11話目 わるいゆめ(後半リュイ視点)
お風呂も入れるようになったけど、まだ傷のこともあるからルイザさんやサクさんに入れてもらってる。身体を洗うのは自分でもしてるけど背中とか髪とかはお願いしてる。手もだいぶん治ってきてて…もう少ししたら治癒魔法をかけてもらって傷跡とかも治すんだって。お風呂から上がったあとは傷薬を塗ってもらってガーゼを貼ってもらって包帯を巻いてもらう。最初の頃よりはガーゼや包帯も少なくなってきた。
果実水をもらって一息つく。
「ふは…」
ひんやり冷たくておいしい。このお屋敷にきてからの好きな物のひとつだった。それから、寝る準備をする。とはいっても、ベッドに入るだけなんだけど…
「おやすみなさいませ、リラ様。」
ルイザさんが明かりを消して部屋から出ていく。窓には薄らカーテンが引かれていて、月明かりが入っていた。大きなおつきさまがみえる。それをながめているうちにだんだんと目が閉じてきた…。
あぁ、これはきっとゆめだ…
『けがらわしい!私の目の前に出てこないで!』
『役立ずがいつまでこの家にいるだ!早く出ていけ!』
『お前なんかいらないのよ!』
そんなことばがきこえてくる。こころがいたい…なんだかからだもいたくかんじる…
たすけて…いやだ…こんなのきかたくない。こわい。だれか…だれか…かみさま…たすけて…おねがい…なんでもします。なんでもするから…かみさま…
ねぇ、なんでたすけてくれないの…こんなに…こんなに…いたいのに…どうして……
やっぱりかみさまなんていないんだって…
「…ラ…リラ…」
「うぅ…やだぁ…いた…いよぉ…た…すけて…」
「リラ、起きなさい。」
体が揺すられる。目を開けるといたのはリュイさま。ぼくのこと心配そうに見てる。
顔を見てなんだかほっとした。
リュイさまがらぼくのほっぺに手を当て何かを拭う。いつも間にか泣いてたみたい。
「怖い夢でも見たんでしょうね…こんなに泣いて…大丈夫ですよ。怖いものは何もありません。私がそばに居ますからね。」
そう言って抱きしめてくれた。
やっぱり、安心する声。
「リュイさま…リュイさま……だいすき……」
リュイさまに抱きしめられて、温かい腕の中でまたうとうとと目が閉じていった…
やっぱり、リュイさまはぼくのかみさまだ。たすけてっていったらいつもたすけてくれる。
だいすき…だいすき…ぼくのリュイさま…
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sideリュイ
夕食時、リラから今日あったことの報告を受ける。初めての授業は楽しかったとのこと。魔法はちょっと怖いけど頑張るとのことだった。表情にはあまり出ていないが雰囲気で楽しかったことが何となく伝わりました。
家庭教師のアイザックからも覚えが早く、予定よりも授業が進んだとこのことでした。また、魔法については鑑定を行ってから勉強をしていくとのこと…まだまだ、子どものリラですが、中等部くらいからは学校に行ってもいいかもしれませんね…とても行かせたくはないのですが……自分の腕の中だけにいて欲しい気持ちもあるのです。でも、侯爵夫人になる為には勉学も…悩ましいところです。
夕食を終え、リラは風呂に向かいました。私も自分の執務室に戻り残りの仕事をし浴室に向かいます。何時もなら自分の部屋に戻るのですが、リラが来てからはリラの部屋に寄って一緒に寝ることもあります。大概、リラが目覚める前に私が起きて出ていくのでリラは知りませんが…というのも、リラが屋敷に来てからというものほぼ毎晩魘されているのです。まあ、しょうがないといえばしょうがないのでしょうが…家族から虐待を受けた心の傷はすぐすぐに癒えるわけではありません。よく眠れるようにそばにいることが多いのです。
リラの部屋に行くと呻き声が…。今日は早い段階で夢を見ているようです。魔法の授業が引き金になったのかもしれません。そっと部屋に入ると…苦しそうな顔をしているリラが。
「やだ…やめて…ごめんなさい…ごめんなさい…たすけて…」
可哀想に、涙も流しています。いつもは撫でたり抱きしめたりするだけで落ち着くのですが…今日は一度めをさまさせたほうがいいかもしれません。
「リラ…リラ…目を開けて。」
「うぅ…やだぁ…いた…いよぉ…た…すけて…」
「リラ…起きなさい。」
リラの体を揺すりながら起こします。何度か呼びかけるとふっと目が開きました。じっと私の顔を見ています。涙で濡れている頬を撫でて…
「怖い夢でも見たんでしょうね…こんなに泣いて…大丈夫ですよ。怖いものは何もありません。私がそばに居ますからね。」
そう言って抱きしめました。優しくでも、少し力を込めて抱きしめているとリラも私の服をぎゅっと握り縋り付いてきます。そこから、一緒にベッドに寝転び抱きしめたままでいるとリラの目がトロリとしてきました。また、眠気が来たようです。
「リュイさま…リュイさま……だいすき……」
そう言ってリラは眠りにつきました。
あぁ、とてもかわいい。なんて可愛いんでしょうか。私の番。私の唯一。怖いものなんて全て私が消し去ってあげましょう。君は安心し私の腕の中にいつまでもいつまでもいてくださいね……
そう願いながら、私も眠りにつくのでした。
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