19匹目 キアーラ様ご登場!
試験会場は
受験生達の
「息苦しい」
フィオは、知り合いを探して会場の中を進んだ。主にルチェッタである。一緒に行こうと思っていたのだけれども、声をかけようとしたときには、既に出発していた。あちらこちらと視線を向けてみたが、彼女の姿は見当たらない。どうやら、試験会場が違うようだ。
「あら、ヴェルディモンテ家の変わり者がいるわ」
話し相手がいなくて、いささか退屈していたフィオに、唐突に声をかけてくる者がいた。深い赤銅色の髪をきっちりと後ろで
「どちら様でしょうか?」
「はぁ!?」
とりあえず名前を尋ねようとしただけなのに、めちゃくちゃ怖い顔をされた。聞かれたくないのならば、先に名乗ればいいのに、とフィオが回答を待っていると、周囲がざわめく。どうやら有名人のようで、知らないフィオの方が異常らしかった。
「キアーラ・アルディナ・フェラノティよ! お初にお目にかかるわね!」
「初めまして。ん? フェラノティ? そのおでこ、まさか、でこーラちゃん?」
「でこーラって呼び方やめてもらえる!?」
唐突に記憶が呼び起こされる。幼少期に遊んだことのある貴族の少女。遊んだといってもお茶をした程度だけど。そのときもヘアピンできれいにでこを見せていた。というより、でこしか覚えていないのだけど。いや、それよりも重要なのは、このでこ娘、その家、フェラノティ家が西方地区の上級貴族だということだ。つまりヴェルディモンテ家よりも上位の存在、決して無礼を働いてはいけない相手である。
「失礼しました、キアーラ様。お会いしたのがずいぶんと昔だったのでうっかりしちゃいましたわ」
「あなたって人は! そうやって昔から
「だって、こんなところで会うと思わなかったんですもの。事前に会うとわかっていればわかりましたわよ」
「そんなの当たり前でしょ! このすっとこどっこい!」
こんなにぷりぷり怒る子だっただろうか、とフィオは記憶の引き出しの中を探した。しかし、出てくるのはゴミばかり。どこの川で何の魚が釣れるのかは覚えているのだけれど。
「え? キアーラ様も王立魔法学院を受験されるんですか?」
「ここにいるんだから当然でしょ。最高峰の魔法学院、この私にこそふさわしいわ」
「へぇ、そうですか。いえ、フェラノティ家のご当主は相当厳格な方だったと記憶しておりまして、よく許可していただけたなと」
「……まぁ、それは、いいじゃないの。というか、久々に会って、私のことは忘れていたのに、お父様のことは覚えているって何事よ!」
「だって、フェラノティのご当主様はたまに家にいらっしゃるのですもの。キアーラ様も来ればいいのに」
「何で私がわざわざ行かなきゃならないの! あなたが来るべきでしょ!」
「家の近くにはたまに行きますわよ。ソスピリ川ってナマズが釣れるんですよね」
「そこまで来たなら家まで来なさいよ! ソスピリ川ってすぐそこじゃないの!」
「寄りたいのはやまやまなんですが、あそこまで行くと門限までに家に帰るのがたいへんで」
「いい子ぶってんじゃないわよ、不良娘のくせに!」
物好きとは言われるが別に不良ではないんだけど、とフィオはいささか不満であった。しかし、これほどキアーラから嫌われているとは思わなかった。一応、西方地区の上級貴族だし、あんまり関係が悪化すると家に迷惑をかけるかもしれない。これを機に仲良くなっておきたいところだ。面倒くさいけれど。
「でも、うれしいですわ。キアーラ様とご学友になれるなんて」
「もう受かった気でいるの?」
「やる前から諦める人がいまして?」
「自信だけで受かるほど王立魔法学院の入試はあまくないわよ」
「でも、自信がなくては始まりませんわ」
「ふん。過信でないといいけどね。とにかく同じ西方地区出身として、あんまり不甲斐ない結果を出さないでほしいわ。こっちまでバカにされちゃうんだから」
「そうですね。私だけ受かっちゃったら気まずいですし」
「なっ! そんなことあるわけないでしょ! 見てなさい! トップで合格してやるんだから!」
「えぇ、お互いにがんばりましょうね」
「くぅ~! バカにして~! 見てなさいよ!」
「さささぁ、そろそろ説明が始まりそうですわよ。行きましょう、キアーラ様」
「臨むところよ!」
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