エロゲヒロインを最大限曇らせて死んだはずなのに

かにくい

第1話 絶対にこんな現実なんて受け入れてあげないから

「じゃあね、みんな。今までありがと。大好きだったよ!!」


 唐突にそう言って僕は彼女たちの背を笑顔で押した。


 彼女たちは振り返り一瞬驚いたのち、絶望した顔で一斉に手を伸ばすがどうやってもあと一歩届かない。


 僕はドンッという衝撃と共に地面に叩きつけられ、彼女たちが急いでこちらへと寄ってくる。


 あぁ....その顔だよ。その顔が見たかったんだ。僕を必死に助けようとして、手を伸ばしているその顔。誰がどう見ても助からなくてどうしようもなくなってる僕を必死にどうにかしようとしているその顔。

 

 今までも何回も見てきた。


 僕が無茶をしてヒロイン達を助けるたびに彼女たちはこんな顔をしていたけれど、これは今までの比じゃないね。最高すぎる。僕はずっとその顔が見たかった。この瞬間の為に僕は頑張って生きてきたのだ。


 死ぬほど痛くて今にも意識が飛んでしまいそうになるが、最後の瞬間までヒロイン達の絶望した顔をみる。


 廻≪めぐる≫ちゃん、死神なのに優しすぎる女の子。その子が僕の死をどうにかしようと必死に僕に呼び掛けている。あはは、その顔だけでもう少し生きてもいいかなって思うけれど、駄目だね、これが僕の選んだ道だからね。


 ツユギリちゃん、死神の廻ちゃん愛用の刀。そんな焦ってもどうしようもないこと、ツユギリちゃんが一番分かってるのに。ほんと可愛いんだから。


 楓ちゃん、いつもはクールで毒舌を吐いているのにそんなに必死になっちゃって。とっても可愛い。ずっと見ていられるよ。そのままの君で居てね?....居られるかな?嫌だな、これを機に毒舌をやめるなんてことになったら。


 佳乃ちゃん、廻の幼馴染ちゃん。必死に廻から寝取ってずぶずぶに依存させて最後には僕の欲望のためにそんな顔になっちゃって可哀そうだね。そんな佳乃ちゃんも可愛いよ。いや本当にかわいい。必死になって僕をどうにかしようとしてて。どうしようもないのにね。


 あぁ、最高だ。


 これできっと彼女たちは僕の事をこれから生涯、一生僕の事を心に刻みつけて生きていかなければならない。


 最高だね、あぁ、最高だとも。


 僕はこのためだけにこの世界で、彼女たちを精一杯助けて無茶をして心を絆して、ぐちゃぐちゃにして、戻れなくさせて僕に依存させて抜けられなくさせたのだ。


 最低?


 そんなことは他の誰かに言われなくとも僕が一番わかっているよ。でもこれが僕のしたかったことで、僕の性癖で、僕が生きる理由だから。


 人間はしたいこと、やりたいこと、生きる理由を失った時、屍と変わらないのだから。


 だから、僕は前世でやりこんで好きで好きで仕方のなかったヒロイン達がいるこの世界ではやりたい事、したいことをするって決めた。


 ただ、この計画で一つだけ嫌なことがあるとすれば、僕が死んでからの彼女たちの生活をこの目で見れないことが唯一の欠点か。


 きっと、陰鬱な顔をしているのだろう。お葬式とかずっと泣いててくれるんじゃないかな?期待のしすぎかな?学校とかまともに行けなくなって欲しいな。ふと僕としたこと思い出して涙流す生活になるといいな。


 本当に見れなくなってしまうのが悲しい。


 でも、シナリオを知っているというアドバンテージがなければ僕は本当にただのモブでしかないから、これからどんなことが起こるか分からないし、曇らせも難しくなってくるからここが潮時なんだよね。


 あぁ、辛いな。もっと彼女たちの歪む顔が見たかった。


 けど、残念。これで終わり。


 あぁ、いい人生だったな。




「「「絶対にこんな現実なんて受け入れてあげないから」」」



 

 


 


 


 

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