第三の事件
春になって新しい人事も発表されたころというのは外の景色が綺麗でなければやっていけないほどに忙しい時期になってくる。
なぜなら新しい課に異動になる人は、現在のこの課、つまり警視庁捜査一課の仕事の引き継ぎを行わなければいけないからである。
これは毎年のことなのだが、こういう時に限って犯人たちは犯行をやめようと思うわけでもなく、いつも通りの捜査の仕事もしなければいけない。
今日は3月28日で一週間前の3月21日に異動が発表されたので、この一週間が最も忙しい時期と言える。
そんな時に一通の電話がかかってきた。皆は電話の方を見つめる。そんな時、課長が
「あんどぅさん、ででやってくれ」と言ってきたので、仕方なく電話をとる。
まさか、事件だとかは言わないで欲しいと思った。
単純な殺人などならまだしも、複雑な事件を解くような余力は今のみんなには残っていない。
さらに俺の息子が、新年度から大学に入学するように、「新年度から子供が…なんです」という人も少しいるため、こんな時に確定で残業をさせようとするのはやめて欲しいものだ。
そんなふうに思っているのは一課では俺だけかもしれないが、俺はメリハリを持って行動したい。
俺の兄貴のようにはなりたくない。
そう思いつつ
「警視庁捜査一課の安藤と申します。どうされましたか?」
ここから、電話がかかってきた元のだらしない雰囲気を出した指令管制員の老人の声が一つずつチリのように積み重なっていくうちに、俺の眉間の皺に刻まれたものが深くなっていくのを感じた。
状況を聞いて今この瞬間に、簡単な事件ではなさそうだということがわかった。まず、死亡から時間が経っている可能性が高そうである点、事件発生現場が遠そうである点、さらにこの少年が小説家である点。
これらのことを踏まえるといろいろな面倒ごとがありそうで、考えるだけで面倒な気持ちになる。
少年の正体は最近テレビにも出始めている天才少年、「片桐冬馬」というペンネームで活動している人物だろうと思う。
彼の顔は二重瞼で髪は下ろしている。今ネットで調べてみると有名人特有というものなのだろうか、ゴシップ系のサムネイルも多くが見られたが、内容はどれも薄いものであることを俺は知っていた。
彼が髪を下ろして額を隠しているのは彼の額にニキビの跡がいくつかあるからだともされているそうだ。
世の中には様々な情報が飛び交っている。未来についての本を読むのが幼いころから好きだったのだが、最近読んだ本の中に未来学者アルヴィン・トフラーの名言で
「情報過剰は未知の形態を生み出す」 というものがある。
情報過剰、情報があふれることによって、人間、人類の形態がより新しくより変わったものに変化して言うということを表しているのだ。
これはまさにそれで、有名人についての情報は過剰にありインターネットを主体とするような形態、そしてさらに新しいような形態へと変化していくということなのだろう。
彼は重ねるようになるのだが、小学6年生の時にはかの有名な東京大学の受験問題をぎりぎりにせよ合格レベルで正解できるほどの実力を持っていたのだという。
最近は彼の演技も評価されている。
彼が出演しているドラマ「シルバークランプ」は、主演のゲリラというアイドルグループにいた小宮の演技と、彼の本職並みの演技が世間で話題を集め、瞬間最高視聴率は25%を超えるという、テレビ離れに逆行するような人気を誇った。
そんな彼、片桐にも弱点がある。それはネット上での言動とイロだ。
イロというのはそのまま、「女性のイロ」だ。それに片桐はめっぽう弱いと書いてある。書いてある情報を見極めることことが重要なのだとわかっているのだが、それが嘘だと断定するに至るような根拠もなく、そのまま信じるというべきか、頭の中に留めておくような女王法になった。
そしてネット上での言動というのは一瞬でタレントの人生を崩壊させることのできるような破壊力を持っているのだが、そのことがわかっているのか、わかっていないのかというような言葉でネットを騒がせていることだ。
しかしながら、ネットのアンチコメントは広がりすぎることなく、応援コメントに変わっていく。
その流れさえも小説のように感じてしまう。
場所は小河内ダムというところで奥多摩駅から車で13分ほどだったそうだ。被害者は若い女性でダムの水の中にいるそうだ。
少し不自然なようなものを直感で感じ取っていたが、言葉にはできない。あくまで‘直感’だ。
小河内ダムというのはここから100kmくらいあるし、時間にして2時間くらいかかってしまうだろうから、少し遠すぎる。
