第163話 ドラゴンは大きいけど宇宙船はもっと大きい

 シードラゴン、ドラゴンとは言うが結構種類が幅広い。巨大なウミガメやクジラのことをドラゴンということもあるし、デカいウツボのことをドラゴンということもある。


 何を持ってシードラゴンって呼んでいるかというと、ドラゴンブレスと呼ばれる攻撃をしてくるかどうかだ。あとは海棲生物だからシーがつく。


 ただ、ドラゴンにもピンからキリがある。以前戦ったことのあるアースドラゴンはレーザーキャノンすらものともしないピンよりの比較的強いほうのドラゴンだった。


 目の前のタツノオトシゴはどうか?なんとまぁ全長20m程度、トルティーヤダブルよりも小さいとモニターには表示されている。


「シールド減少値、1%未満か」


 そんな奴のウォーターブレスもとい消防車の放水程度ではケサディーヤテトラはまったく揺るがない。これが生身だったり、パワーアーマーだったら致命的だっただろう。


 近接攻撃をされる前にケサディーヤテトラについている2つの大型レーザーキャノンが同じ大きさのシードラゴンに照準を合わせ、発砲。


 あっさりと胴体に大きな風穴をあけたシードラゴンは赤い血を吹き出し、上下に分かれてチューブの奥へと落ちていった。


 やっべ、気が付かなかったが、重力の行き先はチューブの奥だ!ケサディーヤテトラも落ちてるじゃねえか!?


 だがまだ余裕はあるな。レーダーチェック、上から降ってくる宇宙船は居ない。


「アイリス、女性陣に問題発生って連絡して、あとテレビが映らなくなったぞ?故障か?」

「連絡はすでに。貨物室のアルケミストクラフター付近に集まっていたので到着に時間がかかるようです。テレビに関しましては……電波を受信しておりませんね?」

「うーん?ぱぱ、このまじっくはいうぇい、まりょくがうずまいてるよ?」


 義眼を魔力視モードに切り替えたが、なるほど。ハイパースペース並だ。酔う前に魔力視を止める。


 モニターからケサディーヤテトラのステータスをチェックするが、確かに電波を受信していない。なおかつ超光速通信もできなくなったのか、ネットが使えない。


「ハイパードライブ起動、座標は外でいいな……やっぱ動かねえ」

「んー、はいれないね!だめそう!」


 よっこいしょ、とルーは俺の膝から降りてコックピットの中の自分の席に座った。特にやることは指示していないがあそこに座って船のモニターを眺めるのが好きみたい。


 さて、ハイパースペースに入れないとなるとこの渦巻いてる魔力が原因かな……。


「一度、内側に戻るか。秒速10kmとはいえ2分も経過してなかっただろ、外側にいくよりはマシなはず」

「賛成致します、このチューブの中は広いですが、重力がチューブの中を落ちるように働いておりますのでケサディーヤテトラを安定させるのが難しいですから」


 ケサディーヤテトラはまぁ秒速600mで飛べれば良いほうだ。大気があるからもっと遅くなるだろうが、1時間もかければまた内側に出られるだろう。


 チューブの中は直径6kmほど、大型輸送船や戦艦、シールド艦などが通ることが出来るようになっているためよほどのことが無い限りぶつかったりはしない。


 広すぎて向こう側がちょっと霞むぐらいだ。


 どたばたとリビングから女性陣が戻ってきたが何人か下着姿なんだけど!大型娘3人がワンピース着てない!


