第3話 カギの魅力
ドロップ品が、古ぼけた鍵だった。
魔王軍との戦いは、熾烈を極めたが束の間の休みをカギの持つ錆びた鈍い光が勇者の心を離さなかった。
その後、幾多の戦いがあり、そしてやっと終わった。
戦勝パレードも王の受勲パーティーも、カギの虜になった勇者には、些細な事。
何時しかカギを常に身に付けて片時も離すことは出来ず、しまいには全ての物にカギに合った錠を作り嵌めていくに何の違和感を持つことが無かった。
やがて勇者の心は蝕まれ、屋敷に閉じ籠りとなる。そして徐々に勇者の姿を見ることも無くなり、皆の記憶から忘れ去られていく。
屋敷の使用人は徐々に減っていき、屋敷は朽ちて荒れ果てていく。
勇者は一人部屋に閉じ籠り、その空間のみの時が止まったと密かに呟かれている。
時だけは静かに流れて、勇者の姿さえ見えなくなっていき、歴史の彼方に追いやられていく。
時代は流れ、奇妙な魔物の姿が人々の話題に上る様になる。その魔物の腰には古ぼけたカギが鈍く光っている。
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