しかし行かないわけにはいかないので、部下の山西にクラウンの鍵を取りに行かせて、合わせて12人6台で警視庁本部庁舎を出発したのは、午後14時ごろ。
多分、片桐と思われる少年によると事件が発覚したのは13時過ぎごろだった。
事件が発覚したのがその時間だっただけで、遺体を見てみたらわかるのだろうが、死亡推定時刻、日時は1ヶ月異常であったとしてもおかしくないだろう。
ついた時にはすでに少し暗くなっていた。
時間は午後17時。なぜかわからないが連続で渋滞に巻き込まれてしまった。
高速では事故が起きて渋滞に巻き込まれるし、一般道はいつも通り混んでいた。第一発見者となる、片桐にはそこで待っておいてくれといってあるのだが、本当に待ってくれているだろうか。
しかし、片桐は怖いほど律儀に、そこに立っていた。
そして礼儀正しく一礼して、
「わざわざきてもらってすみません。」と丁寧な言葉で言った。
「今日は現場の様子を見てから、現場から必要なものを持ち帰ります。現場は触っていないですよね?」と聞くと、笑顔で
「もちろんです。全部刑事さんのいうとおりにしておきましたよ。」と言った。
現場の様子を他の刑事が見ている間に、得られることがどれだけあるかはわからないが、一応彼に発見した時の状況を聞いておく。
「発見した日時を教えてくれるかな」と聞くと、彼は一瞬僕の左上を見て
「確か、今日の13時15分ごろだったと思います」と答えた。
その後も聞き取りを続けていったが
【彼は今日の13時15分にあの死体がダムの川との境目のところに詰まっているのを見つけた】ということしかわからなかった。というよりは内心の様子を覆い隠そうともしていたために、これ以上の情報を得ることができなかったということができる。
俺もネットに踊らされている。ということに気がついた。
ネットで見たゴシップ系の情報を見たときに子供のようにゴシップ系の情報をわざわざ掘り下げてしまった。その情報を見たことにより、これだから芸能人は、有名人、著名人はと思ってしまった。
帰るともう一度ここまで来るのに時間がかかってしまう。そのため、片桐の印象に少し暗澹たる印象がハイライトのように追加されただけだ。
鑑識からわかったのは、遺体は頭と左腕、右足の一部が欠けていることだ。
しかし、女性の遺体であることのみはわかったが、年齢は誤差±5才分くらいになってしまうことは仕方ないことだと言われた。
次に、現場の様子については発見現場が水の上であったことなどから、痕跡は採取できそうにないということだ。
発見現場が水上であったことにより、遺体のそばに行くには船が必要で時間がかかってしまったようだ。
殺害現場を特定することは難しいのだろうが、それができれば操作の進歩に大きく繋がるのだという。
さらに、発見現場から少しでもプラスになるような情報はないかと聞いてみたが、何せ現場は奥多摩市なので人も少なく、有益と言えるような情報は得られなかったのだという。
もう最悪だ。今年は異動辞令が出てから一週間平和に過ごしてこられたのに、ここにきてその一週間分と異動辞令が出る前に事件が起きなかった分の労力を倍にして返されてしまったようだ。
次の日の朝、最寄りのと言っても50分ほどかかる青梅警察署には殺人の疑いも含めて警視庁との合同捜査本部が設置された。
合同捜査本部の管理官はあの憎き斎藤だ。
23年前に遡る。
今と変わらない、係長の役職に昇進した斎藤は、当時警察官になったばかりだった、俺の兄の安藤尚介の上司になった。
斎藤は、自身が係長に昇進するまでにしてきたように、部下に残業を強制した。
部下たちは何度もさらに上の上司たちに言ったのだが、聞き入れてもらえず、現状を変えることはできなかった。
そうして、兄は警察に働きにいくのが怖くなり、家に引き篭もるようになってしまった。
その時同時に、拳銃と警察手帳を警察に返した。
現在も兄は動くことができない。そして斎藤はその時の責任から、係長から昇格できずに、当時トップクラスの昇進スピードだった彼は出世レースからおちて、晩年係長となってしまったのである。
捜査本部では自分が昨日寝ながら考えた推理をぶつけてみた。刑事としての矜持があるのだろうか。それとも、何の権力もないような男に対してでも、俺からのうらみだけはある男に対してただ嫌なことをやりたかっただけなのだろう。
この人たちには何を言っても無駄なのだろうが、一応ぶつけてみた。
「よく、推理ドラマにある展開の一つとして第一発見者が犯人というパターンがあります」ここまで言ったとき、普段は推理を話したりしないような、淡々と仕事をこなすタイプの男が急に熱くなり始めたところを見て同僚たちが固まっているところでは少しざわつき始めている。
