第14.5話 【閑話休題①】古都巴の場合①
「じゃぁ、またあとでね」
美麗をマンションにまで送ると、夜の約束だけをしてあとにする。
着替えた後にまた合流して、二人で美麗用のえっちな下着を買いに行くのだ。
「…」
古都巴は澄ました顔ですたすたと歩く。エレベーターにのる。先に乗っていた人を一瞥して、何食わぬ顔でエレベーターの端に立つ。
8F…7F…6F… … … 1F
エレベーターの扉が開くと、先に出る。
すたすたと歩き、美麗の住んでいるマンションから少し離れたところにある自宅へと向かう。
黙ったまま。表情はツンとしたまま。
古都巴は歩く。
家につく。二階建ての、普通の家。
窓から光が漏れているので、もう家族は帰宅しているのだろう。
家の扉を開ける。
「あ、古都巴、おかえり~」
奥から母親の声が聞こえてくる。台所にいるらしく、料理の音も一緒に聞こえてくる。玄関には自分以外に、母親と、父親と、妹の靴が並べて置いてあるのが見えた。
その隣に自分の靴を綺麗に並べて置いて、
「ただいま」
とだけ言って、すたすたと自分の部屋の前まで歩いた。
扉を開ける。
中に入る。
普通の、女子高生の私室。
壁に何枚も貼っているポスターは昔の洋画のポスターで、すべてスティーブン・キングが原作の映画ばかりだった。スタンドバイミーから地獄のデビルトラックまで、古都巴の趣味で貼っていた。
鞄を置いて、机を見る。
机の上には、写真が飾られている。美麗と一緒にうつった写真。金髪の美麗。
何の表情も浮かべず、古都巴は、セーラー服姿のまま、ベッドの方へとふりむく。
ぽふん。
そのまま、身を投げ出す。枕を抱きしめると、古都巴は、
「け、け、け、けっこん、だって…」
ぷるぷるとしながら、さらに強く枕を抱きしめた。
「あああああああああああああああああああああああ!!!美麗、美麗、美麗、かわいい可愛いかわいい可愛いかわいいよーーーーーー!!!好き好き好き、もう大好き!超好き!超愛している!あああああああああああああああああああ!!!おくさん、美麗が、わたしのおくさん!!!私、美麗のおくさん!あああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ごろんごろん。
枕を抱きしめたまま、ベッドの上を転げまわる。
「えっちな下着!いまから美麗のえっちな下着買いに行くんだ!一緒に!私と、一緒に!美麗のえっちな姿!見たいみたい見たいみたいみたーーーい!!!あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ごろごろ。
じたじた。
ばたばた。
「美麗、好き好き好き好き好き。大好き!大好き!!!もう、かわいいーーー!!!好き好き好き好きーーーー!キスしたいキスしたいキスしたい!!!美麗の唇!ぷるぷる!好き!」
枕に、ちゅーっ
「ああああああああああああ!!!もう、駄目!もうダメダメダメ!!!美麗好き好き好きーーー!ちゅうしたい!ちゅうして!おくさん!私のおくさん!!!!好きにして!私を好きにしていいよ!好き好き好き好き大好き好き好き好きーーーーーー!!!!」
「古都巴、うるさいよ!」
フライパンを持った母親が怒鳴り込んでくるまで、古都巴はずっとベッドの上で叫んでいたのだった。
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