第2話 鏡

 ある男性がホテルの一室に泊まった時のこと。

 バスルームで顔を洗い、鏡を見ると、自分の後ろに黒い人影が映っていた。

 驚いて振り返っても誰もいない。

 再び鏡に目を戻すと、人影はさらに近づき、口元だけがニヤリと歪んでいた。

 恐怖に耐え切れず鏡を手で覆うと、鏡越しに何かが自分の手を掴んだ感触が。

 急いで手を離し鏡を見ると、自分自身が歪んだ笑みを浮かべ、鏡の向こうからこちらを見つめていた。


「そっちに行くから」


 低い声が響いた。


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