第17話 文化祭(本番編④)

 オカルト研究会から出た僕はしばらく思案に暮れていた。さっき仁木さんは女難の相って言ってたけどどういう意味なんだろう……


 気づいたら丁度生徒会長のクラスがある階の前だった。


(まさか、あの人に会うなんてことはないよな)


 僕は仁木さんの言葉を思い出して苦笑した。


「見つけたわ」


 後ろから声が聞こえてくる。


「み、美波さん?!」


「そんなに驚かなくても別に取って食いやしないわよ」


「でも今忙しいんじゃ……」


「あぁ武史が私が劇の練習をしてるって言ったのね。一段落したから今生徒会として見回りの最中なの」


「そ、そうですか……」


「そうよ。そう言えば仁木さんに聞いたわ武史と優香が朝倉君の占いの結果を知って倒れたって」


 朝倉というのは光士郎の苗字だ。朝倉光士郎それがあの厨二野郎の名前である。


「そうなん……ですか」


「それであなたが『結婚式には呼んでくださいね!』と無邪気に言ったとか……。 武史曰くあなたじゃなければ張り倒してたそうよ。まぁそんなことしたらどっちみち優香にドロップキックを食らうでしょうけどね。あの子もあなたのこと相当気に入ってるから」


 美波さんは微笑んでから言った。


「まぁ良いわ。それよりそろそろ劇の公演時間よ。偶然、あくまで偶然最前列の席の予約がキャンセルされてしまって空いてるのだけれど。当然来てくれるわよね?あぁチケットは私が持っているから大丈夫よ」


「は、はい!あ、ありがとうございます」


 こうして僕は美波さんの劇の公演を最前列で観ることになった。




『続いては3年C組による『白雪姫~運命の遥か彼方にSecondseason』です」


 放送席が余分なサブタイトルまで丁寧に読み上げる。


「フゥ~!始まりますぞ!開始時から席を取った買いがありました」


 右隣にはオタトーク全開の渋川君がいた。そういえばこの人ずっと文化祭で見なかったな……それをしてたのか。


「よぉ!あっちゃん!さっきぶりだな!」


 もう一方の隣には啓馬と晃がいた。


「交流試合よぉ……啓馬と恵麻が来た途端ホームラン連発でコールドゲームだぜ。もうお前ら野球部入れよ……」


「何でだよ晃。俺にはバスケットボールっていう道があるんだ!野球に鞍替えはできねぇ!」


「はぁ……もっと交流試合やりたかったなぁ」


「まぁまぁ!終わったことを嘆いてもしょうがねぇぜ!今を楽しもうぜ!優勝商品でこの良い席とれたんだからさ!」


 晃の話を半分くらい聞いて啓馬が笑顔で答える。




 そんなことをしていると美波さんたちの白雪姫の劇が始まった。


 まずは王妃様が出てきて針で手を刺してしまって……それで白雪姫が生まれた。


 白雪姫役をやっていたのは美波さんだった。本当に美しい雪のように白い肌に黒い髪、絵本の世界から出てきたみたいな美しさだ。それくらい白雪姫を演じた美波さんはとても可憐だった。


「おぉ!美波殿!お美しいでござる」


「か、会長きれいだな。啓馬……」


「ハハハ!そりゃそうだろ」


 他のメンバーも喜んでいる。



 その後で王子のシーン。王子を演じたのはなぜか優香さんだった。確かにイケメンだけどね……


「これはこれは白雪姫。なんと美しい顔だ!」


「キャー!カッコいい~!」


 周囲の女子たちから黄色い悲鳴が飛ぶ。


「さぁ白雪姫。僕と共に幸せな結婚式を挙げよう」


 そして王子は白雪姫に口づけ(の真似)をする。


「フム……イケメン女子と高身長生徒会長。美しい百合の花ですなぁ」


 渋川君はニヤニヤしながら言った。


「ふぅん……そうなんだな!」


 啓馬はなぜかドヤ顔をしている。


「へぇ~そりゃ面白いねぇ」


 晃もニヤニヤしている。3人とも楽しそうだ。


 そんなこんなで劇は終わり僕も外に出ることになった。

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