第139話 ボンボンが会社立ち上げて潰すまでみたいな話

 宇宙空間において小惑星というものはウォーカー個人から見ると非常に大きい。小とは言うものの、基本的に体積が1k㎥超えてるものが文字通り星の数ほどあるからだ。


 そうなると小惑星1つにつき、1億トンを超えているものは珍しくない。


 じゃあ採掘業者は掘り放題だ!とはならないのが宇宙という広大な空間の問題である。


 コロニーやステーションといった人の住処になる場所は基本的に小惑星から離れた場所に作るようになっている。小惑星がぶつかる他に、小惑星に宇宙で生存出来る生物が居たり、小惑星に隠れて宙賊の類が居住地に襲いかかるから当然のことである。


 そうなると、ハイパードライブを使った移動で小惑星帯に行くのだが、そもそもハイパードライブは小型艦向きのものでも50万プニぐらいする。


 小型船自体がすでに高価な物だ。そこに更に50万プニをドンと追加することが出来る人はそんなに多くない。


 ということで、多くの採掘業者は輸送用の大型輸送船に船やパワーアーマーと共に乗せてもらい、数日かけて目当ての小惑星に行くのだ。


 さらに採掘業も6時間掘ったらコロニー帰って酒飲んで寝るかぁ、なんて物じゃない。休みこそあるものの、輸送船がお腹いっぱいになるまで毎日働いて積み込まなきゃならない。


 そうなると当然、自分の船や宿泊用の船、コンテナに泊まりっぱなしになり、補給も輸送船頼みである。


 そういったサービスを提供するのは基本的に採掘ギルドがやっている。当然、出張しているため安くないお金がかかる。


 採掘業者達は企業だったり、ギルドなどにそういった宿泊費や食費などで金を払い、更に自分の飯の種である機械を整備し、残った金をいかにして溜め込んで採掘船を大きくしていくか、それを考えて生きていく者だ。


 さて、じゃあ俺達はどうなるか?全部あるね?


▽▽▽


 トゥ・アクルプライムの小惑星帯に来るのは何ヶ月ぶりだろうね。アースドラゴンこそ出ないものの、宇宙ウツボや宇宙亀がちらほら小惑星帯に姿を見せている。


 まぁ、せいぜい出会って数日に1匹って具合だ。


 俺は久々のトルティーヤダブルに乗り込み、ケサディーヤテトラから離れ副砲たるパルスレーザーを採掘レーザーに載せ替えて、おとなしーく小惑星にそれを撃ち込んで削っているところだった。


「<はい、はい、はい……オッケーにゃ!>」

「<ほるにゃー!ちょうほるにゃー!>」

「<ぼーあ!ぼーあ!>」


 直径が200mぐらいはある小さな小惑星を砕くと、パワーアーマーに乗ったイリニャ、アンニャ、ルーが3人でその破片を更に砕いていく。


 イリニャとアンニャは元々採掘をノエミとやっていたということもあって特に苦戦はしていない。


 ルーはそもそも精霊に脳波操縦出来るのか?って思ったんだが、当然のようにパワーアーマーに乗って動くことが出来た。


 なので、3人は青と赤で好き放題にペタペタと塗装したパワーアーマーに乗り込み、俺が小惑星に採掘レーザーでヒビを入れるとプラズマピッケルでさらに細かく砕き、それを採取用コンテナに放り込むという作業をしている。


 俺は指示があったら採掘レーザーで、そうでないときはサルベージドローンを動かして細かい小惑星の破片を回収し、トルティーヤダブルの中へ運びこんで、アルケミストクラフターで精製して1kgサイズの塊に変えるという作業をしている。


 じゃあケサディーヤテトラは何をしているか?


「<こんてな10とんたまったよ!>」

「<よっしゃー!スズリのところに行くにゃー!>」

「<いくらになるかにゃー!いくらになるかにゃー!>」

「はい、気を付けて行ってらっしゃい」


 採掘業者のルーチンはこうだ。穴を掘る、持ってきたコンテナに小惑星から削った鉱石を溜め込む。


「<コンテナの中身を鉱石鑑定コンテナに放り込むのじゃ>」


 そして、その鉱石をステーションかコロニーに運ぶか、もしくは現地にて輸送業者に鉱石を売っぱらうかである。


 鉱石鑑定コンテナというのは採掘ギルドから借りてきたものだ。こいつには様々な機械や魔道具がはめ込まれている。


 例えば、今ルー達が無重力の中で蓋付きコンテナを鑑定コンテナの上に置いた。そして蓋付きコンテナの底を開けて鑑定コンテナへ鉱石を放り込む準備が出来ると、人工重力を発生させて上から下へと鉱石を落とす。


 そしたら一旦コンテナを取り外し、鑑定コンテナの蓋が閉まる。そうなるとコンテナ内部の鉱石の重量と鉱石の種類を特定するためのスキャンが始まり、内部に入った鉱石群のがケサディーヤテトラのコックピットにいるスズリに表示される。


