第2話 訓練と決意
リューガ・デインに連れられた颯太と柚希が向かったのは、ヴェルランディア城の裏手に広がる壮大な空間だった。青空の下に広がる緑の草原。その中心には、巨大な石造りの円形闘技場があり、すでに数十人のドラゴンナイツが集まり、日々の鍛錬に励んでいる様子が見て取れた。
訓練場の中央には鎧を身に纏った戦士たちが剣や槍を振り、格闘術を競い合っていた。さらにその横には漆黒の竜――アーマードワイバーンが並べられ、飼育員らしき人々が世話をしている。
「ここがドラゴンナイツの訓練場だ。」
リューガが険しい顔で言うと、颯太は目を見張った。
「すげえ…竜がいるのかよ!」
颯太の声には驚きと興奮が混ざっている。柚希も目を輝かせ、竜の姿に見入っていた。
「これはアーマードワイバーン。俺たちドラゴンナイツの相棒だ。」
リューガが指差した先で、漆黒の竜の一匹が大きく羽を広げた。巨大な翼は鎧のような堅い鱗で覆われ、鋭い爪が地面を引っ掻いている。その威圧感に颯太は思わず一歩後ずさった。
「俺たちは、こいつらに騎乗して戦う。空で戦うためには欠かせない存在だ。」
リューガの言葉に颯太はごくりと唾を飲み込んだ。
「でも、俺たちみたいな素人がこいつらを乗りこなせるのか?」
颯太の問いにリューガは冷たく笑った。
「だから訓練が必要なんだ。お前たちにはこれから、騎乗の基礎から叩き込む。」
その言葉を聞いた途端、訓練場の一角から声が上がった。
「リューガ、そいつらが新入りか?」
その声に振り返ると、銀髪で長い前髪が軽やかに揺れている少年が歩いてきた。彼の瞳は鋭く、無骨な槍を片手に持っている。
「こいつはロークス・フォルバン。ドラゴンナイツでの称号はウイングだ。お前たちと同じ17歳だが、ナイツの中でも屈指の実力を持っている。」
リューガが紹介すると、ロークスは肩をすくめた。
「屈指だなんて大袈裟だろ。俺はただ、訓練をサボらずにやってきただけさ。」
そう言いながらも、彼の表情には余裕と自信が浮かんでいる。
「おい新入り。名前は?」
ロークスは颯太を見下すようにして問いかけた。
「天城颯太だ。」
颯太が少しムッとした表情で答えると、ロークスはふっと笑った。
「へえ、たしかに“クロー”って感じの面構えだな。お前もアーマードワイバーンに乗れるようになるのか、楽しみにしてるぜ。」
その言葉に、颯太は挑発されたような気分になった。
「おい、馬鹿にしてんのか?」
「いやいや。ただ、竜を乗りこなせない奴が多いからな。もし挫けるなら、今のうちに言っとけって話さ。」
ロークスの軽口に、颯太は拳を握りしめた。
「そんな簡単に逃げると思うなよ!」
「なら見せてもらおうじゃないか。新入りがどれだけ根性あるのかをな。」
***
「よし、まずは騎乗訓練だ。」
リューガが手を叩くと、訓練場の奥から一匹のアーマードワイバーンが引き出されてきた。その竜は他のワイバーンよりも少し小柄で、鋭い目を光らせている。
「こいつの名前は“フレイア”。初心者用の訓練にはちょうどいい。」
リューガが指差すと、フレイアは低く唸りながら颯太の方をじっと見つめた。
「…睨まれてるんだけど。」
颯太は思わず一歩引き下がるが、リューガは厳しい声を飛ばした。
「臆するな。竜はお前の心の強さを見ている。逃げ腰では絶対に懐かないぞ。」
颯太は一度大きく息を吸い込み、フレイアの前に立った。竜の赤い瞳が彼の一挙一動をじっと見つめている。その威圧感に押されそうになりながらも、颯太は震える手を伸ばした。
「頼む…仲間になってくれ。」
しばらくの沈黙の後、フレイアは低く唸ると、颯太の手のひらに鼻先を押し付けた。その瞬間、颯太は自分の胸に不思議な感覚を覚える。心臓が一瞬、竜の鼓動と同調したような気がした。
「やったな!」
リューガが満足そうに頷いた。
「これでお前はフレイアのライダーだ。だが、まだこれで終わりじゃない。竜を乗りこなして初めて一人前だ。」
「リューガ、初心者用って…あれ、あの誰にも懐かなかった暴れん坊フレイアだよな…」
「ああ、もしやとは思ったが、やはりあの少年、特別な何かを持っているようだ」
一方、柚希もまた自分のアーマードワイバーンと対峙していた。その竜は“リンド”と名付けられており、真っ白な鱗を持っている。柚希は優しく微笑みながらリンドに歩み寄った。
「怖くないよ。私たち、仲間になれるよね?」
彼女の柔らかな声に、リンドは一瞬警戒を解いたように鼻を鳴らした。そして、柚希がそっと手を伸ばすと、リンドは大人しくそれを受け入れた。
「ふふ、ありがとう、リンド。」
その光景を見ていたロークスが鼻を鳴らした。
「お前たち随分と簡単に懐かせたもんだな。」
「心が優しい人には、竜も応えるのよ。」
柚希が微笑みながら答えると、ロークスは肩をすくめた。
***
リューガが訓練を終えた二人に向き直り、言った。
「よし、最初の試練は乗り越えたな。だが、これからが本番だ。竜に乗ったまま空中戦を行う訓練を始めるぞ。」
「空中戦…か。」
颯太はフレイアの背中に手を置きながら、決意を固めていた。
「やってやるさ。俺も“
その頃、訓練場の遠くの空に不穏な影が差し始めていたことに、誰も気付いていなかった――。
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