(5)かほ – 迫りくる後輩

 季節は秋。久しぶりに出勤したら、さっそく店長が現れた。これまでと雰囲気が違う。ニコリともせず、かほ、また数字をたのむぞ。いつまでも自分がエースだと思うなよ、という言葉を残し去っていった。わたしがエースでなくていったい誰が?


 休憩室にはみきがいた。おいしそうにみたらし団子を食べている。かほさん、お久しぶりです、とニコニコあいさつしてくる。デビューして半年、相変らずかわいいみきである。かほさんに直接お伝えしたかったんですけど、先月初めて店のランキング入りしたんです、とうれしそうなみき。どうやら、接客のコツをつかんできたらしい。


 わたし、数字よりも、お客さまが本当の恋人のようになってくれるのが楽しいんです、とかわいらしく目尻を下げながら教えてくれるみき。この店でそのスタイルを貫けるとは、芯の強さを持ち合わせているのだろう。みきがこれだけ努力しているのに、表面的な数字でしか評価しない店にどれだけの価値があるのだろうか。


 みきの話を聞いているうちに、わたしの胸がザワついた。翔太の顔がふと脳裏のうりに浮かんだ。翔太は緊張しながら、わたしにあれこれ聞いた。わたしの身体からだで手あそびをするばかりの翔太。あのころは達することがない翔太が気持ち悪かったのに。みきの話を聞いていたらちょっとなつかしくなった。

(つづく)


(第3章「作品解説」)

https://kakuyomu.jp/works/16818622175437139934/episodes/16818622175640887064(CatGPTって、なに?)

https://kakuyomu.jp/works/16818622175437139934/episodes/16818622175437190031

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