5話目 屋敷へ(sideリュイ)
「あの~リュイ様~?」
恐る恐る声をかけてくるロイ。
「なんです?……あぁ、その子はこちらへ。」
ロイが抱いている子どもを自分の腕の中に閉じこめる。それだけでやはり、安心する。子どもも何かを感じるのか頭を私の体にこすり付けている。
「あの~早く屋敷へ帰りませんか~?その子どもなんだか~傷だらけですし~」
「そうですね……帰りましょうか。あぁ、この子が行くことを伝えないと行けませんね。あと、医者の手配も。」
騎士の1人を呼び止め屋敷に伝達をするように伝える。騎士が魔法を発動させ屋敷へ伝達する。
馬車に乗り込み、膝の上に改めて子どもを抱き抱える。体も痩せほっていて傷だらけ……体力もないように見えるため治癒魔法をかけずに医師の指示を仰いだ方がいいだろうと、体を少しだけ綺麗にするクリーンだけをかける。
長い前髪を少し避けて顔を見る。幼いがとても可愛らしい顔だ。
「早く、目を開けた姿が見たいですね……」
あぁ、早くその瞳に自分を写して欲しいと願ってしまう。
殺伐とした場所から帰ってきたとは思えないほど穏やかな空間ができ上がる。屋敷につき扉を開けたロイがうわぁ……っと声を漏らしているのを横目に降りて屋敷の中へと向かう。
「お帰りなさいませ。」
セバスが迎え入れる。
「お客様がいらっしゃるとの事でしたが……そちらの方で?」
私の腕の中にいる子どもを見つめる。
「あぁ、客といえば客ですが……私の運命の番です。」
そう伝えると驚いた顔を見せるセバス。
私の満ち足りた顔をしているのにも驚いている様子だった。他人に基本的には興味を持たない私を知っているセバスなのだから驚くのも無理は無い。
「医師来ていますか?あと、サクとルイザを呼んできてください。2人にはこの子付きになってもらいます。」
「畏まりました。2人を読んでまいります。お医者様には別室に待機してもらっております。」
客間へ向かいながらセバスと話をする。客間につくとベッドに子どもを寝かせる。セバスはサクとルイザ、医師を呼びに行った。
しばらくすると医師がやってくる。
セバスについてもらい、医師が診察する間、隣室でサクとルイズに話をする。
「サク、ルイザ君たち二人には私の番の世話にしてもらう。サクは従者として、ルイザはメイド兼護衛だ。おそらく、オメガとしての知識がすぐないだろうと予想される。ルイザその辺も君に任せる。」
「「畏まりました。」」
反論もなく2人は了承する。サクはセバスの孫娘。メイドではなく執事として育てた為従者として、ルイザはロイの番でオメガ、またその強さもありあの子を守るために付いてもらうことにした。
話をしていると扉が叩かれる。現れたセバスが険しい顔をしながら顔を出した。診察が終わったようだ……。
「お医者様からお話があるとの事でしたのでお呼びいたしました。」
「わかった。今から行きますね。」
客間に入ると傷の手当がされていた。思ったよりも傷が多かったようでどこもかしこもガーゼと包帯で覆われていた。
「リーゼ医師どうでしたか?」
専属医のリーゼに問いかける。
「どこから連れてこられたのです?あまりにも酷い状態です……身体中に打撲痕、鞭の痕、両手には酷い火傷、また、極度の栄養失調です。」
「思ったよりと重症だったのですね……」
「体力もないと思いますので、治癒魔法は今回はかけておりません。しばらくは傷薬を塗って治るのを待ち、体力もついてきてからなるべく傷跡が残らないように治癒魔法をかける方がいいと思います。」
「わかまりたした。あなたの指示通りに……」
眠っている子どもに近づきそっと撫でる。んん……と声を漏らしながら擦り寄ってくる。
その様子に顔を綻ばせると……
「もしや、番の方ですか?」
「えぇ……私の運命の番です。ある屋敷で見つけましてね……」
「そうなんですね……リンデール侯爵様。おそらく、この子の傷は体だけではありません。心にも傷を負っているはずです。ゆっくり、休みせてあげてください。」
「わかりました。」
リーゼ医師の話を聞き今後の治療方針なども話しをし、サクとルイザに薬などの説明をしに部屋を出ていった。
「必ず、君を幸せにしてみせますよ……」
そう呟きながら、眠っている子どもの頭を優しく撫で続けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます