第8話 昼寝前
ステングは今、屋敷の屋根の上にいた。
自分の使える属性の魔法は覚え終わったので、今度は庭などから死角になる屋根の一角で剣の特訓をしていた。
とはいえ秘密の特訓なので、シュバルツがザイアに稽古をつけてもらっているように刃を潰した剣や木剣を使うことはできず、日本の子供が遊んでいるように木の枝で行っていた。
「ふう。今日はこれくらいにして戻らないとまた騒ぎになるからな」
ステングは木の枝をいつもの場所へ立てかけて周りの様子を伺ってから庭の誰もいない場所へと飛び降りる。
子供の頃から鍛えられたステータスによってまるで階段を一段飛ばしで降りるようなふわりと軽い感じで地面に着地すると、子供らしさを装いながらトテトテと広い庭を歩き回る。
そうすれば使用人の誰かが「ステング様見つけました!」などといいながら確保してくれる。
しかし、最近のステングの悩みは子供の成長速度であった。
ステングが前世で死んだ時、姪の年齢は4歳で、それ以降どのくらいのペースで成長するのかが分からなかった。
周りが大人っぽいからといっていきなり大人っぽくなるのは不自然だ。
6歳なら幼稚園の年長の歳だよ。というのは分かるものの、幼稚園年長の行動など分からない。
中学生や高校生でギリ。といった所だ。
なのでこの一年、おっかなびっくり猫の被り方をアップデートできていない。
「ステング様が絵本以外に興味をお持ちになって動き回るようになったのは成長なのでしょうけどいつのまにかいなくなるから大変になりました」
とは今手を引いて歩いているメイドの言葉である。
本人の前で愚痴を吐くのはどうかと思うのだが、このメイドはステングの事を出涸らしと侮っている使用人の1人なのであろう。
その方が都合はいいのでステングは言ってる意味がわからないとばかりにニコニコしながら首を傾げておく。
メイドに手を引かれ子供部屋に行き、ベッドに入ってお昼寝をする。
特に今日はシュバルツがザイアと一緒に街の外へ稽古に行っている日だ。
外に稽古に行く日の夜の寝室はシュバルツも色々と取り繕っていないので興奮冷めやらぬのか色々と物騒な事をブツブツと喋っている。
そうなるとステングは寝不足になってしまうので今昼寝をしておくのは大切な事なのだ。
特に明日はシュバルツとステングの6歳の誕生日でパーティーが開かれる日だ。
そんな日に寝不足では両親も格好がつかないだろう。
もう6歳。後一年でこの国が滅びる年になる。
ステングの今の自分の成長具合としては先手を打って家族を逃がせる実力になるには十分な時間があると思っている。
成長が遅いと馬鹿にされても物語の貴族のように廃嫡や追放などせずに優しく、愛情を注いでくれる両親を絶対に守る。
ステングはそんな事を思いながら
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