「思ったより大事になってるわね?」

「貨物室から急いできたけど、一体どうなってるんだい?」

「はー、まさかのトラブルなのですわー」

「状況を説明するぞ、マジックハイウェイが消えた、チューブの中で置き去りになってるから一旦内側のほうへ戻っている。いきなりシードラゴンが現れて襲撃してきたから撃退した。だからサラーサヴァシリーサノエミは一旦服を着てきてくれ!」

「ほら~やっぱり余裕あるって~」

「ゲンマの視線がえちちだから気をつけないと事故るのじゃ、3人共服を着てくるのじゃ」

「どすけべにゃー」

「へんたいにゃー」

「ドラゴン、ドラゴンか、われは見たこと無かったのだがどういうのだったのだ?」


 うるさい猫とネズミを放っておき、エボニーには先程の映像を見せてやるとちょっと萎えた表情を見せた。


「なんかしょっぱいやつだの……」

「小さい奴だったからな、200mとかあったらもっと苦戦してると思う、実際アースドラゴンは強敵だった」


 そういえばそうだったのーなんて言いながらエボニーは椅子に身を預けていた。


 しかし、何も起きないな。


 すでに10分ほどは飛ばしている。すれ違う船も無く、先程の変な音も無い。シードラゴンも襲ってくる気配はない。


 そもそもあのシードラゴンどこから現れた?


「アイリス、シードラゴンとの戦闘前の映像解析を頼む。シードラゴンがどこから現れたか知りたい」

「かしこまりました、ええと……?このマジックハイウェイの青い壁、海核石からぬるっと現れてますね……?」

「マジなのじゃ?映像見せてほしいのじゃ……うわ、ぬるっと出てきてるのじゃ!?海核石って確か滅茶苦茶頑丈で高価な石だけど……そういう性質は聞いたこと無いのじゃ」


 アイリスの声を皮切りにコックピットが賑やかになる。確かにさっきのシードラゴンは海核石からにゅるっと出てきている。海核石の壁に波紋も一瞬出来ており、まるで水からぬっと顔を出したかのようだ。


 というか、海核石って売ってんだな?


「スズリ、海核石って売ってるものなの?ここ、こんなにあるけど……」

「サラーサの疑問はもっともなのじゃ、魔道具とかに使われるから割と売ってるのじゃ、こういう風に建築物に使ってるのはまず見ないのじゃ」

「そーいや見たことあるねー、錬金術の道具に海核石ってあったよ、確か、アクアリウムの水質浄化用の魔道具にも海核石を使ってるやつがあったはず」


 思ったより身近だったわ。そんな感じで雑談をしながらのんびりとマジックハイウェイを進んでいく。俺達に出来ることはそれぐらいだからなー。


 そんなこんなで飛び続け、やはり問題が発生した。


「閉じてるぜおい……」


 マジックハイウェイの出口に近づいたかはさておき、真正面にはウルトラマリンブルーの壁があった。


 そういえば、マジックハイウェイの中は暗くないのだが、これはどういう原理だろうね?この海核石の壁が発光しているとしか考えられん状況である。


 ケサディーヤテトラのレーダーなどの機器はこの壁の向こう側に何があるかなどという情報を拾ってはこれない。


「御主人様、ハイウェイに入った時間などをカメラから解析しましたが、おそらくここが入口から200mの位置だと思われます」

「遠いが近い位置だな……」

「入口から200m、壁の厚さにもよるけどもしかして入口水没してる~!?」


 多分してるねえ……。


「海核石の硬さってどれぐらいだ?水圧の耐え方からして相当なものだと思うが……」

「水圧を耐えるのは纏ってる魔力が原因だよ、海の魔石だからね、海に同化するから水圧は無視出来るのさ、ボスも魔力視すればわかると思う」

「わけわからん石があるもんだのう……」

「硬いは硬いけど、宇宙船の装甲に採用するほどでもないのじゃ!大型レーザーキャノンや魚雷で十分ぶち抜けると思うのじゃ!やっちゃうのじゃ?」


 やっちゃえやっちゃえと子供組が騒ぎ始めたけど、さてどうするか。


 かといってこのまま待機しているとどうなるか?食料はぶっちゃけ全員がいつも通り3食おやつ付きで食べて、2年は余裕で保つようにしてある。水は浄水して再利用出来る。


 だがさすがに浮きっぱなしのスラスターを使い続けるはケサディーヤテトラが保たないだろう。


 ちなみに重力は出口と真逆の方向を向いてるから魚雷を撃ったら多分俺達の方向に落っこちてくる。


「いつまでもここには居られん、正面の海核石の壁を破壊して、海に出るぞ、最悪、地上もとい内側に出てしまえばやりようはいくらでもあるからな。発砲後、あの壁を突き破って推定海に出る、重力は真下を向いてることを忘れるな、ビビるなよ!」

