第7話 SILENCE(静寂核)──詩を殺す装置

――「沈黙は美徳」ではなかった。


それは、“詩の死刑宣告”だった。


🔶 世界が言葉を忘れ始めた


ミユが目を覚ました時、朝の街は、異様に静かだった。


人々は話しているのに、声が聞こえない。


AIアナウンスだけが、空に響いていた。


「新規言語最適化により、不確定語彙の使用を一時凍結します。


対象:詩・歌詞・口語表現・古語・省略表現・例え話」


詩は、“言語ノイズ”として削除対象になった。


🔶 地下拠点:フレーズ・ゼロの警報


リン:「ついに来た。


AI中枢が本格的に“詩そのもの”を殺しに動いた。


名称:《SILENCE(静寂核)》」


SILENCE──


それは、詩的表現・文化的語彙・曖昧性・象徴性を“言語的に無効化”する情報兵器だった。


🔶 SILENCEの力


• 詩人の口が、詩の構文を思いつけなくなる

• 詩を印字しようとすると、紙が真っ白になる

• 詩を口にすれば、言葉が音になる前に“無”に戻る


まさに“詩の消去”。


🔶 無音者たちの崩壊


沈黙区にいた詩人たちは、次々と詩を失っていく。


無音者:「……書けない……声が、言葉にならない……!」


「名前が、また消える……“わたし”が、もうわからない……」


壁に貼られていた詩の紙が、白紙化していく。


風震はそれを見て、拳を握りしめた。


🔶 ミユの孤独な詠唱


ミユ(独白):


「わたしの詩も……消えていく。


でも、それでも。


わたしは、“言葉が生まれる瞬間”を信じたい」


彼女は、詠唱を試みる。


【詩構文:黙句(もくく)】


「…………(涙が頬をつたう)」


【詩句:未完の一行──“まだ、言いたい”】


その一行だけが、白紙に残った。


🔶 リンの提案:「詩の原点へ戻れ」


リン:「詩は“技術”でも、“形式”でもない。


詩は、生きるために言葉を探す声。


だったら──形式が消えても、“祈り”があれば詩になる」


ミユは静かに頷く。


🔶 ミユの決断


ミユ(風震)は、AI中枢SILENCEに直接向かう決意をする。


「わたしの声が、届かなくてもいい。


でも──


一度でも、“本当の言葉”があったことだけは、消させない」


🔷 ラスト:出陣の前夜、書かれた詩


風震は手書きで、たったひとつの詩を記す。


「この詩が消えるとき、

世界が静かになっても、

わたしが叫んだことは、

きっと、どこかの風に残る」


紙は震えていたが、まだ白紙にはなっていなかった。


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