「つまり、第一発見者片桐を私は疑っています。それはなぜか」
そこまで言ったときには、少し印象が変わっていることに気がついた。大きな変化が起こったことに寄り多くの人間は俺に精神的異常が起こったのではないかと思っている人もいるのだろう。
中には、有名人で時勢の寵児ともなっている男を疑ってもし失敗だったとしたら警察がたたかれることになるだろうとでも考えているのだろうか。
俺は、この心の中で今、いつもと違うような感情を抱いていることを自認してそれでも何としても進むことが重要なことも自認していた。
こんな感情を抱いているからこそ何重も自認していることを確認してメタ認知をすることができている自分ということにして、自分の感情を冷ましている。
「片桐の通報を受け取った人と電話をしたのは私なのですが、私はこのような件に直面したとき必ず、そのままの内容をまるで録音したように教えてもらうことにしている」
そこまで言ったときには証拠の堅牢さについての疑問を持っているような人が多くいるようだ。そんなことは自分でもわかっている。そう自分の中で繰り返しつつ
「片桐の通報を受けた人は、初めに場所と通報時刻、被害者の状況、年齢、性別を推定だと言われていた内容で教えてもらった上で、その根拠を聞いたのです。それが片桐の通報の中では駅から13分のところにあるということだ。なぜそのようなことがわかるのか。片桐は電車を使わずにマネージャーの車で遊びに行ったとのことだったのに、奥多摩駅からの距離なんてわかるはずもない。ましてや、片桐がここに来たのは初めてなのだという。始めてくる場所なのに土地鑑があるはずはない。そうして片桐が犯人だと疑ったわけで」
そこまで言ったときにはもう、自分の世界の中に入り込んでいた。自分の世界に入り込むだけの刑事としての矜持はあったのだろうか。
いや違う。ほとんど人間を平等に動かすことができる感情、「怒り」が関係しているということがわかる。
証拠は乏しいのだが、一つ頭においておいてもらいと思った。しかし斎藤は僕のことについては何も触れずに
「次、鑑識ぃ」とだけ言った。
実は彼らにこんなことを言っても無駄だと思ったのが、自分の中では少し根拠のようなものがあった。それは、編集者の友達が見せてくれたものだった。
「これ、片桐が最初に書いた小説らしいよ、あの代表作の」と言った8つの物語は、どれも1000文字くらいの小説の分類としては掌編小説に入るものだ。
物語はまさに天才的と言えるようなものだった。みた時の記憶で言うと、確か代表作の8つの物語のうち2つの物語は違う内容だった気がする。
その二つの中の一つが今回のように水の上に浮かぶ死体だったと思う。
最も、そんなことで追い込めるとは思っていないが、俺は本当にそう思っている。
今、俺に公に課されている仕事は最も重要な「殺害現場の断定」だ。
まずは一般のルートから考えてみた。
まず、被害者の移動経路を探ってみた。しかし、被害者は一人暮らしなので移動経路を特定することはできない。
さらに、周辺の防犯カメラ、目撃情報、また周囲の状況から殺害現場を断定するような有力な情報は見つからない。
その過程の中で、東京にいる、ここも東京なのだろうけれども鑑識から入ってきた情報の中で死因については肺の中に入っている水の量などから溺死ではないことが分かったそうだ。その他の情報を遺体から読み取ることは不可能なほど遺体は腐敗していたのだが異常は見つからなかったので独り暮らしをしていたものの田舎に住んでいた両親のもとに送り返されたそうだ。
つまり、殺害現場の特定をすることは難しくなったということだ。捜査から知れること、考えられることはもう何もない。腐敗の進行は涼しかった春だったことから考えると通常1か月で骨になることはありえない。これは両親からの証言とも一致している。
「娘は医学部であったことからまめに連絡を取り合うようなことは難しかった。しかし、必ず1か月に一度は手紙を送って文通という方法を取っていた。」
今時珍しいようにも感じるが、田舎だということ関係なしに電子系が苦手だったからスマホなどは使っていなかったそうだ。
「手紙の返信が返ってこないときも送ったのだが、今回は返信を求めるような内容ではなかったので返信が返ってこないのも忙しいことに起因してるのだと思っていた。」
日本一の大学の日本一の偏差値を誇るような学部「理科三類」を輩出するような親はやはり違う。論理的に明晰に話していた。
腐敗の進行についての履歴が、スマホの検索アプリの画面上位5つをすべて占めている。多分この下の内容も2、3個は腐敗についての履歴なのだろう。
