第8話
やがて、私たちは起き上がって、まだクスクス笑いながら、お互いの服や髪の毛についた草の葉を取りあいっこしながら家路についた。
ふたりとも、ほっぺたを燃やして、目を輝かせて、時々抑えきれずにクスクス笑って。
火照った身体に、冷たい秋の夜風が気持ちいい。
いつのまにか、手も繋いでいた。幼い兄妹みたいに。
「ああ、可愛い妹ができて嬉しいなあ~!」
心底嬉しそうなシゼグ。
そうなんだ、嬉しいんだ……。本当に妹が欲しかったんだ……。
それにしても、この人、きっと相当振られ慣れてるよね。振られテクがすごい……。
シゼグの家族は、普段ならもう寝ているはずの弟たちまでまだ起きて、炉辺に集まっていた。
手を繋いで頬を染め、にこにこしながら帰ってきた私たちを見て、一瞬、みんなの顔が輝く。
そこに、シゼグが大声で宣言した。
「みんなっ! 今日からテルは、俺の、妹になったから! お前たちも」と、これは弟たちに向って、「テルのこと、姉ちゃんって呼ぶんだぞ。わかったかっ! じゃあ、おやすみ! テルもおやすみ、また明日な!」
そして、さっさと、弟たちと共有の寝室に引っ込んでしまった。
みんなの複雑な顔……。特にお父さんは、露骨にがっかりした顔をしている。
お父さん、無口であまり自己主張しない人だけど、その分、感情がモロに顔に出るのよね。
ごめんね、お父さん。
おばあちゃんが、優しく声をかける。
「テル、星は奇麗だったかい?」
「うん、とっても。楽しい散歩だったわ」
「そう、良かったねえ……。寝る前にお茶でも飲むかい?」
「ううん、ありがとう。私も、もう寝るね」
背を向けた私を、お母さんが背後から抱きとめて、優しく囁いた。
「ねえ、テル。あなたがシゼグの妹なら、私たちの娘よ。今までだって娘だと思っていたけれど、これで、本当に娘よ。ずっと、ここにいてね。どこにもいかないでね……」
……ごめんね、お母さん。私も、ずっとここにいたい。ここにいたいよ……。
夕方、シゼグは私をまた〈女神の杯〉亭に連れて行って、扉を開けるなり、集まっていた若者たちに力いっぱい言い放った。
「おいっ、悪い虫ども! 今日からテルは俺の妹だからなっ! 俺の妹に手を出すなよ!」
「悪い虫って……。俺たち、まだ何もしてないじゃん、なあ?」と、ぶうぶう騒ぐ若者たち。
娘たちは、
「シゼグ、振られたのね」と、訳知り顔を見合わせて苦笑を浮かべた。
違うの、振ったんじゃないの。私はシゼグが大好きよ!
大きな声でそう言いたかったけど、例のエクボの娘――名前はマーリと言ったっけ――が探るようにこっちを見てたから、黙って、困ったように笑っておいた。
マーリ、シゼグの隣は、もうすぐあなたに明け渡すからね、待っててね。
でも、それまでは、私にシゼグの隣にいさせてね。
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