引きこもり神様、天照ちゃん
アラクネ
第1話「働きすぎ女神、天岩戸に引きこもる」
息抜きがてらに投稿しているやつです。よろしくお願いします。
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──ああ、もう、だるい。
布団に包まれ、夢見心地でくつろいでいる。ちゃぶ台の上に置かれた干し柿を片手に、私は今、ゴロゴロと神々のトップとしての尊厳を粉々にしていた。
天照大神、別名アマテラス・オオミカミ。
太陽の神、光の神、高天原の統治者。そして今は、究極の引きこもり女神。
それなのに……
なんでこんなに仕事あるの?神なんだからもうちょっと優遇されて良くない?
朝起きて、スケジュール帳を開いた瞬間に目が死んだ。日の出の時間管理?太陽の照度調整?人間界の農業支援?
「いやいやいや、こちとら神やぞ!?もっとこう、なんか……祭られたり、崇められたり、チヤホヤされてるだけの生活でよくない??」
ちゃぶ台に突っ伏して、ふわふわ雲製の神界高級布団に滑り込む。
完全2頭身モード。もう仕事なんてどうでもいい。私の正義は干し柿とGotflix。やる気がなさすぎて体がちゃぶ台の上に溶け出しそうになっている。
「またスサノオが田んぼ荒らした? ほっとけ……今、推しの神ドラマ“ご加護、届いてますか?”のクライマックスなんだよ……」
布団にくるまったまま芋けんぴをくわえ、神製クラウド連携スケジュール帳をそっとゴミ箱へ投げた。
「光の調整? 知らん。人間界? 自分らで日焼け止め使え。むにゃ……」
私は、ドラマを見ながら寝落ちするという最高の怠惰を貪っている途中なのだ。
そう、あの神々のアイドルにして、唯一無二の太陽神、天照が仕事に追われすぎて引きこもりだしたのだ!!
しかし、それに困る者が大勢いる。
◆
神々の会議室(別名:高天原ふれあいセンター)
「──天照様が引きこもっただとぉぉ!?!?!?」
会議室が阿鼻叫喚に包まれた。
オモイカネ神が震える手で、神界ネットに投稿された天照のラストログイン記録を読み上げる。
「“もうムリ、寝る。次の更新は未定”……これが……最後の言葉……!」
「やだ……尊い……」「え、推し引退?無理……」
「ていうか太陽どうすんの!?」「人間界が昼夜逆転しちゃうぅ!!」
神々は口々に叫び、誰かが床で泣き崩れ、誰かが天照のアクスタを抱きしめていた。
その時! 爆音と共に乱入した男がいた!
「オラオラ~♪ 姉ちゃん引きこもったってマジ?ウケる~!」
暴風のように現れたのは、神界のトラブルメーカー、
鋤が背中に刺さり、顔にはおにぎりが張り付き、ズボンには謎の田んぼ泥。
「いやさぁ、田んぼ爆破したら、虫の神が
「原因こいつじゃねーかあああああああ!!!」
全神、総出の土下座チョップがスサノオを襲う。これはもはや恒例行事。
だが、時すでに遅し。
──天照大神は、完全引きこもりロックダウンモードに入っていた。
◆
「……ふぅ。ようやく静かになった……」
ここは、究極の癒し空間。遮音率99.999%、室温23.5℃湿度50%、太陽エネルギー自給自足。
Gotflix見放題、神々のダンスDVDコンプリートセット、神界通販のお試しパック届いてるし……控えめに言って天国(物理)。
「働かないって、こう、魂に染みるよね……」
芋けんぴをぽりぽりしながら、ふわふわの布団に埋もれて深呼吸。
──ちなみに外では、農作物が凍り、祭事が全キャンセルになってるけど、それはそれ。知らぬが太陽神というところだ。
◆
「我らの天照様が……帰ってこない……」
「毎朝、天照様のご来光に向かって“おはよぉ〜”って言ってた日々が……遠い……」
「推し不在の神界なんて、アイスの蓋しかないアイスみたいなもんじゃ……」
「ていうか、グッズの売上がヤバい!!」
「だからそこじゃないっての!!」
今だに、アマテラス様の引きこもりが飲み込めておらず神界は阿鼻叫喚の嵐である。
神々はついに団結。
「最後の希望は……アメノウズメだ!」
「え、あたしぃ!?」
突然スポットライトを浴びたのは、踊るしか能がないことでおなじみの、神界の舞姫アメノウズメ。
「っていうか、マジで踊るしかないよ!?スピーチとか無理だし!」
「いいのだ、君には全てがある。リズム感と衣装チェンジ、それに何より、
アマテラス様が“唯一笑った相手”という、最強の実績が!!」
「プレッシャーやばぁいんですけど……」
かくして、神界最大の引きこもり解除ミッション──
《天岩戸ダンス作戦》
が、しれっと、でもわりと真剣に、始動するのであった!
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡ちなみにあるボカロ?楽曲からインスピレーションを受けてます。
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