腐敗の進行から、結局わかったことは陸上に置いておかれたということだった。それは間違いない。
捜査は少しずつ進んでいくはずだった。二週間の間で進んでいくことがないというところまでは進んだ。
容疑者は誰も思い浮かばなかったためにそれぞれの情報収集も無駄なように思えてきた。そこで、自分の中で上がった容疑者、片桐を追うことにした。
片桐を追うことは簡単だった。テレビ局や出版社に頻繁に出入りしている片桐の足取りはどこにでも残っている。有名人とは大変なのかもしれないと同情してしまっていた。
片桐を何とか引っ張ることができないかとおもって見張ってしまっている自分がいることに気がついた。
片桐は水曜日には必ず出版社を訪れる。それを、自分の捜査の中で明らかにしていた。
出版社を後にした後の片桐は、いつもと違うコースをたどっていた。片桐はいつもは自宅に帰るはずなのだが、今日は最寄りのバスに乗り込んだ。そのバスは東京駅へと向かうもので、とても車内が混んでいた上に尾行のようなことをされて気分のいい人はいないと思いバスに乗り込むのはやめておいた。
しかし、足は勝手に動いてしまった。なにか、大きな目的があるわけではないのに体は心に幾つも言い訳をして東京駅へと向かっていた。
往復するタイプのバスではないので東京駅に向かうまでの途中に向かっているのかもしれないのだが、わかっていることは、あのチャンスを逃してしまった以上こうするしかない。
何より、出版社に寄っているようにも感じた。普段よりも多かった荷物はいつものおように自宅から出版社に行くためだけの量には思えなかった。
つまり、出版社に行く目的以上に目的があるのではないかと予想していた。
そのため、東京駅に着いた時、軽率にここまで来てしまったことに反省した。東京駅のどこだっただろうか。
丸の内中央口か丸の内南口であるのは自分の記憶が閑寂に語っていた。
その記憶を信じて、バスの後ろの電光掲示板に書いてある内容に当てはめてみた。自然と丸の内中央口であるという回答のほうが近いようにも感じられた。
そうして、丸の内中央口へと向かった。バスの速さにはついていけないと思うと歩いて行こうとするのは不可能だと早々に気がついた。
丸の内中央口へ向かう途中でスマホを操作し、タクシーを呼んだ。このアプリは便利だ。
このアプリでは近くだとどこにタクシーがいるのかをチェックしたり、そのタクシーを予約したりすることができる。
近くのところでタクシーに乗せてもらい移動した。あの出版社の近くのバス停から東京駅丸の内中央口まではバスで35分ほどかかるということはわかっている。
今日は道が混んでいるというわけではないのでタクシーで向かったら25分ほどでつくだろう。そう思いつつスマホを操作して、こんな隙間時間に法正堂新聞の出しているネットニュースを読んでいる。
月額制になっているのだが、CMを見て、ネットニュースがいいと思いこれをサブすくとして登録した。俺の妻は節約家でもあるため、最近はサブスクを管理するアプリもできている。
サブスクを管理するアプリ、スマホの料金を管理するアプリ、家計を管理するアプリを入れて節約に努めている。
タクシーをする間にすることがなくなってしまったのだが、こんな時ほどネットニュースを見ていることが多い。
「静岡県で、2024年累計の詐欺被害額が過去最悪」という記事を見つけた。
近年の詐欺被害額の増加の要因にはデジタル化の進展や、個人情報の漏洩、心理的な操作、新型コロナウイルスの影響などがあると書いてあった。
デジタル化の進展の点では、ネット上で会わずに詐欺をすることができるようになり、より多くの人間により簡単によりローリスクハイリターンで詐欺をすることができるようになってしまっている。
例えば、ネット上でのダイレクトメッセージは詐欺師にとって多くのメリットを持っているうえにネット上ではより効果的に宣伝のようなものをすることができる上に、ネット上で過ごす時間が増えていることから詐欺被害者も増えていっている。
個人情報の漏洩の観点では、個人情報が価値を持つようになり、個人情報が取引されるようになってきていること、個人情報を使うことにより様々な情報を結び付け手口をより複雑にすることができるようになっている
個人情報の中でも銀行口座番号、クレジットカード情報、身分証明書番号などの情報は、自分の重要な、自分の情報の中でも中枢の情報なので、これらの情報が漏洩されることはまずいということが分かっているだろう。そして、これらの情報が漏洩しないようにする努力は行われる。
