第3話 初めての空中戦
颯太と柚希は、騎乗訓練を終えたその日から、リューガの指導のもと本格的な空中戦の訓練を開始した。颯太の相棒であるフレイアは時折気まぐれに唸り声を上げて彼を困らせたが、それでも徐々に息が合い始めている。一方で、柚希のリンドは最初から従順で、柚希の指示に正確に応える頼もしいパートナーだった。
「颯太、フレイアがちゃんと指示に従うようになってきたじゃない!」
訓練場の上空を旋回しながら柚希が声をかける。颯太はフレイアの鞍にしっかりと腰を据えながら、自信ありげに笑った。
「まあな。俺だってやればできるってことだよ柚希!」
「調子に乗らないの!」
柚希が軽く笑いながら言ったその瞬間、リューガの怒声が響き渡る。
「集中しろ! 訓練中だぞ!それから、鎧を纏っている時は称号で呼べと言っただろう?!クロー!ハート!」
二人が反射的に背筋を伸ばすと、リューガは険しい表情で見下ろしていた。訓練の一環として竜に乗りながらの槍術を学ぶ課題で、まだまだ二人の動きはぎこちない。リューガが声を張り上げた。
「空中戦ではお前たちの一挙一動が命取りになる。竜との連携を怠るな!」
その言葉に、クロー(颯太)はフレイアの鞍をぎゅっと握り直し、心の中で決意を新たにした。
訓練場の一角では、ウイング(ロークス)が槍を手にしてクローたちを眺めていた。前髪を斜めに流した特徴的な髪型が風になびき、鋭い眼差しで新入りの動きを観察している。
「おい、新入り。」
ウイングがクローに声をかける。槍を肩に担ぎながら、ゆっくりと歩み寄ってきた。
「なんだよ、ローク……ウイング」
クローは少し警戒しながら答える。
「フッ…。お前、やっと竜を乗りこなせるようになったみたいだな。でも、それじゃまだ半人前だ。」
ウイングの口調にはどこか挑発的な響きがあった。クローは彼の視線を真正面から受け止める。
「半人前かどうか、試してみるか?」
クローの挑発的な返答に、ウイングは口元を歪めた。
「お?面白いじゃないか。」
そのままウイングは自分の竜――アーマードワイバーンの“ゼルフィード”に軽く合図を送った。ゼルフィードはすぐに反応し、堂々とした姿で近づいてくる。
「空中戦で腕比べだ。実戦を経験する前に、力の差を思い知らせてやる。」
「ウイング!」
リューガが声を上げたが、ウイングは無視してクローを見つめ続ける。
「リューガ、邪魔するなよ。こいつが俺と対等に戦えるか試してみるだけだ。」
リューガはため息をつき、腕を組んだ。
「好きにしろ。ただし、後で全員に追加訓練を課すからな。」
「いいぜ、望むところだ!」
クローはフレイアの背にまたがり、勢いよく空に飛び上がった。
クローとウイングは上空で向き合った。訓練場を見上げる他のドラゴンナイツたちの視線が二人に集中している。ハートも地上から不安そうにクローを見上げていた。
「ゼルフィード、いくぞ!」
ウイングがゼルフィードに指示を出すと、彼の竜は一瞬で加速し、クローに向かって槍を突き出す勢いで突進してきた。
「くっ…フレイア、避けろ!」
クローはギリギリのところでフレイアに指示を出し、急旋回で攻撃をかわす。
「悪くない。だが…これでどうだ!」
ウイングは竜に再び合図を送り、今度は上下に素早く動きながら颯太の死角に回り込む。
「ちょ、どこだ!?」
クローが必死にウイングの姿を探している間に、ウイングの槍がクローのすぐ後ろに迫る。
「甘い!」
ウイングの一撃がクローの背中に届こうとしたその瞬間、フレイアが咄嗟に翼を翻し、槍をギリギリでかわした。
「やるじゃないか。」
ウイングは感心したように微笑むが、その直後さらに勢いをつけてクローに迫った。クローは防戦一方だったが、何とかウイングの動きに食らいついていた。
「こいつ、この瞬間にも成長してやがる!」
ウイングの口調に少し驚きが混じり始める。
「舐めるなよ! 俺だって、簡単に負けるつもりはねえ!」
クローは必死にフレイアを操り、槍を突き出したが、ウイングは軽やかにそれをかわす。
「まだまだだな。」
ウイングが最後の一撃を加えようとしたその瞬間、リューガの声が響いた。
「そこまでだ!」
ウイングは槍を止め、ゼルフィードに静止の指示を出した。クローもフレイアを静かに着地させる。
「お前ら、訓練中に本気でやり合うんじゃない。」
リューガが鋭い目で二人を睨むと、ウイングは軽く笑って肩をすくめた。
「ただの手合わせだ。何も問題ないだろ。」
一方、クローは地面に降りると悔しそうに拳を握りしめた。
「くそっ…全然かなわなかった…」
その様子を見たウイングは、クローの肩を軽く叩いた。
「悪くなかったぜ新入り。いや、クロー。お前、意外とやるな。」
クローは少し驚いた顔をしながらウイングを見上げた。
「今は半人前かもしれねえが、そのうち俺と対等になれるかもな。」
ウイングが微笑むと、クローは拳を握り直して決意を新たにする。
「その時は、絶対勝つからな。」
ウイングの笑みに対抗するように、クローも強く答えた。
その言葉が二人のライバル関係の始まりとなるのだった。
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