Part2

 魔王。この世界に存在する、最大の悪の名。そして、リーリィの実の父の名でもあった。

「アイツは私の父親で、『人間はお前の想像以上に醜い』なんて言って私をこっちの世界に放り込んだんだ」

 つっても最終的には私が望んで来たんだけど。と自嘲気味に最後に付け加え、リーリィは改めてシーナの瞳を見て言う。

「でも、人間はそんなんじゃ無かった。皆優しいし、綺麗な心を持ってた。だから、私はそれをアイツに伝えたい。アイツを殺して……お前ら魔族が間違いだと証明したい!……だから、協力してくれないか?」

 シーナは、ずっと困惑の中にいた。突然魔王が父親だ、なんて言われ、果てには魔族が間違いだと証明したい?それに……私が協力しろって?

 短期間に大量の情報が流れ込んできたものだから、脳内の色んな回路が渋滞していた。

 でも、リーリィの真っ直ぐな目線を見た時、なんだか納得できたような感じがあった。

 彼女には、譲れない信念があったのだ。魔族として産まれながらも、人間に対する深い愛情があった。だからこそ、それを否定する魔王が、父が許せなかった。そんなやつを――殺したかった。

 そんな決意と覚悟を、シーナは心の中で感じ取っていた。

 シーナも、一度リーリィの瞳を真っ直ぐに見つめた。

「分かりました。協力させてください」

 シーナ自身、こんな様子のリーリィは見たことが無かった。こんな風に何かに対して怒りを感じ、覚悟を持って話すリーリィは初めてだった。でも、それだったから、シーナは納得できたとも言えた。彼女がここまで怒るのには、相当な事情が隠されていると感じられたからだった。

 かくして、2人の間にはそんな契約が結ばれた。

「とは言っても、私全然弱いですけど……」

 どこか遠い目をしながら、シーナは己の弱さを吐露する。

「大丈夫。それでも0じゃないし、何より……あの時、シーナは戦っていたじゃないか。その背中、かっこよかったぞ?」

 突然向けられた、そんな言葉。それは、シーナの頬を紅潮させるのには十分だった。

「や、やだなぁリーリィさんったら……ぇと……あぁそうだ、その袋は何なんです?」

 そんな表情を悟られぬよう、シーナは適当に話題を探して振ってみる。バレていないだろうか。

「せめてもの謝礼だ。装備は別で買うし……好きに使ってくれ」

 リーリィが言った通り、その中身は金だった。袋一杯に詰められた金額が、夜の電灯を受けて輝きを放っていた。

 でも、シーナはなぜだかそれを受け取りたくは無かった。

「いえ、いいんです。リーリィさんの思いに共感した私が、勝手にやることですから。気にしないでください」

 シーナはそう言うと、リーリィへ袋を差し戻す。

「……そうか。分かったよ。ありがとね」

 その優しさを無下にしてまた戻すのも悪いかと思い、リーリィは一度その袋をカウンターの端に置いた。

 それから、2人は現実的なプランについての話し合いに移った。

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