第141話 シュテムプライム歓迎会

 シュテムプライムの惑星シュテムに入植する人達を護衛する指名依頼を受け、傭兵ギルドといくらかのミーティングを重ね、グラボ型防空ドローンの購入補助金を1機辺り500プニ貰えることになったので、4機購入。2階客室を両舷2部屋ずつぶち抜き、無事使えるようになった。


 ちなみに防空ドローンは1機辺り5万プニぐらいです。補助金が2,000プニ貰えただけ良しとした。


 そうして依頼を受けることにして2日後、今回の入植者達のリーダーとビデオ通話で顔合わせだ。


「俺がハイウェイ1等級傭兵のゲンマだ。所有している船はコルベットと中型戦闘艦。どっちも大型レーザーキャノンを積んでるから宙賊が駆逐艦を5隻ぐらい繰り出してこない限りは問題無い。あとリジー8と呼ばれる軽装ドローンが300機、防空ドローンを4機所有しており、これを動かせるメンバーが俺以外に9人居る、うち3人は子供だからメインじゃ動かないがな」

「あんたがタマツキか、あたしは……待ってくれ睨むなよ、あんたのスローライフチャンネルでみんな言ってるぞ」

「どうして……」

「よっぽど不本意な名前なんだねぇ、あたしはニキータ」

「おいらはイゴール、あれ本当か~?駆逐艦3隻落としてるやつ」

「オレはゼニス、そもそも女6人囲ってるってマジかよ、つーか何だよその軽装ドローンの数、駆逐艦でも乗っとるつもりか?」

「駆逐艦乗っ取る羽目になったから買ったんだよな」


 あれ本当かよという声と駆逐艦乗っ取るって何やったらそうなるんだよという声が聞こえる。軽装ドローンは50機追加で買いました。こっちも傭兵ギルドが補助金として1機200プニくれた。なので20,000プニが19,800プニになりました。


 依頼代金より出費のほうが多いなーとは思うけど、うちのメンバーは誰も気にしてないです。使い道はいくらでもあるだろうし、軽装ドローンのリジー8に至っては損失もあるだろうしで補充しとこうってなった。


「銀河信用金庫連盟はゲンマ様の活躍をすべて確認済みでございます、今回の依頼でも十分以上の力を発揮していただけるでしょう、申し遅れました、わたくしはギデオン、連盟より派遣された統治を補助するための機械知性です」

「よろしくお願いしますギデオン、直接は初めてですね、ゲンマ様に仕えているアイリスでございます」


 にゅっと俺の横から顔を見せたアイリスにイゴールとゼニスはヒューなんて囃し立ててきやがる。


「いい趣味してんなぁ、それはさておきあたしらの護衛をしてくれるっつーのはありがたいよ、傭兵を雇おうと思ったんだけどあたしらのツテじゃ皆パワーアーマーしか持ってないやつばっかりでねぇ」

「そうそう、今回の入植者の中にはタウン級の傭兵が30人30機居て、そいつらはおいら達の輸送船で運ぶんだぁ、ゲンマがそいつらの指揮とるかい?」

「いや、傭兵の指揮は慣れて無くてな。ギデオン、頼めるか?」

「かしこまりました、ゲンマ様が依頼終了後のことも考えるとわたくし達の指示で動かすほうが良いでしょう。ゲンマ様も基本、わたくしの指示で動くことになりますがよろしいですね?」

「よろしくないと思ったら命令拒否するから大丈夫だ、とりあえず移送中の護衛だが、そちらの輸送船を知っておきたい」


 ぶっちゃけ、傭兵隊の指揮なんて取ったことないからな!本当はやったほうが良いんだけど俺もやったことない仕事だからね、機械知性にお任せする。


「オレ達の輸送船はレンタル品だな、ハイパードライブ付きの中型輸送船を3隻用意してもらってある。1隻辺り60人、合計180人をシュテムプライムのアスパラガス半島に降ろす予定だ」

「なんて?」

「輸送船3隻を──」

「いや、そこはいいんだが、半島の名前のほう。アスパラガスって言った?」

「アタシ達はアスパラガスを育てる農業ステーションに居たやつらで構成してんだ、なんか文句あるかい?」

「無いです」


 いや、いきなりアスパラガス半島なんて言われたらびっくりするでしょそれは。ケサディーヤテトラのコックピットで、通信を聞いている女性陣が何人か目を丸くして、猫耳パーカーを着ているルーがきゃたきゃた笑ってる。


 輸送船のほうは……送られてきたデータを見るに普通の物だな。どちらかといえば武装されたのをよく見る程度にはよく使われている船だ。


「まぁいいか、それで俺達の購入したアスパラガス半島は大体10万ヘクタールぐらいの広さがあるんだが……まぁ山とか海とか群島、そういうのひっくるめてな。今回は30日で大体200ヘクタールを占拠、整地、防壁と堀を作ろうと思ってんだ」


