第14話 だってあの子要らないもん
「それで、皐月さん。私に話したい事っていったい何ですか?」
廻に連れられて、近くの寂れた常連だけが利用していそうなカフェに入った二人。
美嘉は若干緊張した面持ちで対面に座る廻の様子を見た。
廻は何とも言いずらそうな感じを出して、間が持つか持たないか位のギリギリのところでこう口を開いた。
「もしかしたら、美嘉ちゃんはあんまり知りたくはないことかもしれないよ?」
「私が知りたくないことですか」
「ごめんね。話があるって言って勝手に連れ出したのにこんなこと言って」
そう申し訳なさそうに言う廻に、美嘉は何とも言えない顔でうんともすんとも言えずまた気まずい空気が流れた。
美嘉は何となくだが、廻が先輩関係の事を言おうとしていることが分かっていた。
だから心の準備もせず、そう簡単に聞かせてくださいとも言えず黙ってしまう。
数分の葛藤の後に美嘉は大きく息を吸って吐き、廻の目を見て話し始めた。
「聞かせてください」
「ありがとう。ごめんね、最後は美嘉ちゃんに任せちゃって」
「大丈夫です。皐月さんもかなり悩んでこうして話してくれたことを分かっているので」
美嘉はまだぎこちないが笑みを浮かべて答えた。
廻もそれに応える形で話始める。
「私ね、先輩さんの遺書を見つけたんだ」
「遺書、ですか?」
そう切り出した廻は、遺書を取り出してつらつらとその内容を語っていく。
「美嘉。俺の事を好きでいてくれてありがとう。だけれど、俺の心は弱くて耐えきれなかったよ。あいつらの事が憎くて仕方がない。でも君には心から幸せになって欲しい」
そして廻はその内容だけが書かれている紙を美嘉に渡した。
美嘉はその内容を呼んで心の底から涙を流し、「先輩」と呟いて遺書に涙が吸われていく。
数十分の時間を要して、美嘉は何とか泣き止んだが廻の話はまだ終わらなかった。
美嘉が下を向いて数十分の間涙を流しているとき、廻は言葉では美嘉を心配するような事を言っていたが、顔は歪に笑みを浮かべていた。
「それでなんだけれど、まだ話は終わっていなくて」
廻が大変気まずそうに言いずらそうにしながら、美嘉の反応を待つ。
「何ですか?」
「ここから先の話を本当に聞きたい?」
廻はいかにも真剣な様子で美嘉にそう投げかける。
そう言われると美嘉は、一歩下がろうとするが先ほどの遺書の内容を読んで勇気が出たのか、ゆっくりと頷いた。
「これ、なんだけれど」
廻は彼女に先ほどの遺書の続きを渡した。
その内容は
「だけれど、一つだけ願いが叶うなら俺に代わってあいつらに復讐をしてくれないか。愛してるよ、美嘉」
という内容であった。
これは死神と胡蝶の夢といゲームの中でも重要な選択肢の中の一つであった。
廻は内心笑みを浮かべながら、美嘉の反応を待つ。
内容を読み進めていくうちに、美嘉の表情は暗く、どんよりとしたものになっていき目が虚ろになる。
心の内では様々な感情が渦を巻き、怒りと悲しみ、憎しみが先ほどの幸せになって欲しいと願った先輩の暖かい言葉を喰らい尽くし埋めていく。
「......ありがとう、ございます」
美嘉のその様子に焦りながら廻はこういった。
「美嘉ちゃん、ごめんなさい」
「いえ、この事を知ることができて私は良かったなって思います。ありがとうございました」
幽鬼のようにふらふらとその場から立ち上がってお店の扉を開け、足を引きずるようにして出て行った。
廻は足取り軽く、会計を済ませてからさっさと店を出る。
外に出て、周りに誰もいないことを確認すると先ほどまで我慢していた笑みを、これでもかというほど浮かべる。
「ご主人、悪い顔になっておるぞ」
「ふふっ、だって仕方ないじゃん。上手くいったんだもん」
「それはそうじゃが。それにしても、ご主人。女優にでもなった方がいいんじゃないかのう。演技にかなり磨きがかかっておった」
「ありがとね」
ツユギリは悪い顔といったものの、ツユギリの顔にも笑顔が浮かんでいる。
「それにしても、みぃ君。駄目だよ、私たち以外の女の子に手を出しちゃ。変態さんなみぃ君の性癖を理解してるのは私たちだけなんだから」
「そうじゃのう。愛しているといえどこれ以上
「だからあの子には死んでもらわなきゃいけないの。だってあの子要らないもん。さっさときったない男の精子で孕んで死んじゃえ」
そう吐き捨てるように廻は言った。
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