「「「「「了解!」」」」」


 さて、ミサイルとレーザーキャノンどっちにするかな。不思議なファンタジーパワーが効いてる壁が相手だとなんとなくレーザーキャノンより物理的爆発のほうが効果あるような気がするんだよなー。


 でもレーザーキャノンのほうが火力あるからそっちか。


「トルティーヤダブルの権限も確保っと、大型レーザーキャノン3発をまとめて一箇所に集中する。どうせなにか起きるだろうから各員気を引き締めてな」


 直径6kmの壁、端を撃つか真ん中を撃つか本気で迷ったが、ここはとりあえず真ん中だろう。何があっても対応出来るように距離は20km離れていて、ケサディーヤテトラの望遠機能で壁を見ることが出来る状態である。


 発砲。光り輝く大型レーザーキャノンが壁に吸い込まれた。直後、小規模の爆発が発生し、海核石の破片がボロボロと落ちていくのをケサディーヤテトラは回避する。


 破片っていうけど長さが50mぐらいあるね?


 ただ、水の類が落ちてくる気配は無い。もう一発必要かなーと思ってたらデカいウミガメが顔を覗かせてきた。


 大きいね、顔だけで10mぐらいある。そいつは口を開けたので急いでケサディーヤテトラを横にずらしたところ、俺達が居た場所に大量の水が流れ込んだ。


 ダムの放水より多そうで嫌だなぁ……。というか唐突に横シューじみた状態が始まっている。


 どうしたもんか、と思っているとカメはずるりとその身体を這いずりだし、大量の水と共に押し出され、落ちていった。


「どこいくね~ん!」

「ゲンマ!壁が割れてるわ!」

「あいつ、運悪く水栓みたいになっただけだったのじゃ……」

「ボケてる暇はねーんだよ!!」

 

 プラズマエンジンを吹かし、シールドジェネレーターをぶん回し、魔力炉からケサディーヤテトラの軽量化を付与する準備を整える。


 さらに穴が開いたところにレーザーキャノンをぶっ放す。大きな爆発が発生し、穴は広がり、水には大気が混ざってしゅわしゅわである。


 少しでも水の抵抗が少なくなったところにケサディーヤテトラをねじ込む。軽量化を付与し水の中を軽快に進めるよう頑張ってもらう。


「んぎゃあ!ゲンマァ!シールドがゴリゴリ削られてるのじゃ!1秒に2%減ってるのじゃ!」

「大丈夫だ!上昇すればするほど水圧は弱まる!」


 空気の泡はケサディーヤテトラの進行方向に登っていっている。深い海の中、一番危険なのは上と下がどちらかわからず下へ進んでしまうことだろう。少なくとも空気が上に上がっているのはあっちが水上、の、はず!


 10秒と経たないうちに黒い海は青く輝き始め、ケサディーヤテトラは無事水上へと飛び出した。


 そのまま水の上に居たいところだが、あいにくこの宇宙船は水に浮くような構造ではないのでそのまま空中へと飛び立つ。


「総員周囲を目視確認!メガフロートと大陸を探せ!アイリス、テレビとかの電波届いてるか!?」

「メガフロート無いにゃ!」

「めがふろーとないなったにゃあ!?」

「レーダーにメガフロートの反応無いわよ!ゲンマ!戦闘機が何百も上空を飛んでる!」

「高度150m、一旦停止するぞ!!」

「こちらとるてぃーやじゃなかったケサディーヤテトラ~!メガフロートはどこにあるか知ってるヒト~?」

「電波、微弱でございます。超光速通信は途絶したままです!」

「<メガフロートは沈んじまった!見たこともない大きな波が来て!沈んじまったんだよォ!!!!>」


 空を飛んでいる奴の悲鳴がコックピットに届き、俺達は声を失った。

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