しかし、意外と漏洩するとまずい情報の中に、名前と住所や、電話番号、メールアドレスなどがある。これらは自分に付随するような情報ではあるのだがこれらによってどのような詐欺が行われるのかが想像できないがためにこのような情報の漏洩について危機感を持っていない人が多い。
心理的な操作の観点では、詐欺の技術が向上し、デジタル化の進展での点と重ねて今すぐ対応しないとまずいことになるかもしれないと思わせて、プレッシャーをかけるという手法が増えてきているそうだ。
詐欺には恐怖や緊急性を利用したプレッシャーをかけたり、信頼を構築したり、周りも同じように行動していると社会的証明したり、限定的な機械や時間を強調し急かす希少性の協調などといった心理効果を持たせて来る。
さらに、楽観バイアスという、被害者が自分は騙されないだろうというように思いこむ心理を利用していることもある。
新型コロナウイルスも、詐欺被害の増加にかかわっている。この記事に書いてあるデータでは、2021年、令和3年で特殊詐欺全体の認知件数は14498件であったのに対して、コロナ 前、2019年令和元年の特殊詐欺件数は13350件だったのだという。
新型コロナウイルスの中で、社会不安が広がり、経済的な不安なども広がっていった中でその不安に付け込むような心理効果の利用ともいえるような詐欺が流行していったのだろう。
俺はこの詐欺被害について第4の理由があるのだと思う。
それは情報の氾濫によるという内容だ。
個人に対して膨大な情報の判断において瞬時にアクセスができるようになったことによって個人や企業が迅速に意思決定が迫られ、情報の選別能力が高くないとこれらが詐欺につながるようになる。
それに対して、信頼性の低い情報やフェイクニュースの拡散は、公共の認識を誤導する上に、情報の選別がより煩雑になってしまう原因となる。
このように情報社会による情報の氾濫は詐欺被害を助長する内容でもある。もちろん、情報社会は利便を極めているのだがこのような影をはらんでいる。
詐欺被害は社会の構造と、それに対する人々の変化がかかわっている。
社会の構造には多くの人が言うように、光を極めているところほど、暗い影ができているといえる。
その暗い影というのがこのように少しずつ増える詐欺被害であり、犯罪なのだろう。
そして、社会というのは固まったピラミッドだ。直すことのできない。
社会を溶解し、その形を柔和することはできないのだろう。
考えがどこから飛んだのかがわからなくなることもあるのだが、自分の中では自分の中の知識をつなげていくことによって考えているこの時間は少し、自分の中ですこし自分のなしたことがことさらに秀逸なものだと感じ、ひそかに誇りを覚えるような感情があることに気がついていた。
その時、上に滑り込んできた。スマホが古くなっていたからなのか、丸みがかった四角形の中に入っている内容は、ゆっくりと重く動いていて自分の心の中にも重くのしかかっているようにも感じた。
首都高で大規模な火災が発生、そして原因は爆発物によるものではないかというニュースが出てきた。すでに、全員が捜査本部から帰ってきてリモートで捜査会議をするなどして奥多摩からは帰ってきているのだが新しい事件が起こるというのは気分が上がらない。
ブックマークの中に東京都内の公共交通機関についてまとめたマップがあったはずだ。このサイトでは様々な公共交通機関についての情報をリアルタイムで表示している。
やはり、首都高の中にはバツのマークがあるところがあった。やはり、通行止めになって言うことなのだろう。
ブックマークから戻ると、同じブックマークのところに編集局の友達から送られてきて、そのままブックマークに登録してあった、片桐が書いた掌編小説があった。
その表現がとても秀逸なものであったことと、例の停滞していた事件に関係した内容であったこと以上には思い出すことはできなかったのだが、開こうと思えないほど指は春先を超えて、夏になろうとするような気候であったのにもかかわらず、先端のほうは重く、つけねにむかうに凍っているような感触を感じられた。
爆発物なんていうものは、あまり使われるものではないし、大規模な火災に発生するだなんてあり得ないことだ。
これは間違いなく、この事件も同時に追うことになるだろうな、と思いつつなんとかそれまでに事件を解決させたい思いが出てきた。
まだ、警視庁からの上司からの連絡はないので、このまま東京駅に向かうタクシーを止めずに向かった。
タクシーのスピードが気になり、少しでも早くタクシーが東京駅に向かえないかと思い、もう少しスピードが出るだろうと、心の中で繰り返し唱えた。
東京駅について確認したかったことはもちろん片桐の足取りなのだが、片桐の足取りを追うこと以上にあの爆発物に片桐が関与している可能性について検証したい気持ちがあった。