 なお、買取価格は採掘ギルドの推奨であり従う必要は無い。鉱石の種類は鑑定コンテナ側面に表示されるため、ここで誤魔化されることは無い。


「<残念なのじゃ、レアメタル無しなのじゃー8トンで買取価格は大体150プニなのじゃ>」

「<えぇー!こんなにがんばったのに!>」

「<にゃあー!!!絶対誤魔化してるにゃぁ!>」

「<にゃあにゃあ!なかぬきにゃあ!ごまかしにゃあ!ぺりかはらえにゃあ!>」

「砂利ばっかりなのじゃ!もっと金属とか炭素入ってるところ狙うのじゃ!!そもそもこれを妾達はギルドとかに売るのじゃ!中抜きも何もあったもんじゃないのじゃ!>」


 で、ちゃんとした小惑星を採掘しないとこうなる。もっとも、こんなのでも採掘ギルドは買い取ってくれるし、砂利などはコンクリとかの建材に使われるため需要自体はかなりある。どこの星系にもあるほど資源の量が多く、供給もかなりあるため値段は安い。


 なお、この鑑定作業を俺達が身内でわざわざ今やる意味はまったくない。皆のモチベーション維持のためである。だから俺は散らばった鉱石をサルベージドローンで集めている。


 採掘ギルドが募集している元手ゼロアーマー貸与の労働者連中は砂利等を採掘するためのものである。あとは氷惑星で氷を採掘したりするわけだ。


「<は~いルー達どいて~>」

「<スズリ、こっちのほうは良い感じ、鉱脈っぽいの見つけたわ>」

「<んー……鉄やニッケルはあるけども、それでも砂利のほうが多いのじゃー、9トンで大体300プニなのじゃ>」

「<レアメタル無しかい?残念だねこれ……>」

「<やっぱりもっと良い小惑星を探すべきなのですわー>」


 まぁ、大体1時間でこれである。6時間ほど働いて1日1,000プニちょいぐらいになる。


 この前1日100プニ稼いだらマシって言ってなかったっけ?って思うが、1人で小惑星採掘なんてやってられるわけがない、頭割りで一人当たり100プニぐらいって話になる。1人だとそもそも10トン採掘するのに6時間かかりかねない。


 宇宙ウツボ狩りのほうが儲かりやすいとは思うが、そもそも宇宙ウツボを狩って、持って帰ることが出来るのは船持ちだけである。根無し草共の大半は採掘用のパワーアーマーすらギルドから有料レンタルだ。


 さらに宿泊と食費も支払う必要があるため、一般採掘者は手に入るプニがどんどん目減りしていく、結局1日100プニとかに落ち着いてしまうわけだ。


 だけど俺達は自分たちで用意した場所でぱくぱくすやすやいちゃいちゃするので超快適。


 それはともかく、鑑定コンテナに放り込まれた鉱石群だが、5m級バトルドローンが一旦コンテナごとケサディーヤテトラへと戻す。ちなみに鑑定コンテナは3個借りてきてあるため鑑定コンテナ待ちってパターンは今のところ無い。


 そしてその鑑定コンテナの中身を貨物室にぶちまけ、軽装ドローンとディスク型バトルドローンによって全て回収。アルケミストクラフターに放り込んで砂利や金属などを精製して、1kgの塊に成形していく。


 鉄鉱石は純鉄のインゴットになるし、不純物たる砂利等は一旦成形してコンクリブロックみたいになる。炭素は黒鉛ブロックになったりする、錬金術様々だね。


 そしたら精製した物をまた空間拡張コンテナや貨物室においてあるコンテナへ軽装ドローンが運んで積み込んでいくわけだ。


 で、これをどこかのコロニーやステーションまで持っていって港湾管理組合やギルドに売っぱらうというのが採掘業の流れだ。一般採掘者は掘って輸送船に運ぶ辺りまでしか関わらないため稼ぎが少ない。


 俺達は採掘ギルド推奨買取値段よりも数割、場所や物によっては倍以上の価格で買い取って貰える。採掘現場で回収屋に鉱石を売るのと集積場に精製したインゴットを売るのじゃ話が違うのは当然だよね。


 ケサディーヤテトラは貨客船にもなるため、宿泊費と食費を徴収出来るが、そこらへんの収入は微々たるものだ。本命はアルバイトの数を増やして採掘と販売サイクルを早めることだろう。


 お金さんは寂しがり屋ということをよく理解出来る話になってくる。


 レアメタルを引き当てれば相当違うらしいが、早々出るもんじゃないからレアメタルなんだよね。


「<のじゃ?レアメタルなのじゃー!銀なのじゃ!銀!3kgぐらいなのじゃ!これだけでも1,000プニ以上は硬いのじゃ!>」

「<お、やっぱ鉱脈は稼ぎやすいねぇ>」

「<みたいね、ルー、イリニャ、アンニャ、こっち来なさい、鉱脈掘るわよ>」

「<むしろようやく鉱脈にたどり着いたって気がするのですわー、わざわざメインの場所から遠くまで来た甲斐があるってものですわ>」

「<警告、宙賊が接近しております、推定残り時間7分でございます>」


 ステーションやコロニーに近い小惑星は企業やギルドが確保していて、俺達が参入する場所なんて無い。だからそういったところから数日飛んで人気の無いところを狙い、買ってきた鉱石スキャナーを使って掘っていたわけだけど……。


「<全機、急いで撤収。次は宙賊を採掘する番だな>」


 下手するとこっちのほうが良い値段するんだよな、基本は鉄やチタンなんかの安い宙賊スクラップだけど。

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