 200ヘクタールって確か、東京ディズニーリゾート──ランドとシーを合算して──がそれぐらいだった気がするなぁ。


 狭いような気もするが30日だとそんなもんか?むしろ早いのか。


「ついでに見てもらえばわかるんだが、ちょうど海岸線に近いところに大きな湖があるんだ。これもうちにいる魔法使い達に頑張って貰って、汽水湖にしちまいたい、海と川繋げたほうが色々便利だからな、この水門を作るときの護衛が欲しいのが一点」

「防壁の外にも農地を作りたいんだ~広さはとりあえず2000ヘクタールぐらい、ちょうどいい平地と川があるからそこを整地するつもりだ~、その時の魔法使いや作業機械の護衛が欲しいんだ」

「さらにね、人工湖をいくつか作ろうと思ってんだ、30日じゃ穴を掘るだけしか出来ないけど、直径1kmのやつを10個ぐらい作る予定だからその護衛も欲しいんだ、出来るか?」


 居住地200ヘクタール、浜名湖みたいに湖と海を繋げる、農地作成の護衛、人工湖作成の護衛。あぁスズリがコックピットにホワイトボード持ってきて箇条書きしてくれてる。


「やりたいことはわかった、優先順位をつけてくれ、ただ、現地の状況がどうなのかは行ってみないと詳しくはわからない、この点だけは良いな?俺は努力するが、出来ないときは出来ない。俺が受けた依頼は生活基盤を整える、だ。こちらの依頼達成のためにも優先順位はきちんとつけてくれ、居住地200ヘクタールの防御態勢を整える、ぐらいな感じで」


 そう俺が言うと、通信画面の3人が喧々諤々の状態になってしまった。喧々諤々って使うときあるんだな。


「はぁ、これは先行きが不安ですね。念の為と連盟から私が派遣された理由がよくわかりました」

「船頭多くして船山に登りそう。なんで3人も代表が居るんだ」

「面白い言い回しですね、代表に関しましては、農業ステーションで女性陣をまとめて加工業をしていたまとめ役、農業全般のまとめ役、農業ステーションの警護班のまとめ役だそうで、まぁややこしいことになっておりますね」

「警護班だと思われる人、汽水域作るって言ってたけど大丈夫かな、自分の職分超えてない?」


 そう俺が発言すると、警護班のまとめ役、ゼニスがこちらに反応してきた。


「警護班っつーけど、オレはどっちかというとフードカートリッジのシステム管理やってんだよ、エビ水槽の水質管理な。専門は魚の養殖環境構築なのに。しかも、いつのまにかステーションのいろんなドローン周りの設定やらされるようになってさぁ、上司に色んな仕事押し付けられてたんだが、休みが全然取れなくて120連勤入った辺りで嫌になっちまって」

「アタシはアスパラガス加工工場のまとめ役とは言うが、やべーお局様から若い子達を守ってただけだよ、あのババア物理的にこっちの首と胴を分かれさせようとしてきてさぁ」

「いつのまにかおいら、上司にいろんな仕事任されてたんだ~、休みは無いし仕事をこなせばこなすほど上司はおいらの仕事の成果を横取りしてくるし~これ幸いと土地の権利を幼馴染と買ったんだよ~上司は上司で全員がこれ幸いとおいら達を率先して追い出すしさ~」


 なるほどね?君達全員追放系ね?農業ステーションの運営に必要な人員を邪魔だと追い出されました、仕事が回らなくなったから帰ってきてくれと言われてももう遅い系ね?2人殺されかけてるし。


 そんな馬鹿な事あるって思うが、たまに本当にあるから嫌な話だね……人生500年だからなぁ。農業ステーションとなると閉鎖環境も良いところ、同じ仕事一筋300年みたいな上司が相手だとうまく合わなかったら地獄だね。


「なるほどね、状況はわかった。ギデオンと相談しながら衣食住の優先度を決めてくれ、ほんと決めてくれ」

「こういう植民のときにはよくあることでございます、ゲンマ様の職分を超えないよう気をつけさせますよ」


 とりあえず今日のところは顔見せだ。翌日の出発まで待機である。


▽▽▽


 翌日、アクルコロニー外で俺達は輸送船と合流した。やはりよく見るタイプの中型輸送船で、普段はあれにミサイルが積まれている物のほうが馴染み深い。


「<こちら輸送船1号、ハイパードライブの同期を願う」>」

「<2号ヨシッ>」

「<3号ヨシッ>」

「ケサディーヤテトラ、同期完了だ」


 輸送船はあくまでレンタルなので、パイロットは連盟職員である。彼らは荷物を降ろしたらとっととハイパースペースに入って帰るそうだ。


 同期もしたし、すぐさまハイパースペースに入って移動に3日。そうしてようやくハイパースペースから排出するという段階で俺、コーリィ、ノエミと各種ドローン群がトルティーヤダブルへと乗り込み、ケサディーヤテトラから分離した。