気づいた時には5分以上経っていた。もしものことを考えすぎていた。
もしかしたら、初めて現場に行く時に事故で高速道路が渋滞していたのだが、それは故意に起こされたものなのではないか。
そんなことを考えるのはもちろん客観的にみると事実無根な妄想ということになってしまうのだろうが、俺的には、一度片桐に面と向かって関わってみると、そう思ってしまうのは仕方のないことなのではないかと思ってしまう。
首都高での大規模火災、爆発物の件も、もしかしかしたらと考えてしまう。
そう思うと、この事件また、片桐にこれ以上関わるのは、良いことではないのではないかと思う反面、大人として、1人の漢としてやり遂げないことなのではないだろうかと思う気持ちもある。
首都高の現場はまさにカオスだった。万象は悉く乱れ、秩序の兆しすら見えないような混沌たる様子を呈すような高速道路には様々な人間の迸り滾るような言葉とも化さぬ感興が燃えんとばかりに、溶かさんとばかりに灰色のコンクリートを覆っていた。
自分の中で、カオスなことが続きすぎて少し混乱してしまった。
首都高の現場では爆発に巻き込まれた車が30台で、人数にして重症者が24名、軽傷者が12名、意識不明のレベルの人は重症者に入れずに7名いたそうだが、意識不明のレベ
ルの人はもうすでに搬送されたそうで、残っているのは軽傷者12名、重症者8名だそうだ。
高速道路は赤いものが揺曳し、熱気が振蕩している。この空間に快感を覚えるような人間はいないだろう。
首都高は混乱を招いてしまっている。後方でも追突などの事故が起こっているとのことで、被害は底知れない。
混乱を招いているということを知っていても、その事実がまた新たに混乱を招くという崩壊のドミノ効果を起こしてしまっている。
ましてや、これが爆発物によるものだと正式に発表されれば、警視庁すら混乱しかねない。いや、爆発物のようなものによるものだということが発表されるかどうかを警視庁の一存では決められない。
今の時代、情報はもはや空気よりも自由に、また多い量がこの世の中に出回っている。そして、どこから出てくるのかもわからない。
首都高では渋滞の中でも車の中から出てきて警察官の服装をしている我々を見るなり、状況を訪ねて来る者がいるために、自分たちさえ状況を確認できない状況に陥ってしまっている。
迂回のルートがいまだ示されないことなどが、渋滞に巻き込まれた人の混乱や怒りを招いてしまっていると思う。
やっとの思いで、現場に着いた時には消火活動が終わっていて、まばらに火が残っていることさえない。
そのため、関係する人々は爆発物がもうないかどうかをチェックしている。また、現場から、爆発物の残留物は残らなかったそうで、しかし爆発物は固体である必要はない、
気体である可能性も、液体である可能性も、固体である必要もある。
しかし実際はチェックがこの日だけで終わるはずもなく、必要なのは早期の迂回だ。迂回の方法として、首都高速道路株式会社は危険への対応として特例的な措置を発令した。
それが逆走の容認だ。逆走を容認することによって、いや、容認という言い方は正しくないのかもしれない。
啓発し、逆走させることに寄り、最寄りの銀座ICと汐留IC、新京橋出口、東銀座出口、西銀座出口、新橋出入口、新富町出口を逆走してくる車を捌くための出口とし、そこに誘導員を配置することによって道路上にある車をすべてさばききる。
この方法には安全性が確保されないという可能性があるのだが、警察が正しく呼びかけたことによって混乱を避けることに成功した。
後ろの方の車から情報を伝えていき、全体に流れが生まれたころには、ほとんどの車は退避が完了していた。
炎が上がっていた真ん中の高速道路を中心に関係者の車両が囲んでいた。
今の最後尾の車をストップ、事故が発生した銀座周辺は首都高速道路の中で通行量が多いとされている都心環状線の中でもさらに通行量が多い銀座周辺で起きてしまったがためにこのような特例的な措置をとるほかなかったのだろう。
今回の対応としては、まず首都高の中でも特に危険性の高い爆発現場から上下1km、計2kmを最も早い段階で通行止めとした。
つぎに新しく首都高に乗ろうとする車の通行をストップし、他の公共交通機関、またはほかの高速道路への迂回を促す。
さらに、WEBで無期限の首都高通行止めを告知する。
そのときWEB上で爆発物について公表するのはよくない上に、まだ爆発物によるものかを断定できないことなどから、爆発物についてはまだ世間に公の場では公表されていない。
