第1章 赤い部屋の屋敷の噂

1話

 某月某日。私にあるメッセージが届いた。

{面白い心霊の噂があるからそこ行って一緒に動画撮らね?}

 この人は守谷恭介もりや きょうすけ。界隈では有名な心霊動画系の配信者で、去年の半ばに一回私の動画が跳ねたときがあって、そのときに初めてコラボのお誘いを貰ってから、すっかり意気投合し、今ではコラボをする頻度も多く、ある種のパートナー?みたいになっている。

 今回もいつもの感じでメッセージが来たが、今回は守谷さんが”面白い”と言った噂と来た。

 この人の”面白い”は信用ができる。この人が面白いから撮ろうと言って作った動画はかなりの確率で跳ねるからだ

 いつもは”いい感じの~”といった具合であるが、本当に自信があるときにだけ、”面白い”が出る。

 私はそっと天を拝み、彼の誘いを快諾した。

{はい!是非撮りましょう!}

 私のようなまだ売れていない動画配信者にとってコラボはかなり嬉しく、守谷さんとのコラボから動画の再生回数も増え、前より生活が楽になった。それもあり、バイトを入れる量を減らすことに成功。より動画に時間を使えるようにもなった。

 守谷さんには本当に頭が上がらない....

 

1週間後


 度重なる打合せとをし、撮影に挑むことになった。

 なぜアポ取りをしたかって?それはこれから撮影をする場所は

 向かうのは緋月邸ひづきてい。製糸業で栄えた緋月家の邸宅。長野県の山奥にあり、所謂いわゆる旧家だ。

 現在は廃業し、そこに緋月家の現当主である”緋月由子ひづき ゆうこ”さん(80)とそのご子息、お孫さんと一緒に住んでいらっしゃるという。

 何故、今回の撮影を承諾してくださったのかは私にもわからない。私が守谷さんからのお誘いを快諾したあと詳細を聞いたときに、守谷さんはまだ有名だが私みたいなまだ未熟な配信者なので、アポを取りに行っても突っぱねられると思っていた。

 だが承諾をくださった。不思議でならなかったが、でも私たちにとってそれは都合の良いことだった。

 ということで新幹線のチケットを守谷さんに取って貰って(守谷さんは私なんかより動画で稼いでいるし、他にも収入源があるので、こういうときは頼りっぱなしだ。だが今回は私分は自分でも全然用意できる金額だったのだが…早く稼いで恩返しをしたい....)長野県に来た。

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