 今回は護衛ということで、宇宙空間を移動中に接敵したときのことを考えた。


 コルベットであるケサディーヤテトラにどっしりと護衛対象の前で構えてもらい、俺達トルティーヤダブルが攻勢に出るという形である。


 一応、シュテムプライムはトゥ・アクルプライムの巡回艦隊や防衛艦隊が派遣されており、惑星シュテムの周りにはフリゲートが3隻ほど周回して宙賊対策を取っているらしい。


 それと、ギデオンに確認を取ったのだが、調査隊の小型船が着陸したことは何度かあるが、入植者として惑星に降り立つのは俺達が一番最初のようだ。


 トゥ・アクルプライムによって送り込まれた調査隊は殺人機械相手に何度か撤退している。目撃されているのはおおよそ軽自動車サイズまでの様々な形らしい。宇宙船と比べると小さいね。


 今回は目立つ物を放り込んでみて、どういう反応が起きるのかを確認するというのもあるとか。


 そんな危険なの、報酬上乗せだぞ?って言ったらギデオンから、だから補助金が出ているじゃないですかって言い返された。なんでドローン購入に補助金が出るの?って思ってたらそこかぁ……ってなったよね。


「ハイパースペースから排出まで3、2、1、ゼロ~!」


 特に感慨も無く真っ暗闇に浮かぶ青い球体が存在する空間へと移動する。ハイパースペースのときは外を見ないようにしてました。


 惑星シュテムには大陸を鷲掴みするような巨大樹も無いし、軌道エレベーターがあったりもしない。ただただ青い海、緑と茶の大地が広がっている星だ。人工物の類は一切見えない。


 この場所がきちんと稼働するような頃には自然はどれだけ残っているんだろうね。


 そんな小さな感傷を仕舞いつつ、レーダーの反応に目をやった。


 ノエミがレーダー観測手としての発言を何もしていないため、周囲には宙賊の類は居ないだろう。トゥ・アクル所属──シュテム所属と言うべきか?──のフリゲートが戦闘艦を引き連れて近づいてきている。


「<あんたがタマツキか、気をつけろよ、下の連中はよっぽどヒトが嫌いなようだ>」

「<ゲンマだ、ゲ!ン!マ!チクショウ!なんでそっちが有名になってんだ!忠告には感謝する>」


 周囲に敵影無し、地表にも目立つものは見当たらないっていうかわからない。


「<全機に告ぐ、こちら1番艦、これより目標地点アスパラガス半島付近へと降下する、降下後、適切な場所を探すが場合によっては空中投下することもある、これはギデオンにも通達済みだ>」

「了解1番艦、その場合、こちらはケサディーヤテトラが空中待機してドローンを降下させる」

「<了解トルティーヤダブル、1番艦降下する、輸送船は続け>」


 3隻の輸送船は三角の形で編隊を組み、ゆっくりと惑星へ降下を始めた。シールドや構造保持フィールドがあるとはいえ大気圏への突入は少々ダメージがあるため、浅い角度でなぞるように降りてい──光った。


「<メーデーメーデーメーデー!地上から攻撃だ!直撃した!シールドが剥げる!!シールド残量残り30%!!次は耐えられないぞ!>」

「3機とも機首を上げて降下を中止しろ!ケサディーヤテトラは輸送船の盾になれ!地表にデカい対空砲が居る!」


 翻訳インプラント君が仕事をしているなぁと頭の片隅で思考しつつ、惑星シュテムの地表を各種望遠システムで睨みつける。


 緑色で構成されていた森林地帯に小さな穴が開いていた。そこにはなんらかの砲台があり、レーザーよりも遅いがそれでも十分速くキラキラと輝く砲撃が飛んできていた。


 トルティーヤダブルの大型レーザーキャノンタレットの照準を合わせ、発射して直撃させると、砲台は爆発したが、別の場所から追加で5発ほど何かが飛んできた。


「サプライズ歓迎会が始まったぞクソボケがァ!!オラ!新入社員のゲンマさんだぞ!!レーザー注いだらァ!!」

「<推定プラズマキャノンでございます!御主人様、直撃にはご注意を!>」


 さっきフリゲートが飛んでたけど何であの砲台は良い感じの餌を無視してんですかね!連盟かトゥ・アクルプライムが情報隠してたでしょこれ!!

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