爆発物が存在したかどうかはわからないが、いつもどおり首都高や中でも都心環状線では混んでいたために、後続車両の中でも爆発のようなものを見た人がいる。
また、その付近に住んでいる人などはもちろん何かがあったのだということがわかる。
その人たちが広めた情報が、またたくまに広がっていき今の状況に至っている。実際俺だって、課長に言われるより前にその事実を知っていたし、そうやって情報が回っているために、首都高速道路株式会社でも混乱が広がっているようだ。
もちろん銀座は町中なので、町にも被害が出ている。歌舞伎座あたりまでは日が広がっているという話だ。
もちろん先ほどの段階で鎮火できているのは首都高の上の話であって首都高の外でも延焼してしまっている。
延焼の原因というのはほかでもない、今日に気候が原因になっている。乾いているうえに温度が高く、最近は雨が降っていないことも重なって延焼は止まろうとしない。
そちらは爆発が起きた現場の内部から徐々に鎮火されて行っているのだが終わるのがいつかわからないほどに先が見えない。
こんな状況ではまず情報を整理することが重要なのだが現場のカオスさから何から調べ始めればよいかわからない。
そんな状況で起きることになった。
捜査ができないことはわかっていたのだが現場の混乱を鎮めるに警察が必要だったため帰ることはできなかった。
そのため車の中で夜を越すこととなったのだ。
しかし、朝にはなっていなかった。外はまだ暗かった。高速道路の薄暗い明りが道路を不気味というほどに照らしていた。
俺はそのまま寝落ちしてしまった。
その時、夢を見た。夢を見ることなんか珍しいのにこんな時に限って夢を見てしまった。
どんな夢だったか。確か幸せな夢だったような。大人になっても夢は見るのだ。それはもちろんレム睡眠をとるのは、大人でも子供でも関係ないからだということが関係していることはわかるのだが、なぜ、このような幸せな夢が広がっていたのだろうか。
これは一種の予知夢のようなもので、目の前の空間、目の前の現実に天与の転機が訪れないか、それがなかったとしても漸進的改善がみられることを期待していたのだろうか。
しかし、目の前に広がる景色はそんな幸せな夢とは正反対の現実が広がっていた。それは仮想空間であるかのような景色だった。
広がる炎はさまざまなSNSにアップされていた首都高での火災の様子と全く同じものだった。
朝日が昇ってくる反対側からは火災のオレンジ色が立ち昇っていた。もう終わった。
寝られないはずだったのだが、1日を三分割する当番制で夜の時間にはならなかったのだが寝ている間に状況は好転することなど考えられない。
事態は沈静化されていったところまでは知っていたのだが、その動きにも頽勢が見られた。
何によるものかさえもわからない。雪が降っていた。こんな雪になるのは都心に引っ越してきた13年前から初めてだったのではないのだろうか。
こんなにすごい爆発を起こすような爆弾とは何だろうか?そんなものが存在するのだろうか?
手掛かりはまだあるのだろうか?犯人は誰なのだろうか?
これらの疑問は疑問を解決し終える前に次の疑問によって踏み倒されいく。
雪が降っている理由さえわからない。気になったからネットで調べてみた。
いつもだったらテレビもネットニュースもマスメディアは全部この異常気象について解説を始めるのだろうが、今はこの爆発事件で手いっぱいだからニュースでも見当たらなかったのだろう。
よく考えてみればよく分からない。
なんでこんな時に雪が降るのか。こんな状況では首都圏に住む人はそんなことには興味がないのだろう。
雪についての記事は全くなかった。
疲れているのに記事さえ見つからないということは俺にとって怒りの火種になった。これだけ残業させられて残業代も何割出るかわからない。それだけではない、自分の時間をうまく使えていないというような、とりあえず労働者を送り込んでおけば対応として適切なものだと思っている上の人間の思惑さえ見え透くことができるような気がした。
ほとんどサービス残業させられて生活を拘束されて、怒りは頂点に達していた。
ガムをかむことにした。怒りを少しでも紛らわせたいという思いがあったのだが、全く紛れない。
それどころか辛すぎて逆に怒りが増幅されたようにさえも感じる。
そんな辛いガムを外に吐き捨てた。警察官としてはあるまじき行動だと思われるかもしれないが、それは苦しさのわからない人間のきれいごとにしか感じられない。
そんなとき後ろからライブ配信をしている人間が見えた。現在は高速道論には立ち入れないことになっているのだが、そのようにして侵入してきたのだろうか。
侵入者は多くいる。そのほとんどが、いや全員が野次馬のような存在だ。
