第12話

 私達は、昨日お菓子を食べた長机のある部屋にやって来た。修理室と図書部では読んでいるけど、表向きは倉庫で、開かずの間と呼ばれているらしい。

「基本的に、地下の書庫には二人で入ります。また、必ず修理室に二人部員が待機するようにします。地下からのSOSに対処するためです。」

「まずは鴻と春野君が行きたまえ。轟君は私とここで待機だ。」

「うっす!」

「昨日参照レファレンスに使っていた本を持ってきて下さい。では行きましょう。」

「春野、頑張れよー!」

「うん!行ってきます!」

 私は元気に返事をして地下へ。ミルイがあんなに大暴れしたのに、本棚は元の通りに並んでいる。

「昨日直しました。ここにはミルイを封じた本を保管していますので、散らかしておくのは危険です。」

「え!?じゃあ、ここにはミルイが沢山」

「います。弱体化させてありますが。」

 鴻先輩はそう答えながら、昨日ミルイに襲われた時に避難した小部屋に私を案内した。「3の2」と書かれたプレートが掛かってる。

「これを。」

「あ!」

 鴻先輩が本棚から取り出したのは、昨日ミルイに何度か投げつけた白い本。

「これは類本るいほんといって、ミルイを閉じ込める本です。ミルイを構成する要素のNDCが分かったら、これに数字を書き、『分類するclassify』と唱えて投げつけます。そうすると、ミルイからその要素が分離してこの本に吸い込まれ、無力化することが出来ます。」

 そう言えば昨日のミルイも、鴻先輩が類本を投げつけるたびに体が分裂して、それぞれ封じられていたっけ。そうやって、合体している要素をバラバラにしていけばいいんだ。

「あれ?でも、昨日足止めにもらった本には000って書いてあった気がするんですが。」

「よく覚えていますね。」

 鴻先輩が少し驚いたように片眉を上げた。

「NDCが分からなくても、『000』と書いて投げつけると、ひとまずミルイを類本に閉じ込める事が出来ます。ただし、拘束力は弱いので、閉じ込めたらすぐ上の階か、この部屋に逃げて下さい。この電話で上の階と繋がります。」

 鴻先輩は黒板の横にある電話を指さす。教室とかにもある、内線で他の教室に繋がる電話だ。

「類本についてもう一つ。類本の発動には、自分のNDC適性が関わります。春野さんの場合は」

 鴻先輩は真っ白な類本に、「609」と「6XX」と書いた。

「自分の適性の『609』の他、『6XX』と書いても類本が発動します。つまり、ミルイに6類要素があれば、『6XX』の類本で封じられます。三桁分かるのが望ましいですが、一桁だけでもかなり弱りますから。」

「ちなみに、先輩のNDCは何ですか?」

「僕は4類です。学校の科目で言えば理科ですね。」

 鴻先輩が自分の持っている本を見せた。『図鑑鳥類』と書かれた分厚い本だった。

「では、これで説明は終わりです。今から実際にミルイを相手にします。」

 先輩は小部屋を出ると、階段から一番遠い本棚に向かって歩き出す。

「ここの本棚にも、参照で使える本を置いてあります。NDC順に並んでいて、単位の本はここです。」

「もし自分の本を落としてしまったら、ここに来て別の本を使えばいいんですね!」

「そうです。そして、一番奥の本棚にあるのがー」

「わ!類本ばっかり!」

「ここにある類本には、過去に先輩達が対処したミルイが封じられています。」

「こんなに……。」

 その中から先輩が手に取った一冊には、背表紙に「3済、2×、5×、7×」と書かれていた。

「背表紙に書いてあるのは、これまで先輩達が対処して得た情報です。済とは、このミルイからこのNDCに該当する本の中身が取り除かれた事を指します。バツは、そのNDCに該当する本の中身がない事を指します。春野さん、この背表紙の意味は分かりますか?」

 えーっと。「3済」だから、3類については、もう類本で封印が済んでるってことだよね。で、2類、5類、7類はバツだから、効果が無いってこと。だから、それ以外の類本で調べないといけないんだ。

「そっか!私は6類で先輩が4類だから、このミルイに類本が効く可能性がある!」

「正解です。理解が早くて助かります。」

 鴻先輩が頷いた。

「まず、僕が参照レファレンスで相手を足止めします。その間に、春野さんは相手を測量してください。くれぐれも、僕の前には出ないように。」

「はい!」

「では類本を開けます。離れてください。」

 私は言われた通り先輩から離れる。先輩が類本を開けて床に置くと、すぐにこちらに走って来た。ほどなくして、黒い影がゆっくりと本から立ち上がり、雄叫びを上げた。

 

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