恐怖の露天風呂

調理場を後にし、次に露天風呂へ向かうことになった。


さなえは恐怖で無口になっており、仲間たちの話も耳には入ってこなかった。

彼女の心には、あの血まみれの男性の姿が強く印象づけられていた。


露天風呂に到着すると、優斗がまず中を確認する。

「誰もいないみたいだ、大丈夫だよ」と言い、皆が安心して中に入っていった。

さなえは不安を抱えながらも、仲間たちに続いて足を踏み入れた。


露天風呂の湯は温かく、心地よさを感じた。特に何も起こらず、皆がホッとしたとき

突然、湯船に誰かが入った時の音がした。

全員が振り返ると、湯の中に煙が立ち昇り

人影のように見えた。


「ただの煙だよ、気のせいだって!」と瑠衣が言い、皆もその意見に同意した。

「そうだよ、怖がる必要はない!」と笑い合ったが、さなえだけは怯えていた。

彼女の目には、その煙があの血まみれの男性に見えていた。


心臓が高鳴り、全身が震える。

さなえはその場から逃げたい気持ちを抑え込んでいたが

次の瞬間、彼女は金縛りにあったように声も出せず動けなくなってしまった。


「さあ、もう出よう!」と瑠衣が言ったとき、玲奈と雅美がさなえの手を引っ張った。


「大丈夫、行こう!」と励ましながら、彼女たちはさなえを露天風呂から引きずり出した。


さなえは仲間の力に引かれ、ようやく動けるようになった。

露天風呂を出ても

さなえの心には依然として不安が残っていた。

あの血まみれの男性の姿と、耳元に響く「助けてあげる…」という声が、彼女の心から離れなかった。

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