王女は鏡の中の世界を巡りゆく
藍凪みいろ
第一章 鏡の中の世界
プロローグ
緑深き森や湖。
海からなるヴェリティーゼ王国。
そんなヴェリティーゼ王国の第一王女であるアリシア・ラドリーティ。それが私だ。
そんな私は今、月明かりが照らす静かな王城の通路を一人、歩いていた。
「こんな夜遅くに部屋から出たなんてことを知られたら後で陛下からこっぴどく怒られそうね」
部屋を出た時は12時半過ぎくらいだったから、例の中央階段の踊り場に着く頃には1時になる前になっているだろう。
例の中央階段の踊り場というのは、この王城の中央階段の踊り場についての噂のことだ。
王城内の2階。南に位置している中央階段の踊り場にある大きな鏡を深夜1時に見ると自分の未来が見えるという。
そんな噂話を侍女の会話を通して知った私は
その噂が本当であるのかを確かめる為に今、そんな噂がある中央階段の踊り場へと向かっている。
「あの角を曲がった先が例の噂がある中央階段の踊り場ね。 何かどきどきするわ……」
独り言のように呟きながら、私は足早にもうすぐそこである目的の場所へと急いだ。
中央階段の踊り場へと着いた私は白い壁にかけられている時計に目を向ける。
時刻は12時57半。あと3分で1時になる。
「あと3分ね……」
噂通りであるか、あと3分したらわかる。
私は目の前にある踊り場から左右に別れた階段の上にある窓から差し込む月明かりに照らされた大きな鏡を見つめながら時間が来るのを待った。
チクタク、チクタクという秒針の音が静かな中央階段の踊り場に鳴り響く。
白い壁にかけられている時計を見れば1時になっていた。
「1時になったわ……」
時刻を確認してから、再び目の前にある鏡に目を戻すと鏡が眩しくらいに光り始めて。
あまりの眩しさに私は自分の左手で両目に手を置いた。両目に手を置いていても鏡から眩しいくらいの光が放たれていることがわかる。
私は眩しさを堪えながら、鏡を見ようと鏡に右手を置いて見ようとしたが、その瞬間、何故か私はバランスを崩した。
「え……?」
すり抜けるような感覚を感じながら私の視界は一瞬、眩しい光と共に白く染まり。
思わず私は目を瞑った。
数分後、恐る恐る目を開けた私の瞳に映り込んできたのは私が先程見ていた中央階段の踊り場にあった鏡ではなく、緑豊かな木々な立ち並ぶ森林の風景だった。
「え……? ここ何処……?」
現状の理解が追い付かず私はその場に唖然と立ち尽くしたまま状況を整理すべく今に至るまでのことを思い出し始めたのであった。
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