第34話
本好先輩のおかげで冤罪は晴れたものの、まだ私は図書室通学をしていた。目的は、おまじないを広げた人物の手掛かり探し。三階の図書室で『七不思議日誌』の載った部誌を手に取った。
「……あー、やっぱりなあ。」
背表紙には、貸し出し禁止を意味する「禁帯出」のシール。これの貸出履歴を見れば、この本を借りた人の名前が分かり、ひいてはおまじないを広げた人物に繋がらないかと思ったんだけど、当ては外れてしまった。まあ、確かにだいぶ劣化してるし、貸すのはちょっと躊躇するか。
「こんなに傷んでたら、あえて読もうとする人少なそうだけど……。」
私はそう言いつつ中を開いた。
「春野さん?」
「え?あれ、鴻先輩!」
「下で吉田さんが心配していましたよ。お昼なのに姿が無いと。」
鴻先輩が入って来た。「……それを読んでいたんですね。」
「いやあ、夢中になってました。あはは……。」
調査のはずが、つい『七不思議日誌』にのめり込んでいた。ファンタジーなんだけどミステリー要素もあって面白い。よっちゃん、ごめん。
「草村先生……ブーフさん凄いです。このお話凄く面白くて。それだけに、ミルイの原因になっているのが悲しいなって。」
「三十年間、ずっと罪悪感に苛まれていたでしょうからね……。」
鴻先輩がぽつりと言った。
「先輩はどうしてここに?」
「ああ……。僕も、その本を読んでみようかと。特に、おまじないの箇所を。」
「あ、それならここですよ。」
私がページを開くと、先輩の顔が近づいたが、はたと気付いたように離れた。
「……。」
「先輩耳赤いですよ。」
「そんな事ないです。」
そっぽを向く先輩。だが、耳はますます赤くなる。嘘は下手みたいだ。
「先輩、ちゃんと読んでください。」
「……。」
のろのろと、さっきより赤くなった先輩の顔が戻って来た。しばし、文字を目で追っていたが
「……すみません。集中できないので、少し離れて」
「嫌です。」
「わゃっ!?」
バッサリと願いを切り捨てられた上に、私に腕を回された先輩が悲鳴を上げた。
「私、ボディタッチ多い方なんですよ!」
「知っていますが何で今なんですか!」
「好きだからですよ!」
「~~~!!!」
鴻先輩が抗議の目でこちらを睨むが、アリクイの威嚇並みに可愛らしく見えた。一度告白した私に、もう怖いものなんてない!
「ええと、ああここですよ先輩。読めます?」
「分かりましたから離れて下さい。吉田さんが心配してますよ。」
「む。よっちゃんをダシに逃げますか。」
とはいえ、心配させたくはない。私は渋々先輩から離れる。
「フン!」
「!?」
めいっぱい抱きついた後で。
「あれ?げんげ、鴻先輩は?」
「会ったよ。今三階で本読んでるの。」
よっちゃんに合流した私は、遅めの昼食を取り始める。
「そうだげんげ!私のとこにも回って来たよ、図書室のおまじない!」
「見せて!」
よっちゃんが見せてくれたのは、部内のグループライン。おまじないについて話したのは、二年生の先輩らしい。
「先輩のクラスで流行ってるんだって。でもさ、げんげがおまじないはガセって教えてくれたじゃん?何なら危ないって。」
「うん。図書委員の本好先輩が調べてくれたの。あれは昔、文―ううん、昔ここにあった本に出て来る創作なんだって。」
文芸部の人が書いた、というのは言わないでおこう。私が分かったぐらいだから、ペンネームを見て、先生かもしれないって思う人がいてもおかしくない。
「本好……ああ、オカ研のゴローさんか。文芸部より本に詳しくて製本も上手いんだよねー。」
「せーほん?」
「本に製作で製本。要は、印刷した本文を本の形にすること。ちょっと凝った糸綴じとか巻物風とかの本作る時は先輩に頼むんだ。」
「へー!」
「手も口もよく動くよねあの人。本を綴じながらさ、ここはノド、ここは見返し、ここ遊びって本の事教えてくれるの。げんげがおまじないの話した時さ、標題紙とか奥付とか言ってたけど、あれも先輩に教わるまで知らなかった。」
「私も図書部入って、本の事はだいぶ詳しくなったかも。修理も出来るし。」
……あれ?
「どした、げんげ。」
「いや。ちょっと先輩に伝え忘れた事あるから、言ってくる。」
私はパンを放り込み、三階に戻った。
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