃんに似たらしい。とても若々しいが童顔って感じではない。誕生日は8月15日のしし座。一人称は「あたし」


 物語を考えてた当初は三姉妹の母親のように名無しのキャラの予定でしたが、なぜか名前有りのキャラに昇華しました。ちなみに上で紹介した悠海ちゃんの母親も実は名無しの予定でした。

ただこの話を書いてた時に2人に名前がないと不便だなぁ……となり急遽名前が付けられました。

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