第4話
あの後、エレナさんと一緒に、ギルバートさんに布袋を返しに行って聞いたところ、どうやら彼が普段財布代わりに使っている布袋をそのまま渡したらしかった。
それを聞いたエレナさんが真っ青になって
「私が盗んだらどうするつもりだったんですか……?」
と震えていた。
「流石に全財産は渡していませんよ」
とギルバートさんは言っていたが、そういうことではないと思う。そして全財産渡していないからといって数百万を他人に渡すのはどうかしているのではないだろうか。
結局、下着を買いに行く時は銀貨二枚だけ預かり、エレナさんが持っていた適当な袋を財布代わりにした。
そして下着を購入。エレナさんは下着を見ている最中もやたらとテンションが高かった。元からこういう人なのだろう。
ひとまずすぐに必要なものは買い終えたようで、私はエレナさんにお礼を言って、ギルバートさんと宿に戻った。
「お金、ありがとうございます」
「いえ。貴方を保護すると決めたのは僕ですから。お気になさらず」
私がお礼を言えば、ギルバートさんはそう言った。
「……それで、ですけど」
「どうしてそこまでしてくれるのか……という話でしたね」
ギルバートさんはベルトポーチから、台座付きの水晶のようなものを取り出した。台座のような部分には、少し禍々しい装飾が施されている。
「これは周囲に音が漏れないようにする魔道具です。持っていていただけますか?」
「わかりました」
私が頷くと、ギルバートさんはその魔道具を私に手渡した。それからギルバートさんが水晶のような部分に手をかざすと、水晶の中に、紫色が滲んでいく。水中に紫色の絵の具を落としたらこうなるのでは、というような滲み方だ。綺麗だな、と眺めてみる。
「落とすと破れてしまいますから、気をつけて」
「はい」
「破れればそれは効果を失います。身の危険を感じるようでしたら、容赦なく破っていただいてかまいません」
……ああ、なるほど。
部屋に男女二人きりで、さらに音が外に聞こえないようにする道具を使用しているのだ。何かされても、周囲に助けを求めることさえできない。
ギルバートさんにその意図がなくとも、私が怖がるかもしれないから、気を使ってくれているのか。
「お気遣いありがとうございます。いざというときはギルバートさんに向かって投げればいいんですね」
「そこまでは言ってませんが……まあ、そうですね」
「そうなんですか。流石に冗談のつもりでした」
「真顔で冗談を言われるとわかりづらいですね……でも、身の危険を感じるようなら、それくらいはしてください」
真顔、と言われて、自分の顔をぺたぺた触ってみる。もちもち、とはいかずとも、頬がむにむにと柔らかい。表情筋がろくにないからだろうか。
そうしていると、そっと手をとられ、私の膝の上に置いてある魔道具まで誘導された。危ない危ない、落としたら破れるんだった。
「ごめんなさい」
「いえ……。緊張していないなら何よりです」
さて、と置いてから、ギルバートさんはゆっくりと話し始めた。
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