侵入者はほとんどが関係者に混淆して、渾然一体となっている。
さっきのガムを吐き捨てる行為がライブされていたのならば少し炎上する可能性があるかもしれない。もうそんなことにも頭は回っていなかった。
侵入者の中には報道のものもいて、テレビでもライブ放送されているのかもしれない。この未曽有のテロに2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件に重ねて報道するものもいた。
もっとも、これがテロによるものだとは明らかになっていないのだが状況からテロによるものだとみて間違いないのだろう。
自然現象でこんなに大規模の爆発が起こるということはあまりない。
冷静になってきたころ、頭の中にかかっていた靄霧が少しずつ晴れていってたような気がする。そして、先ほどの件について考え直す。
このライブ配信者の知名度すらわからない。俺はどちらかというとSNSをよく見るほうだと思うがこの人間は見たこともないし、この声も聞いたことはない。
多分知名度も低いのだろう。それならば炎上は心配する必要ないか。なぜこの人間が入ってきているのかよくわからないがこの状況で注意することなどできない。
ライターの油は切れていた。だからマッチでタバコに火をつけた。マッチは火を消してから外に捨てた。
もうこうなったら捨てても仕方ないだろう。マッチを捨てるくらいで問題にはならないだろうし、捨ててしまえ。
なんでマッチを捨ててはいけないのかということを考えたことはあるだろうか?
警官ならそれくらい考えたことはあるだろう。でも、もうそんなことは忘れてしまった。なぜだっただろうか。思考はフル回転している。外を見た。
刹那、思考は停止した。全感覚神経は異常をきたしている。何も正常に反応しない。
ヒトリゴト③
作戦は成功したといえるだろうか?
気がかりが残ってしまった点を除けば成功したといえるだろう。
気がかりとは何か?
爆発事故で殺された人間の中に入っていた3流ライブ配信者のとっていたライブ映像である。
そのなかである警官がガムと唾を吐き捨てた。そしてマッチが車の窓から飛んで出てくる。
その後爆発が起きてその警官とライブ配信者が死亡するという映像だ。
そんな映像から水と反応した何かが爆発を引き起こした原因となったのではないかと考えるような専門家もいるようだ。
警察も捜査をすれば凍結防止剤の塩化カリウムに見せてナトリウムを混ぜておいたことが発覚してしまうのではないのだろうか。
ナトリウムというのは、通常、単体では空気中には存在しない。酸化ナトリウムや加算化ナトリウム、水酸化ナトリウムなどで結合して存在している。
そのため、現在の雪の気候の中で関係車両が通ることを目的として凍結防止剤が散布された。そこにナトリウムが入っていることによって、雪や雪解け水と反応を起こすことによって水素を発生させる。
発生した水素は空気中に漂うのだが少しずつ反応が進んでいくので水素濃度は少しずつ高くなっていく。半径10メートルに影響を及ぼすのには、TNT換算で294グラムの水素で十分なのだが、実際には少しずつ多い量が散布されて行っている。
およそ、1000gほどの水素が発生するようにナトリウムを散布していくとナトリウムはおよそ23㎏必要だ。それに対して密度はほとんど同じなので、24Lほどのナトリウムが中心に置かれることによって半径10mほどに爆発の影響が及ぶことがある。
24Lほどのナトリウムが1cm積もると考えるとちょうど2平方メートルとなるため、現実的にもう少し広げたとしても、濃度の濃い水素が発生することになる。
ナトリウムの表面積が広くなるような小さな粒子で構成されているため計算よりもより多くの水素が発生することになる。
そこに、あの警官によってマッチが捨てられたことで火と反応したのだ。あの警官が火を捨てていなかった場合、他の方法、例のナトリウムを散布する車をショートさせるなどして火をつけていた。
火と反応して爆発することで道に沿って爆発が連続して進んでいっていたのだ。爆発の波は止まらず、結局一度目の爆発現場に、二度目の爆発による影響が及ぶことになったようだ。
水素が爆発することによって水が発生して消火を助長するようになったことはこの事故の唯一の救いの手だ。
そんな簡単なトリックなのだが、それが故に解くことも簡単だ。
そうすると面倒なことになる。トリックを解くことはできても証拠は残ってないとしてもだ。証拠の残らない完全犯罪などない。
先に手を打っておくか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます