第2話 目玉焼き


 土曜日の午前授業が終わると、5人は自然と【ロクロク】に集まっていた。

 制服のまま紺のブレザーを脱ぎもせず、奥のソファ席に座る。


 健司「尽さん、ハイネケン5本くださ〜い!あとポテト!」


 尽「お前ら、味もわからんくせに、いっちょ前に銘柄指定すんなよ。ははは」


 健司「んな事ねぇすよ」

 と恥ずかしそうにハイネケンを受け取る。


―――――――――――――――――――


 純平「昨日ラピュタやってたじゃんか?」


 健司「おう、観た観た。やっぱ何回観ても面白ぇよな」


 純平「でさ、思ったんだけどよ……パズーが食ってたろ、あの食パンに目玉焼き乗っけたやつ」


 竜「……あ〜、あれうまそうだったな」


 純平「いや、うまそうだけどよ。目玉焼きってパンじゃなくね?」


 恭一「は?」


 純平「目玉焼きは……ごはんだろ!」


 どよめくテーブル。

 そして始まる、“パン派”と“ごはん派”の熱い討論。


 大輔「よし、まずはパン派とごはん派に分かれろ!」

 パン派  大輔、竜、恭一

 ごはん派 純平、健司


 竜「いやでも、そもそもさ、目玉焼きってパンに合うように作られてねぇ?」

 

 大輔「朝って感じがするよな?パンと目玉焼きって」

 

 健司「でもよ、白飯と醤油ちょろっとかけた目玉焼き、あれ最強じゃね?」

 

 純平「そこに納豆とかあれば、もう無敵っしょ」

 恭一「それをやったら反則だろ、オプションは無しだ!」

 恭一「ちなみに俺は、味噌汁があればごはん派、コーヒーがあればパン派かな」

 

 竜「オプションに左右されんなよ……オレは生卵だったら、ごはんだ。卵かけご飯で醤油ちょろだ!焼いたり茹でたらパンだ!」

 

 健司「生卵ならごはん……火を通したらパン……確かに一理あんな!」

 

 大輔「さらにパンなら忙しい朝に片手でいけるぜ」

 

 純平「黄身ドロッと出るなら、パンだとこぼれるからご飯で回収したい」

 

 議論の熱が高まる中、大輔が吸いかけのラッキーストライクを灰皿に置いた。


 ふと純平がそれに目をとめる。

 まだ長さの残ったそれを指でつまみ、

 「……一口くれな」とつぶやいて、くすねるようにひと吸い。


 すぐに灰皿へ戻し、むせるでもなく、顔をしかめる。


 結局30分以上にわたり繰り広げられた議論は――


 恭一「よし、じゃあ多数決だ。パン派はハイネケンを持ち上げろ!」


 「せーの、はい!」


 2本しか上がらなかった。

 竜と大輔がパン派だった。


 純平「おっしゃー、ごはんの勝利っ!」

 

 健司「当然だな!」

 

 大輔「チッ……納得いかねぇ」


 大輔「でもよ、正直あのラピュタのパンは一回やってみたいぜ?」

 

 竜「俺、明日の朝やってみっかな」

 純平「オレは卵かけご飯にするわ」

 健司「オレもだな」

 恭一「オレも」

 大輔「オレも卵かけご飯だな」

 竜「ちょ!裏切んなダイスケ‼︎」


 大輔が笑いながら、吸いかけのラッキーを灰皿に戻す。

健司はまだビールをちびちびやっていた。


そのとき、チャック・ベリーの「Johnny B. Goode」が流れ始めた。


ギターの軽快なイントロに、誰ともなくリズムを取り出す5人。

 

【ロクロク】に、一同の笑い声と古き良きロックンロールが響いていた。

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